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六日目―魔法具師バレン②
「この地図にある船みたいな絵は、なんですか?」
俺は、気付いた地図の絵を指し示す。
「これかい?これは、魔法船の発着場だよ。隣国は魔法が発展してるんだけど、遺跡の発掘にも関心があってね。未開地の開拓も、進んでいるんだ。その一つが、この魔法船。遺跡発掘で手に入れた物なんだ」
「古代遺物……」
「正解!やっぱりルイ君は、詳しいね!?僕らが住むこの時代より遥か昔の人々が作った人工物を指すんだ。その古代遺物である魔法船を、隣国はなんと!大小合わせて5隻持ち合わせてるそうだよ」
ずいっと手のひらを広げて見せてくるバレンを、俺は手で押し返す。
「この船に乗る為には、随分な硬貨が消えそうだな」
俺が呟いたセリフに、魔法船に乗るの!?と目を大きく見開いたかと思うと、次は含み笑いを始めた忙しいバレン。
「…くっくっくっ、硬貨の種類によるんじゃない?あの種類なら、1枚で済むよ、1枚で」
口に手を当て、可笑しそうに肩を震わせ、表情を歪めるバレンは、どの1枚を指しているのか?恐らく、大銀貨1枚以上は間違いないだろう。
「場所にもよるけどね。此処から寄合馬車の定期便で、隣国との国境まで一日。国境の砦門を越えれば、隣国の辺境の都市アザイルまで、徒歩三日。その都市アザイルに、魔法船の発着場があるよ」
遠慮がなくなってきたのか、笑い上戸なのか。未だ笑いが収まる気配がない。
「敬語はいらないよ。名前も、呼び捨てでいい。ルイ君って10歳だけど、同じ年齢の人と話している錯覚に陥るよ」
くっくっくっと笑いながら、腹を抱えるバレンに、俺はため息を吐いた。諦めの境地で金額を聞く。
「分かった。その発着場から、魔法都市アルティメットまでの、魔法船の乗船金額は幾らだ?」
乗れるか乗れないか。これから、冒険者で稼ぐ目標金額が決まる。
「いやぁ、ごめんごめん。辺境の都市アザイルから魔法都市アルティメットまでだと、大銀貨1枚で行ける。魔法船では、3時間ほどの乗船時間を楽しめるよ」
俺の表情を見て謝るが、一っ言も誠意を感じられない謝罪だ。俺は肩を竦め、それに応えた。
(軽く見積もってだが……旅程は1週間。金額は、大銀貨1枚は乗船代として、馬車や宿、食費も込めて、小銀貨5枚以上は必要だな)
「金額は分かった。距離も分かった……では、あの書籍を読ませて貰おうか?」
今度は、俺がバレンに近寄り、圧をかける。
「はいはい。言っておくけど、そんな面白い書籍じゃないよ?」
バレンから受け取った書籍は、分厚さもあり、ズシリとした重さが手に伝わった。
「今の俺には、宝に等しい書籍だ」
バレンにそう返しながらも、俺はゆっくりとページを捲った。
そこには、目次であり、索引のような形で記載された生活魔法の調べがあった。
日本語のように『あいう』で並んだものではなく、教会が、過去十年間の【スキル鑑定】で集計した生活魔法の多い順に、記載されているようだ。
(教会って、この大陸中にあるんだよな?それをコツコツと、生活魔法の種類だけを集計したのかよ……すげぇ執念。でも、そのお陰で読めるんだしな。誰か知らねぇが、感謝しかないぜ)
心の中で手を合わせてしまうところは、まだまだ日本人だな……と思いながら、俺は目次に目を凝らした。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
「え!?ねぇ……まさかその音って、写生してるの!?」
既にソファから居なくなったバレンの声が、少し遠くから聞こえた。そんな彼の声は、恐る恐ると言った体だった。写生をしていたら、なんだってんだ?
「そうだが、俺の知らないものや、珍しい生活魔法だけだぞ?全てを覚えるなんて芸当は、端から無理だからな」
「それはそうだよ!それ、十年分だからね!?それに、なんで写生しているのか分からないけど、使えるとは限らないんだよ?」
「それは知ってるよ。冒険者ギルドの資料室にあった【生活魔法のススメ】を読んだし」
「それを読んでなお、写生する君の根性に乾杯だよ!」
「そりゃ、どうも!」
やけくそ気味なバレンの気持ちも、痛いほど分かる。彼から見れば、奇異な行動だろう。俺だってな、前世の記憶がなけりゃ、大人しく冒険者をやってたよ。
(あの著者の『魔法文字を正しく理解すれば、それ即ち、君の力となりて、人生に彩りを添えるだろう』を俺の考えで解釈すれば、『文字の意味を識る者の人生の力となる』ってことだからな)
そうなると、今まさに、俺の目の前にある生活魔法事典は、その最たる手だぜ?
出来る限り写すのが、神の思し召しってことよ!
