異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)

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六日目―魔法具師バレン

「只今、戻りました~」

 毎度お馴染みのドアベルが鳴る中、俺は魔法具店バレンへ足を踏み入れた。

「…あ、おかえり。無事に、ベーラン様にも届いたみたいだね。ありがとう」

 早くも確認が取れているのか。
 バレンの肩に乗る鳥と、彼が手に持つ小さな紙が、この鳥を郵便鳥だと思わせる。一応、それはなんだ?と、バレンに尋ねる俺。

「これが、郵便鳥だよ。まぁ…この郵便鳥は、子爵家所有の郵便鳥だけどね」

 テイマーが従える鳥類だ。
 色々な種類がいるのだろう。バレンの肩に止まっていたのは、茶色に黒のぶち模様がある鳥だった。尻尾の先は白くなっている。

「郵便商会と専属契約でもしてるのか?」
「そうだよ。特に火急の用件があれば、直ぐに利用出来るし。便利だもん!」

 流石だよね~と、呑気に笑うバレンだが、俺も同意だと頷いた。

(確かにな。郵便局のシステムを一気にすっ飛ばして、直ぐに配達だもんな。そりゃ、便利だわ)

 前世の郵便システムもまた、とても素晴らしいものだ。だが人間というものは、楽を求めし探求者。それ故、便利な物には抗えない性を持つ。

「それに……良いものを貰ったみたいじゃん?」

 小さな紙片をヒラヒラさせながら、ニヒヒっと笑うバレンに、俺は真面目な顔をして答えた。

「あぁ……それについても、バレンさんに聞きたいことがある」

 魔法具師として働くバレンだ。
 領主同様に、魔法都市アルティメットのことも知っているだろう。
 魔法都市までの行路や必要な路銀額など、聞きたいことは山程ある。

 それに先ずは、【生活魔法事典】を読み終えなければ。バレンがいる場所での閲覧しか許されている限り、ここに通うしか手はない。時間は……たっぷりとあるのだ。

 ♢ 

「それで、聞きたいことってなんだい?」

 場所を改めた……と言っても、カウンター奥にある応接セットのソファにだが。

 眼鏡にかかる浅葱あさぎ色の髪を、軽く手で避けながら、茶器を手に取るバレン。熱いのが苦手なのか、少しだけ冷ますように息を吹きかけている。

「領主様に、魔法都市アルティメットの大図書館のことを聞いた」
「あぁ……あそこね。それでルイ君は、どうしたいのさ?」
「勿論、その大図書館に行ってみたい。その為に、魔法都市への行き方や必要な路銀の額を知りたい。勿論、注意することがあれば、教えて欲しい。地図があれば、尚良しだが」
「ちょっ!?ちょっと待って!?」
「どうした?」

 慌てるバレンに、俺は首を傾げた。

「どうしたもこうしたもないよ!?なんで、僕が知っている前提で話すのさ!?」
 
 そんな俺に食って掛かるバレンだが、そんなことは簡単だ。

「あそこね……なんて含みを持った言い方をするのは、少なからず知っている証拠だろう。自分では気付かないのかも知れないが、自身が知るものほど、反応は薄いものなんだ」
「ルイ君って、本当に農家の息子?」

 ふっと鼻で笑い、答えた俺に、疑いの視線を向けてきたバレン。  
 だが俺は、それに能面顔で答えた。

「そんな過ぎたこと、どうでもいいじゃないか」
「過ぎたことって……ねぇ。まぁ、話す気が無いなら、別にいいけどさ」

 本当に、過ぎたことなのだ。
 『役立たず』と家を追い出された身としては、この世界には、もう俺の家族はいない。
 だが、無理に聞き出そうとしないバレンの姿勢は、とても有り難かった。

「それで……地図だけど、簡易なものしかないよ?」
「勿論だ。もしここに精密な地図があれば、俺は此処から逃げ出すぞ」
「はははっ!?君の暮らす村の薬師さんや神父様は、よほど優秀だったと見える」

 腹を抱えて笑い出したバレンに、一体なにが可笑しいのか?と、今度は、俺が怪訝な顔付きをすることになる。

 精密な地図など、政治的・戦略的理由で、一市民が持つことなどあり得ない禁制品だ。もし持っていれば、それは国家転覆を狙った集団の一員か、領地拡大を狙った近隣国家のアジトだろう。

「魔法都市アルティメットは、隣国の此処だよ」

 溢れる涙を手の甲で拭いながら、地図のとある場所を指したバレン。

 そこには、本当に小さくだが……船の絵が記されていたのだ。
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