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十日目―バレンの隠し事
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「おはよぉさん……」
「……ルイ君、いらっしゃい」
声をかければ、机にほっぺをくっつけ涎を垂らしたバレンが、ぼぉ…と目を覚ます。
「リットが鍵を開けてくれたが、器用なリスだな」
「…賢いんだよ。こんなこともあろうかと、鍵の開け方を教えておいたんだ」
まだ目覚めたばかりで、若干覚束ないな。目が半分しか開いてない。
「正に、人生の相棒だな。それより、やっぱり徹夜したのか?」
「徹夜というか、寝落ち?」
その心配を考えて、リットに解錠の仕方を教えておいたんだよね…とぼやくバレンも、難儀な性格をしている。
「寝落ちも徹夜も、変わらんだろ?」
限界の早さを競うだけ。勝てば、徹夜。負ければ、寝落ち。それだけのことである。
俺が呆れの視線を向けて説明すれば、彼は不満げにぶすっとした。
「寝起きの顔が、余計酷くなるだけだぞぉ~」
「なっ!?酷い!そんなこと言うなら、リットに開けないように言うよ?」
俺のからかいに、ぷんすこと怒るバレン。俺は、軽快に笑い声を点てた。
「俺は別にかまわんが?解析図を見ても見なくても、人生に問題はない」
「ぐっ!?……」
圧倒的に立場が不利なのを悟ったバレンは、無言で生活拠点の2階に上がっていった。
頼み事がある立場と、それに逆らえる相手。やり辛いったら、ないぜ。
「ルイ君の薄ら笑い、気持ち悪い」
まだ機嫌が治っていないバレンが、身支度を整え、降りてきた。先ほどの仕返しのつもりか?
「ふっ。負け惜しみとは、片腹痛い。それで、恩師だっけ?彼の解析図は、どれだ?」
「それなんだけど……実は、頼みたいことがあって」
「なんだ?」
申し訳無さそうに言いながら、席を立つバレン。壁に掛けていたポーチを取り、手を突っ込む。
彼が取り出したものは、解析図のデカい模造紙はなく、平らな紙?と筒状の羊皮紙の束、布袋数個だった。
「なんだ、それ?」
「これは、探索した人に権利がある場所で発掘・発見したものだよ。前に、軽く解析図を見せたでしょ?あの遺跡発掘に、恩師も、研究目的で付き添ってたみたい。今回発見された遺跡は、相当地下にあったのは説明したよね?空気に触れず、奇跡的に保存状態が良い一角があったんだけど、そこで彼が、偶然見つけたものなんだよ」
「発掘品か?」
「うん。ちょっと待っててね」
少し俯き気味だったバレンは、顔をあげて発掘品の羊皮紙を広げ始めた。
丸められた羊皮紙に重石を置き、俺の目の前に並べるのを、静かに見守る。
資料は、紙面が変色した箇所や、虫食い、破れもあり、古さを感じた。
「一番酷いのは、これか?」
紙面が擦れ、文字や図柄の読み取りが困難だ。根気よく見つめれば、文字の形などが分かる…という擦れ具合。
「そんな大事なものを、バレンに預けたのか?」
どう見ても、研究しがいのありそうな資料だけど?と目を瞬かせば、彼の表情は徐ろに歪む。それも悔しげに、口端は噛み締めている。
「……なにか事情がありそうだな」
「うん。本当は、昨日、ルイ君が記憶持ちだと聞かされるまで、これを見せるつもりはなかったんだ。でも、記憶持ちと聞けば話は違う。どんな世界の記憶か分からないけど、少しでもヒントになるものがあればと思って、見せることに決めたんだ」
「それで昨日、急に恩師の話を言い出したんだな?」
(解析図の話しか聞いてなかったから、少し驚いたがな)
「うん。解析図も大事だけど、こっちの方が大事だから。僕も、布袋の中身はまだ見てないんだけど。ルイ君なら、話だけでも聞いてくれると思ったからさ」
「バレンには、世話になってるしな!それどころか、思わぬ発掘品を拝めてラッキーだぜ」
「ルイ君なら、そう言ってくれると思ってた!」
そう言って、表情を明るくするバレン。
多少居心地が悪い思いをしていたんだろうが、実に現金なものである。
男のロマンとはいうが、これが男心を刺激する発掘品か……正直、ワクワクとした童心が湧くのは否めない。
ちらっと資料に視線を彷徨わせ、損傷の一番少ない紙を見る。
