6 / 9
5
しおりを挟む「ねえ、ニナ、ニーナ」
「なんだい」
「そんなに落ち込まないで」
わたしなんかより余程、ニナの方がショックを受けている様子で、なんだか、ふふ、と、笑えてしまった。
そんなわたしに、ニナは、おそらくつとめて冷静にして話す。
「……あなたは、悲しくはないの」
「悲しいよ、でもそれより嬉しい」
「何が、まさか死ぬのが?」
「わたしが死ぬのを、悲しんでくれる人がいることが」
するとニナは、ああ、と、声にし、嘆いたように見えた。ベッドに頭をもたれ、わたしの方を見る目は、責めているかのようだ。
「僕がいなかったら、そんなふうには思わなかったはずだ」
「まさか自分を責めてるの?」
「当たり前だ……孤独であれば、あなたは、もっと怒って、あの人たちに復讐なり、したはずでしょう」
「それは、わたしに孤独であって欲しかったってことかな」
「違う!」
起き上がり、その、自分の声にはっとした、ニナは、慌てて口元を覆って、目を逸らした。
あんまりにも健気な顔をしてくれるから、わたしは思わずまた笑って、今度はかれの頭を撫でた。
さら、と、梳いた髪の流れる様を見る。美しい、かれの心こそ、何より。
わたしはこのひと月、ニナがつきっきりでいてくれて、知ったことがたくさんあるよ。
そして、彼がわたしに、自分のことを教えなかった理由も、知った。
情が移ってしまわないように。
それを聞いて泣きたくなった。わたしは本当にわかられている。たくさんのことを知れば愛してしまう、それが恋でも、愛でも、友としてでも。
けれど、ニナ、もう遅いって、お互いわかったから。だから彼は出し惜しみしない。
わたしは契約を超えた信頼を、戦友に抱いた。
「ねえ、ニナ。あなたがいなかったら、わたし、一人ぼっちで、誰にも悲しまれずに死んでいってた。そんな悲しいことってある?」
「僕がいる」
「そう。ニナがいる。だからわたし、これからの時間を楽しもうと思う。どうかな」
どういうポジティブなんだ……、かれの唸りはシーツに消えて、わたしはやっぱりその髪を梳く。
かれと余生を生きたい。そして。
何かあったら必ず助けになる。とも、思っている。
ニナはわたしの戦友、だから。
0
あなたにおすすめの小説
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる