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十三日目―解析図②
アリーシャの叫びが木霊している頃、ルイはバレンと机を挟み、解析図を見ていた。
「これが最初に見てもらった解析図だよ」
お馴染みのどでかい羊皮紙の図面には、大元の機械が右上に描かれ、それぞれの部品の絵には、機械の位置、大きさ、材質、用途の予測案など、様々な解説が書き込まれている。これは、写生するだけでも骨が折れるぞ。それを各地の魔法具師の元に配布するんだから、魔法師協会は金があるな。
「バレンは、魔法船を見たことや、乗ったことはあるか?」
「見たことも、乗ったこともあるよ?」
「そうか」
以前見せてもらった時と変わらずに、ファンのような図が気になるな。それに、動力部分はどこだ?ざっと見回すが、どこにも書いていない。
「なぁ…」
「なに?」
「この機械の動力部がないんだが……どうしたんだ?」
「あぁ~、やっぱりそう思うよね」
低い声で唸りながら、がっくりと項垂れた。
「これが手を焼いていた解析図か?」
「そう。模写する人のミスだと思うけど、肝心の動力部分が見つからないんだよね」
「ミスねぇ……ん?…なぁ、この羊皮紙の端っこ、少しだけ盛り上がってるぞ」
俺が羊皮紙をなぞっていた時、ふと指先の感触に違和感を感じた。
「え?そうなの?」
「あぁ……やっぱりか」
気の所為か?と、もう一度同じ箇所をなぞるが、答えは同じ。製造過程で盛り上がったというわけではない。机上と同じ目線で確かめて見るが、目を凝らしても、やはり盛り上がっている箇所だけ、不自然な膨らみがある……絶対になにかある。
俺があちこち体勢を変えて見聞した後、バレンも羊皮紙に触れる。
「うわぁ~……本当だ」
同じ箇所をなん度もなぞっている。“驚き” “衝撃” “信じられない!”といった感情がごちゃ混ぜの表情をしている。目ん玉も飛び出そうになるのを、瞬きで阻止している。
「なんだろうね?ルイ君、これも解析出来るのかな?」
「それもそうだな。やってみるか」
「お願いします」
バレンということも最もだ。こんな時のスキルある。畏まったバレンも面白いが、それほど衝撃的だったのだろう。
(解析)
【解析図(髪乾燥機)】
素材 羊皮紙(模写)
用途 羊皮紙に、髪乾燥機)の解析図を描いたもの。
状態 未完成の解析図。
羊皮紙の隅に、別の紙が隠されている。現在、魔法具師協会・副会長から逃走中。
「……なるほど」
「もしかして、厄介事?」
「そうだな……」
天井を仰ぐ俺に、バレンもヤバイと察したらしい。うへぇ……と嫌な表情を浮かべている。
「なぁ、魔法具師協会・副会長って、どんな人物だ?」
「……狐?」
「それは種族か性格か、どちらだ」
お願いだ。特に後ろは当たらないでくれ!