これは、少し厚みのある紙だ。頑丈そうだが、長い年月でどうなっているか。触るのは止そう。
「どれどれ?」
紙面を覗き込めば、見たことのある文字が並んでいた。おしゃれにデザインされた、幾つもの文字が書かれた厚紙。
「まさかサイン色紙か?だが、オシャレ過ぎて判別が……」
読めないこともないが、老眼のように目を細め、あらゆる方向から考察する必要がありそうだ。今の所、サインかどうかの判別は後回しだ。
俺は、他の資料にも目を走らせた。
ざっと目を通すと、名簿らしきものが2枚、図案らしきものが2枚、暦らしきものが1枚あった。
「この布袋は、開けていいのか?」
取り敢えず資料も後回し。中身が気になっていた革袋を指差す。
「勿論!今、解くね!」
バレンは待ってました!とばかりに動き出す。まだ中身を見ていないと言っていたから、気になるんだろうな。
盗難防止の為か。少々、解くのに時間がかかる難しい結び目だ。
そして紐を解き、袋の口を目一杯に広げるバレン。それに二人して覗き込む。
「………これは」
「知ってるの!?」
バレンの瞳が、俺をキラキラと見ている。
だが俺は、それどころではない。古代都市は日本か?と疑う物を目の当たりにし、驚いている。
(もしかしたら……古代文明初期に、俺みたいな記憶持ちがいたのかもな。取り敢えず、鑑定だ)
そう思い、バレンに許可を取る。
「いや……記憶の中に、似た物を知っているだけだ。同一のものか、今は分からない。鑑定をしたいんだが、いいか?」
「これを、鑑定出来るの!?」
彼から返ってきた答えに、俺はガクッと項垂れる。
「いやいや。鑑定持ってる奴なら、鑑定出来るだろ?」
(Lvに左右されるが、ある程度の情報は見えるはずだぞ?)
俺がLv1の時は、名前と状態の鑑定が出来たんだ。
「古代の遺物ってさ……発掘するのはいいんだけど、遺物に鑑定を弾く仕組みになっているものがあるんだ」
「それを言うということは、これらは弾かれたんだな?」
「そう。それを聞いた師し、恩師をライバル視している人が、“価値無し”と判断したのか、『譲れっ!』て強引に持っていこうとしたんだって」
師匠と言いかけている辺り、よほどの仲と見える。それほどの仲なら、彼の役に立ちたいと思う気持ちも、不思議ではないな。
「それだけで価値無しかどうか決めつけるのは、可笑しいぜ。それで、バレンに預けたのか?」
「うん。相手はお貴族様で、恩師は平民出身だから、大きく出られないみたい。その相手もさ、影からこそこそ脅してくるから、厄介だ…って、手紙に溢してた」
「そうか、大変だったな。そういう陰湿な奴には、正攻法が通じない場合が多い。だが、裏でちょこまかと悪さをする小者が大半だ。なにか、奴の弱みを握れたらいいんだけどな」
これで、バレンの所にやってきた経緯は分かった。取り敢えず鑑定をして、本当に『無価値』かどうかを確かめないとな。
「よし!兎に角、俺の鑑定が弾かれるか、試してみるぞ?」
「お願いします!」
バレンの許可を得て、俺は鑑定を発動させる。
【木印】
トレント木材で出来ている。
時代は、古のカティア時代セントロ後期に使用された付与をする際の木印である。
トレント木材を丸棒に加工し、両端を平面に。片面に【言霊】を掘り、それを特殊な【液体】に浸し、使用する。
(言霊?恐らく、今の魔法文字のことだろうな。特殊な【液体】?これも、鑑定だ)
木印と一緒に入っていた小瓶を鑑定する。
【小瓶】
使用期限が過ぎた液体が入ったガラスの瓶。
今は、スライムの液体に戻っている。しかも、腐ってる。
(戻る?液体と表示されないスライムの液体は、なにか変化に必要なものがあるのか?液体も鑑定だ)
【液体】
スライム液を、満月の光に一晩充てる。一晩祈りを捧げれば、力ある液体へと変化する。使用期限は一ヶ月。
麻などの布類に浸し、木印のインクとして使われた。金属でも木材でも、押された液体は、必ず固定化する。
(固定化?金属はツルツルしているし、普通の液体は、乾くまで放置がデフォだ。その手間がないのは、時短に繋がる。まぁ、違う意味も含まれている気がするが。流石ファンタジー。どうやって定着するか、見物だな。そういえば、今の魔法具はどうやって作ってるんだ?しかし、木印か。素材がトレントって、魔物の一種だよな?)