俺は改めて袖を捲り、ペン先をインクの壺へつけるのだった。
俺は、気付いた地図の絵を指し示す。
「これかい?これは、魔法船の発着場だよ。隣国は魔法が発展してるんだけど、遺跡の発掘にも関心があってね。未開地の開拓も、進んでいるんだ。その一つが、この魔法船。遺跡発掘で手に入れた物なんだ」
「古代遺物……」
「正解!やっぱりルイ君は、詳しいね!?僕らが住むこの時代より遥か昔の人々が作った人工物を指すんだ。その古代遺物である魔法船を、隣国はなんと!大小合わせて5隻持ち合わせてるそうだよ」
ずいっと手のひらを広げて見せてくるバレンを、俺は手で押し返す。
「この船に乗る為には、随分な硬貨が消えそうだな」
俺が呟いたセリフに、魔法船に乗るの!?と目を大きく見開いたかと思うと、次は含み笑いを始めた忙しいバレン。
「…くっくっくっ、硬貨の種類によるんじゃない?あの種類なら、1枚で済むよ、1枚で」
口に手を当て、可笑しそうに肩を震わせ、表情を歪めるバレンは、どの1枚を指しているのか?恐らく、大銀貨1枚以上は間違いないだろう。
「場所にもよるけどね。此処から寄合馬車の定期便で、隣国との国境まで一日。国境の砦門を越えれば、隣国の辺境の都市アザイルまで、徒歩三日。その都市アザイルに、魔法船の発着場があるよ」
遠慮がなくなってきたのか、笑い上戸なのか。未だ笑いが収まる気配がない。
「敬語はいらないよ。名前も、呼び捨てでいい。ルイ君って10歳だけど、同じ年齢の人と話している錯覚に陥るよ」
くっくっくっと笑いながら、腹を抱えるバレンに、俺はため息を吐いた。諦めの境地で金額を聞く。
「分かった。その発着場から、魔法都市アルティメットまでの、魔法船の乗船金額は幾らだ?」
乗れるか乗れないか。これから、冒険者で稼ぐ目標金額が決まる。
「いやぁ、ごめんごめん。辺境の都市アザイルから魔法都市アルティメットまでだと、大銀貨1枚で行ける。魔法船では、3時間ほどの乗船時間を楽しめるよ」
俺の表情を見て謝るが、一っ言も誠意を感じられない謝罪だ。俺は肩を竦め、それに応えた。
(軽く見積もってだが……旅程は1週間。金額は、大銀貨1枚は乗船代として、馬車や宿、食費も込めて、小銀貨5枚以上は必要だな)
「金額は分かった。距離も分かった……では、あの書籍を読ませて貰おうか?」
今度は、俺がバレンに近寄り、圧をかける。
「はいはい。言っておくけど、そんな面白い書籍じゃないよ?」
バレンから受け取った書籍は、分厚さもあり、ズシリとした重さが手に伝わった。
「今の俺には、宝に等しい書籍だ」
バレンにそう返しながらも、俺はゆっくりとページを捲った。
そこには、目次であり、索引のような形で記載された生活魔法の調べがあった。
日本語のように『あいう』で並んだものではなく、教会が、過去十年間の【スキル鑑定】で集計した生活魔法の多い順に、記載されているようだ。
(教会って、この大陸中にあるんだよな?それをコツコツと、生活魔法の種類だけを集計したのかよ……すげぇ執念。でも、そのお陰で読めるんだしな。誰か知らねぇが、感謝しかないぜ)
心の中で手を合わせてしまうところは、まだまだ日本人だな……と思いながら、俺は目次に目を凝らした。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
「え!?ねぇ……まさかその音って、写生してるの!?」
既にソファから居なくなったバレンの声が、少し遠くから聞こえた。そんな彼の声は、恐る恐ると言った体だった。写生をしていたら、なんだってんだ?
「そうだが、俺の知らないものや、珍しい生活魔法だけだぞ?全てを覚えるなんて芸当は、端から無理だからな」
「それはそうだよ!それ、十年分だからね!?それに、なんで写生しているのか分からないけど、使えるとは限らないんだよ?」
「それは知ってるよ。冒険者ギルドの資料室にあった【生活魔法のススメ】を読んだし」
「それを読んでなお、写生する君の根性に乾杯だよ!」
「そりゃ、どうも!」
やけくそ気味なバレンの気持ちも、痛いほど分かる。彼から見れば、奇異な行動だろう。俺だってな、前世の記憶がなけりゃ、大人しく冒険者をやってたよ。
(あの著者の『魔法文字を正しく理解すれば、それ即ち、君の力となりて、人生に彩りを添えるだろう』を俺の考えで解釈すれば、『文字の意味を識る者の人生の力となる』ってことだからな)
そうなると、今まさに、俺の目の前にある生活魔法事典は、その最たる手だぜ?
出来る限り写すのが、神の思し召しってことよ!
俺は改めて袖を捲り、ペン先をインクの壺へつけるのだった。
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