「どっちも」
「…まさかの両方かよ」
「あははははっ……気付かなかった振りして、適当に返そう」
「そうしろ」
一頻り笑ったバレンは、無の表情で囁いたが、全力で乗っかる俺がいた。
「じゃあ、この解析図は後回し?」
「そうだなぁ。意図的に情報が隠された解析図じゃ、無理があるだろ」
解析スキルも、未完成って出てたしな。それで答えを出す魔法具師は、駄目だろ。
「じゃあ、次はこれだよ!」
「ふむ(解析)」
【解析図(魔法竈)】
素材 羊皮紙(模写)
用途 羊皮紙に、魔法竈)の解析図を描いたもの。
状態 完璧な解析図。
綺麗な解析図。文句なし。
(なるほど、コンロか。地下街遺跡と付けた理由が、分かったな。今回の発掘の殆どが、生活用品だったんだろうな)
「どう?特に、ここを見て欲しんだ。この部品の解析文に記されている魔法文字なんだけど」
人差し指で示された解析文の魔法文字。
動力部分の隣の図は、可動式のバーのよう。その下に表示されている魔法文字……とのことだが。簡単だろ、これ。
「これは、火力調整の文字だよ。【火力】、【強・中・弱】」
「え?なに?」
「こう書いて、こう読む」
質の悪い羊皮紙のメモに、走り書きをして見せる。
「へぇ~」
メモを凝視するバレンに、湧き上がった疑問をぶつける。
「それにしても、魔法文字は、魔法文字研究会の分野じゃねぇのか?」
「え?…あぁ。魔法文字の解読は、時間が掛かるからね。彼らだけじゃ手に負えないんだよ。まぁ公開しても、殆どが解読不明だけどね」
肩を竦めるバレンに、そりゃそうだろと思う。そんな簡単に解明出来てりゃ、今の状況にはなっていない。
「そういえば、解明希望の魔法文字は、魔法文字研究機関や魔法使いギルドに掲示されているんだったな。ギルマスの著書で読んだぞ」
「そうそう。研究会が解読しているものは、ないんだけど。その他の文字は、絶賛募集中さ!……どう?今度一緒に行ってみない?」
にひひ…と悪戯心が芽生えた小憎たらしい笑顔を浮かべたバレン。
「きっとルイ君なら、ぜ~んぶ解いちゃうんだろうけど!」
にひひ…と声も漏らしつつ、ジリジリと近寄るバレンに、俺は項垂れた。
「そもそも、お前はこの街に一人しかいない魔法具師だろ?ここを離れられないって、前に言ってたじゃないか」
「それなんだけどさ!?ギルマスに頼んだ手紙の返事が、さっき届いてたの!」
「は?……もう?」
「そう!」
「早すぎねぇ?」
ギルマスの後輩と名乗る人物が、頑張ってくれんだろうか。この分だと、後輩くんが希望する魔法文字とやらも、届いてそうだなぁ。
「そうだよね!僕もびっくりしたよ!それでね?僕の弟弟子に、マーカスっていう子がいるんだけど、その彼を、明日こっちに派遣してくれるって言うんだよ」
「は?弟弟子?そいつに、店の留守番を任せるのか?」
「うん!腕も人間性も信頼出来るから、心配ないよ」
満面の笑みが浮かぶところをみると、バレンも弟弟子が可愛いんだろうな。
「そうか。バレンがいいならなんも言わねぇが。お師匠様に、発掘品の件で呼び寄せられた口か?」
「そう!発掘品の件を詳しく聞きたいって!」
「なるほど。大変だな、バレンも」
「なに言ってるのさ!?向こうに行って大変なのは、寧ろルイ君だよ!?」
ずいっと近寄るバレンの頭を鷲掴み、その場に留める。どうどう。
「俺か?」
「いだだだっ!?…っそうだよ!解析図に関することは口外可能って決めたけど。お師匠様と会長に、本当に話してもいいの?」
「仕方ねぇだろ?彼らにも、魔法契約はしてもらうことになるが……思ったより事がデカくなったのは、俺らも見当つかなかったしな」
「そっか、ありがとう……でも!もしもルイ君に危険が及ぶことになれば、僕が守るからね!」
「お?……おぉう。ありがとよ」
【呼び起こされし者】の影響が、俺の想像よりも遥かに大きいことは、実感し始めている。
大陸の最高機関である大学府の研究者が夢中になるほどだ(専門分野によるが)。
隣国に行けば、嫌でも覚悟が必要な時がくるだろう。
【喚び起こされし者】の意に返さない行為や脅迫などをすれば、神罰再来になるらしい。
(だがなぁ……当時を知る者が圧倒的に少ないと思う。しかも、その殆どが、長命種族のエルフやドワーフなどではないだろうか?異世界の医療水準では、人族の寿命は50歳前後が主。侍医や食べ物がある貴族はまた別だが)
ギルマスによれば、【喚び起こされし者】の出現は、国へ報告義務が無くなったのは150年前。他機関の最新記録でも、70年前。
絶対に、馬鹿な行動に走る奴が出るよなぁ。特に、特権意識に染まった愚かな貴族とか。
もしそんなことになれば、初めに作った生活魔法の【標的】と【追跡】が、役に立ちそうだぜ。
☆要注意人物!