疑問が次々湧いてくる中、俺は印面を見た。【言霊】だと言う言葉。それは、こう彫られていた。〘癒し〙と。
(まじか……)
これ、治癒魔法?光魔法?に属する魔法だよな。それが、木印で付与出来るのか?俺がバレンに声をかけようと顔を上げると、目の前に、ドアップの本人がいた。
「どぅわ!?」
「どうだった!?」
「……おっ、おぉ。取り敢えず、成功したぞ?」
「時間がかかってたからね。成功したと思ってたよ!」
鑑定が成功したことを確信したバレンの瞳は、今までで一番きらっきら!であった。
(そりゃそうだよな!?弾かれたら、すぐ言うもんな!?俺がいつまでも黙り込んでりゃ、そりゃ成功したと言ってるのと同義だわな!?……しかし、鑑定が弾かれると言っていた物を、俺が鑑定できた事は良いのだろうか?……いや、マズイのでは?)
今更浮かんできた重大な問題に、なぜもっと早く気付かなかったのか?自分で自分の、おっちょこちょい加減が嫌になってきた。
―――『自重を覚えて、行動してね?』
昨日言われたばかりの、ギルマスの言葉が、脳内を反芻する。
今回もわざとではない。
だが、少々危機感を持つべきだったか。
今更ながらに思うが、既に後の祭り。もはや、なにもかも手遅れであった。
(自重って……なんだっけ?)
前に増して、きらっきら!な瞳をしたバレンに嘘を言うわけにもいかず。うずうずとしているバレンに、俺は前に進むことしか出来なかったのである。
―――それを世間では、開き直りともいう。
「……ルイ君、いらっしゃい」
声をかければ、机にほっぺをくっつけ涎を垂らしたバレンが、ぼぉ…と目を覚ます。
「リットが鍵を開けてくれたが、器用なリスだな」
「…賢いんだよ。こんなこともあろうかと、鍵の開け方を教えておいたんだ」
まだ目覚めたばかりで、若干覚束ないな。目が半分しか開いてない。
「正に、人生の相棒だな。それより、やっぱり徹夜したのか?」
「徹夜というか、寝落ち?」
その心配を考えて、リットに解錠の仕方を教えておいたんだよね…とぼやくバレンも、難儀な性格をしている。
「寝落ちも徹夜も、変わらんだろ?」
限界の早さを競うだけ。勝てば、徹夜。負ければ、寝落ち。それだけのことである。
俺が呆れの視線を向けて説明すれば、彼は不満げにぶすっとした。
「寝起きの顔が、余計酷くなるだけだぞぉ~」
「なっ!?酷い!そんなこと言うなら、リットに開けないように言うよ?」
俺のからかいに、ぷんすこと怒るバレン。俺は、軽快に笑い声を点てた。
「俺は別にかまわんが?解析図を見ても見なくても、人生に問題はない」
「ぐっ!?……」
圧倒的に立場が不利なのを悟ったバレンは、無言で生活拠点の2階に上がっていった。
頼み事がある立場と、それに逆らえる相手。やり辛いったら、ないぜ。
「ルイ君の薄ら笑い、気持ち悪い」
まだ機嫌が治っていないバレンが、身支度を整え、降りてきた。先ほどの仕返しのつもりか?
「ふっ。負け惜しみとは、片腹痛い。それで、恩師だっけ?彼の解析図は、どれだ?」
「それなんだけど……実は、頼みたいことがあって」
「なんだ?」
申し訳無さそうに言いながら、席を立つバレン。壁に掛けていたポーチを取り、手を突っ込む。
彼が取り出したものは、解析図のデカい模造紙はなく、平らな紙?と筒状の羊皮紙の束、布袋数個だった。
「なんだ、それ?」
「これは、探索した人に権利がある場所で発掘・発見したものだよ。前に、軽く解析図を見せたでしょ?あの遺跡発掘に、恩師も、研究目的で付き添ってたみたい。今回発見された遺跡は、相当地下にあったのは説明したよね?空気に触れず、奇跡的に保存状態が良い一角があったんだけど、そこで彼が、偶然見つけたものなんだよ」
「発掘品か?」
「うん。ちょっと待っててね」
少し俯き気味だったバレンは、顔をあげて発掘品の羊皮紙を広げ始めた。
丸められた羊皮紙に重石を置き、俺の目の前に並べるのを、静かに見守る。
資料は、紙面が変色した箇所や、虫食い、破れもあり、古さを感じた。
「一番酷いのは、これか?」
紙面が擦れ、文字や図柄の読み取りが困難だ。根気よく見つめれば、文字の形などが分かる…という擦れ具合。
「そんな大事なものを、バレンに預けたのか?」
どう見ても、研究しがいのありそうな資料だけど?と目を瞬かせば、彼の表情は徐ろに歪む。それも悔しげに、口端は噛み締めている。
「……なにか事情がありそうだな」
「うん。本当は、昨日、ルイ君が記憶持ちだと聞かされるまで、これを見せるつもりはなかったんだ。でも、記憶持ちと聞けば話は違う。どんな世界の記憶か分からないけど、少しでもヒントになるものがあればと思って、見せることに決めたんだ」
「それで昨日、急に恩師の話を言い出したんだな?」
(解析図の話しか聞いてなかったから、少し驚いたがな)
「うん。解析図も大事だけど、こっちの方が大事だから。僕も、布袋の中身はまだ見てないんだけど。ルイ君なら、話だけでも聞いてくれると思ったからさ」
「バレンには、世話になってるしな!それどころか、思わぬ発掘品を拝めてラッキーだぜ」
「ルイ君なら、そう言ってくれると思ってた!」
そう言って、表情を明るくするバレン。
多少居心地が悪い思いをしていたんだろうが、実に現金なものである。
男のロマンとはいうが、これが男心を刺激する発掘品か……正直、ワクワクとした童心が湧くのは否めない。
ちらっと資料に視線を彷徨わせ、損傷の一番少ない紙を見る。
これは、少し厚みのある紙だ。頑丈そうだが、長い年月でどうなっているか。触るのは止そう。
「どれどれ?」
紙面を覗き込めば、見たことのある文字が並んでいた。おしゃれにデザインされた、幾つもの文字が書かれた厚紙。
「まさかサイン色紙か?だが、オシャレ過ぎて判別が……」
読めないこともないが、老眼のように目を細め、あらゆる方向から考察する必要がありそうだ。今の所、サインかどうかの判別は後回しだ。
俺は、他の資料にも目を走らせた。
ざっと目を通すと、名簿らしきものが2枚、図案らしきものが2枚、暦らしきものが1枚あった。
「この布袋は、開けていいのか?」
取り敢えず資料も後回し。中身が気になっていた革袋を指差す。
「勿論!今、解くね!」
バレンは待ってました!とばかりに動き出す。まだ中身を見ていないと言っていたから、気になるんだろうな。
盗難防止の為か。少々、解くのに時間がかかる難しい結び目だ。
そして紐を解き、袋の口を目一杯に広げるバレン。それに二人して覗き込む。
「………これは」
「知ってるの!?」
バレンの瞳が、俺をキラキラと見ている。
だが俺は、それどころではない。古代都市は日本か?と疑う物を目の当たりにし、驚いている。
(もしかしたら……古代文明初期に、俺みたいな記憶持ちがいたのかもな。取り敢えず、鑑定だ)
そう思い、バレンに許可を取る。
「いや……記憶の中に、似た物を知っているだけだ。同一のものか、今は分からない。鑑定をしたいんだが、いいか?」
「これを、鑑定出来るの!?」
彼から返ってきた答えに、俺はガクッと項垂れる。
「いやいや。鑑定持ってる奴なら、鑑定出来るだろ?」
(Lvに左右されるが、ある程度の情報は見えるはずだぞ?)
