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しおりを挟む「ねえ、ニナ、ニーナ」
「なんだい」
「そんなに落ち込まないで」
わたしなんかより余程、ニナの方がショックを受けている様子で、なんだか、ふふ、と、笑えてしまった。
そんなわたしに、ニナは、おそらくつとめて冷静にして話す。
「……あなたは、悲しくはないの」
「悲しいよ、でもそれより嬉しい」
「何が、まさか死ぬのが?」
「わたしが死ぬのを、悲しんでくれる人がいることが」
するとニナは、ああ、と、声にし、嘆いたように見えた。ベッドに頭をもたれ、わたしの方を見る目は、責めているかのようだ。
「僕がいなかったら、そんなふうには思わなかったはずだ」
「まさか自分を責めてるの?」
「当たり前だ……孤独であれば、あなたは、もっと怒って、あの人たちに復讐なり、したはずでしょう」
「それは、わたしに孤独であって欲しかったってことかな」
「違う!」
起き上がり、その、自分の声にはっとした、ニナは、慌てて口元を覆って、目を逸らした。
あんまりにも健気な顔をしてくれるから、わたしは思わずまた笑って、今度はかれの頭を撫でた。
さら、と、梳いた髪の流れる様を見る。美しい、かれの心こそ、何より。
わたしはこのひと月、ニナがつきっきりでいてくれて、知ったことがたくさんあるよ。
そして、彼がわたしに、自分のことを教えなかった理由も、知った。
情が移ってしまわないように。
それを聞いて泣きたくなった。わたしは本当にわかられている。たくさんのことを知れば愛してしまう、それが恋でも、愛でも、友としてでも。
けれど、ニナ、もう遅いって、お互いわかったから。だから彼は出し惜しみしない。
わたしは契約を超えた信頼を、戦友に抱いた。
「ねえ、ニナ。あなたがいなかったら、わたし、一人ぼっちで、誰にも悲しまれずに死んでいってた。そんな悲しいことってある?」
「僕がいる」
「そう。ニナがいる。だからわたし、これからの時間を楽しもうと思う。どうかな」
どういうポジティブなんだ……、かれの唸りはシーツに消えて、わたしはやっぱりその髪を梳く。
かれと余生を生きたい。そして。
何かあったら必ず助けになる。とも、思っている。
ニナはわたしの戦友、だから。
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