魔法具師協会・副会長
種族 狐の獣人
性格 狐
「これが最初に見てもらった解析図だよ」
お馴染みのどでかい羊皮紙の図面には、大元の機械が右上に描かれ、それぞれの部品の絵には、機械の位置、大きさ、材質、用途の予測案など、様々な解説が書き込まれている。これは、写生するだけでも骨が折れるぞ。それを各地の魔法具師の元に配布するんだから、魔法師協会は金があるな。
「バレンは、魔法船を見たことや、乗ったことはあるか?」
「見たことも、乗ったこともあるよ?」
「そうか」
以前見せてもらった時と変わらずに、ファンのような図が気になるな。それに、動力部分はどこだ?ざっと見回すが、どこにも書いていない。
「なぁ…」
「なに?」
「この機械の動力部がないんだが……どうしたんだ?」
「あぁ~、やっぱりそう思うよね」
低い声で唸りながら、がっくりと項垂れた。
「これが手を焼いていた解析図か?」
「そう。模写する人のミスだと思うけど、肝心の動力部分が見つからないんだよね」
「ミスねぇ……ん?…なぁ、この羊皮紙の端っこ、少しだけ盛り上がってるぞ」
俺が羊皮紙をなぞっていた時、ふと指先の感触に違和感を感じた。
「え?そうなの?」
「あぁ……やっぱりか」
気の所為か?と、もう一度同じ箇所をなぞるが、答えは同じ。製造過程で盛り上がったというわけではない。机上と同じ目線で確かめて見るが、目を凝らしても、やはり盛り上がっている箇所だけ、不自然な膨らみがある……絶対になにかある。
俺があちこち体勢を変えて見聞した後、バレンも羊皮紙に触れる。
「うわぁ~……本当だ」
同じ箇所をなん度もなぞっている。“驚き” “衝撃” “信じられない!”といった感情がごちゃ混ぜの表情をしている。目ん玉も飛び出そうになるのを、瞬きで阻止している。
「なんだろうね?ルイ君、これも解析出来るのかな?」
「それもそうだな。やってみるか」
「お願いします」
バレンということも最もだ。こんな時のスキルある。畏まったバレンも面白いが、それほど衝撃的だったのだろう。
(解析)
【解析図(髪乾燥機)】
素材 羊皮紙(模写)
用途 羊皮紙に、髪乾燥機)の解析図を描いたもの。
状態 未完成の解析図。
羊皮紙の隅に、別の紙が隠されている。現在、魔法具師協会・副会長から逃走中。
「……なるほど」
「もしかして、厄介事?」
「そうだな……」
天井を仰ぐ俺に、バレンもヤバイと察したらしい。うへぇ……と嫌な表情を浮かべている。
「なぁ、魔法具師協会・副会長って、どんな人物だ?」
「……狐?」
「それは種族か性格か、どちらだ」
お願いだ。特に後ろは当たらないでくれ!