俺がLv1の時は、名前と状態の鑑定が出来たんだ。
「古代の遺物ってさ……発掘するのはいいんだけど、遺物に鑑定を弾く仕組みになっているものがあるんだ」
「それを言うということは、これらは弾かれたんだな?」
「そう。それを聞いた師し、恩師をライバル視している人が、“価値無し”と判断したのか、『譲れっ!』て強引に持っていこうとしたんだって」
師匠と言いかけている辺り、よほどの仲と見える。それほどの仲なら、彼の役に立ちたいと思う気持ちも、不思議ではないな。
「それだけで価値無しかどうか決めつけるのは、可笑しいぜ。それで、バレンに預けたのか?」
「うん。相手はお貴族様で、恩師は平民出身だから、大きく出られないみたい。その相手もさ、影からこそこそ脅してくるから、厄介だ…って、手紙に溢してた」
「そうか、大変だったな。そういう陰湿な奴には、正攻法が通じない場合が多い。だが、裏でちょこまかと悪さをする小者が大半だ。なにか、奴の弱みを握れたらいいんだけどな」
これで、バレンの所にやってきた経緯は分かった。取り敢えず鑑定をして、本当に『無価値』かどうかを確かめないとな。
「よし!兎に角、俺の鑑定が弾かれるか、試してみるぞ?」
「お願いします!」
バレンの許可を得て、俺は鑑定を発動させる。
【木印】
トレント木材で出来ている。
時代は、古のカティア時代セントロ後期に使用された付与をする際の木印である。
トレント木材を丸棒に加工し、両端を平面に。片面に【言霊】を掘り、それを特殊な【液体】に浸し、使用する。
(言霊?恐らく、今の魔法文字のことだろうな。特殊な【液体】?これも、鑑定だ)
木印と一緒に入っていた小瓶を鑑定する。
【小瓶】
使用期限が過ぎた液体が入ったガラスの瓶。
今は、スライムの液体に戻っている。しかも、腐ってる。
(戻る?液体と表示されないスライムの液体は、なにか変化に必要なものがあるのか?液体も鑑定だ)
【液体】
スライム液を、満月の光に一晩充てる。一晩祈りを捧げれば、力ある液体へと変化する。使用期限は一ヶ月。
麻などの布類に浸し、木印のインクとして使われた。金属でも木材でも、押された液体は、必ず固定化する。
(固定化?金属はツルツルしているし、普通の液体は、乾くまで放置がデフォだ。その手間がないのは、時短に繋がる。まぁ、違う意味も含まれている気がするが。流石ファンタジー。どうやって定着するか、見物だな。そういえば、今の魔法具はどうやって作ってるんだ?しかし、木印か。素材がトレントって、魔物の一種だよな?)
疑問が次々湧いてくる中、俺は印面を見た。【言霊】だと言う言葉。それは、こう彫られていた。〘癒し〙と。
(まじか……)
これ、治癒魔法?光魔法?に属する魔法だよな。それが、木印で付与出来るのか?俺がバレンに声をかけようと顔を上げると、目の前に、ドアップの本人がいた。
「どぅわ!?」
「どうだった!?」
「……おっ、おぉ。取り敢えず、成功したぞ?」
「時間がかかってたからね。成功したと思ってたよ!」
鑑定が成功したことを確信したバレンの瞳は、今までで一番きらっきら!であった。
(そりゃそうだよな!?弾かれたら、すぐ言うもんな!?俺がいつまでも黙り込んでりゃ、そりゃ成功したと言ってるのと同義だわな!?……しかし、鑑定が弾かれると言っていた物を、俺が鑑定できた事は良いのだろうか?……いや、マズイのでは?)
今更浮かんできた重大な問題に、なぜもっと早く気付かなかったのか?自分で自分の、おっちょこちょい加減が嫌になってきた。
―――『自重を覚えて、行動してね?』
昨日言われたばかりの、ギルマスの言葉が、脳内を反芻する。
今回もわざとではない。
だが、少々危機感を持つべきだったか。
今更ながらに思うが、既に後の祭り。もはや、なにもかも手遅れであった。
(自重って……なんだっけ?)
前に増して、きらっきら!な瞳をしたバレンに嘘を言うわけにもいかず。うずうずとしているバレンに、俺は前に進むことしか出来なかったのである。
―――それを世間では、開き直りともいう。
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