「どっちも」
「…まさかの両方かよ」
「あははははっ……気付かなかった振りして、適当に返そう」
「そうしろ」
一頻り笑ったバレンは、無の表情で囁いたが、全力で乗っかる俺がいた。
「じゃあ、この解析図は後回し?」
「そうだなぁ。意図的に情報が隠された解析図じゃ、無理があるだろ」
解析スキルも、未完成って出てたしな。それで答えを出す魔法具師は、駄目だろ。
「じゃあ、次はこれだよ!」
「ふむ(解析)」
【解析図(魔法竈)】
素材 羊皮紙(模写)
用途 羊皮紙に、魔法竈)の解析図を描いたもの。
状態 完璧な解析図。
綺麗な解析図。文句なし。
(なるほど、コンロか。地下街遺跡と付けた理由が、分かったな。今回の発掘の殆どが、生活用品だったんだろうな)
「どう?特に、ここを見て欲しんだ。この部品の解析文に記されている魔法文字なんだけど」
人差し指で示された解析文の魔法文字。
動力部分の隣の図は、可動式のバーのよう。その下に表示されている魔法文字……とのことだが。簡単だろ、これ。
「これは、火力調整の文字だよ。【火力】、【強・中・弱】」
「え?なに?」
「こう書いて、こう読む」
質の悪い羊皮紙のメモに、走り書きをして見せる。
「へぇ~」
メモを凝視するバレンに、湧き上がった疑問をぶつける。
「それにしても、魔法文字は、魔法文字研究会の分野じゃねぇのか?」
「え?…あぁ。魔法文字の解読は、時間が掛かるからね。彼らだけじゃ手に負えないんだよ。まぁ公開しても、殆どが解読不明だけどね」
肩を竦めるバレンに、そりゃそうだろと思う。そんな簡単に解明出来てりゃ、今の状況にはなっていない。
「そういえば、解明希望の魔法文字は、魔法文字研究機関や魔法使いギルドに掲示されているんだったな。ギルマスの著書で読んだぞ」
「そうそう。研究会が解読しているものは、ないんだけど。その他の文字は、絶賛募集中さ!……どう?今度一緒に行ってみない?」
にひひ…と悪戯心が芽生えた小憎たらしい笑顔を浮かべたバレン。
「きっとルイ君なら、ぜ~んぶ解いちゃうんだろうけど!」
にひひ…と声も漏らしつつ、ジリジリと近寄るバレンに、俺は項垂れた。
「そもそも、お前はこの街に一人しかいない魔法具師だろ?ここを離れられないって、前に言ってたじゃないか」
「それなんだけどさ!?ギルマスに頼んだ手紙の返事が、さっき届いてたの!」
「は?……もう?」
「そう!」
「早すぎねぇ?」
ギルマスの後輩と名乗る人物が、頑張ってくれんだろうか。この分だと、後輩くんが希望する魔法文字とやらも、届いてそうだなぁ。
「そうだよね!僕もびっくりしたよ!それでね?僕の弟弟子に、マーカスっていう子がいるんだけど、その彼を、明日こっちに派遣してくれるって言うんだよ」
「は?弟弟子?そいつに、店の留守番を任せるのか?」
「うん!腕も人間性も信頼出来るから、心配ないよ」
満面の笑みが浮かぶところをみると、バレンも弟弟子が可愛いんだろうな。
「そうか。バレンがいいならなんも言わねぇが。お師匠様に、発掘品の件で呼び寄せられた口か?」
「そう!発掘品の件を詳しく聞きたいって!」
「なるほど。大変だな、バレンも」
「なに言ってるのさ!?向こうに行って大変なのは、寧ろルイ君だよ!?」
ずいっと近寄るバレンの頭を鷲掴み、その場に留める。どうどう。
「俺か?」
「いだだだっ!?…っそうだよ!解析図に関することは口外可能って決めたけど。お師匠様と会長に、本当に話してもいいの?」
「仕方ねぇだろ?彼らにも、魔法契約はしてもらうことになるが……思ったより事がデカくなったのは、俺らも見当つかなかったしな」
「そっか、ありがとう……でも!もしもルイ君に危険が及ぶことになれば、僕が守るからね!」
「お?……おぉう。ありがとよ」
【呼び起こされし者】の影響が、俺の想像よりも遥かに大きいことは、実感し始めている。
大陸の最高機関である大学府の研究者が夢中になるほどだ(専門分野によるが)。
隣国に行けば、嫌でも覚悟が必要な時がくるだろう。
【喚び起こされし者】の意に返さない行為や脅迫などをすれば、神罰再来になるらしい。
(だがなぁ……当時を知る者が圧倒的に少ないと思う。しかも、その殆どが、長命種族のエルフやドワーフなどではないだろうか?異世界の医療水準では、人族の寿命は50歳前後が主。侍医や食べ物がある貴族はまた別だが)
ギルマスによれば、【喚び起こされし者】の出現は、国へ報告義務が無くなったのは150年前。他機関の最新記録でも、70年前。
絶対に、馬鹿な行動に走る奴が出るよなぁ。特に、特権意識に染まった愚かな貴族とか。
もしそんなことになれば、初めに作った生活魔法の【標的】と【追跡】が、役に立ちそうだぜ。
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種族 狐の獣人
性格 狐
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【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!