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★第22話:君の海へ-清純視点-
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春の、甘い嗚咽。
それが私の最後の理性を守っていた、最後の砦を崩壊させる合図だった。
これまでは、彼の痛みを恐れていた。
だが今、腕の中で震えるこの体は、明らかに悦びを訴えている。
その事実が、私の中に眠っていた、私自身も知らなかった獣を静かに解き放った。
腰の動きが、次第に速度を増していく。
最初は、一つ一つを確かめるように、慎重だった動き。
それが春の吐息を吸い込むたびに、彼の肌の熱を感じるたびに、どうしようもなく本能的なものへと変わっていく。
ぎし、と寝具の軋む音。
肌と肌がぶつかり合う、生々しい音。
そして、二人分の粘液が奏でる、これまで聞いたこともない、淫らで、そしてどうしようもなく甘い水音。
書庫の静寂と墨の匂いを愛したはずの私が、今、この原始的で、生命そのもののような音に、心の底から酔いしれていた。
「……せいじゅん、さま……っ、あ……ぁん……!」
春が私の名を呼ぶ。
それはもう、懇願のようでもあり、祈りのようでもあった。
その声が私の耳朶(じだ)を打つたびに、体の奥で熱い塊が、さらに大きく膨れ上がっていく。
私は、彼の汗で濡れた髪をかき分け、そのうなじに深く吸い付いた。
肌から立ち上る湯上がりの清潔な香りと、彼自身の甘い体臭、そして交じり合った我々の汗の匂い。
そのすべてが、私の思考を麻痺させる極上の毒だった。
視線を落とせば、月明かりに照らされた、夢のような光景が広がる。
白い肌は興奮で淡い桃色に染まり、私のつけた痕が、そこかしこに、所有の印のように散っている。
快感に潤んだ瞳はとろりと蕩け、ただ、私だけを映していた。
ああ、駄目だ。
もう、止められない。
朔也先生に授かった理知的な教えなど、この圧倒的な五感の奔流の前では何の役にも立たない。
私はただ、この愛しい体をもっと深く、もっと激しく、感じたかった。
「はる……春……っ!」
私の呼びかけに、春の指が私の背中に、強く食い込む。
それはもはや、ただ体を支えるためではない。
もっと、もっと、と。私を、求める仕草だった。
そのいじらしいほどの求めに応えるように、私は、最後の理性を手放した。
動きはもはや制御を失い、ただ、互いの魂をぶつけ合うような、激しいものへと変わる。
「あっ、あ……! せいじゅんさま、……もう、……!」
腕の中で春の体が、びく、びくっと、大きく痙攣した。
しなやかな指先が、きつく私の背を掻き立てる。
その瞬間、春の内側で熱いものが、きゅっと、私を締め付けた。
春が、悦びの頂点へと達したのだ。
そのあまりに無防備で、美しい絶頂の表情を見た瞬間。
私の内でも、四十年ものあいだ固く閉ざしてきた扉が、轟音と共に、破壊された。
「……は、る……っ!」
獣のような低い呻き声と共に、私は己のすべてを、彼の最も奥深くに注ぎ込んだ。
熱く濁流のような衝動が、体中を駆け巡る。
視界が、白く、点滅した。
長い、長い絶頂の果てに、私は、糸が切れたように春の体の上に崩れ落ちた。
全身から力が抜けていく。
聞こえるのは、互いの荒い息遣いと、早鐘のように鳴り響く心臓の音だけ。
汗で、互いの肌が、ぴたりと吸い付いていた。
「……すまない」
私は顔を上げることもできず、春の髪に顔をうずめたまま、謝った。
「……我を、失った。……痛かったであろう……?」
すると腕の中の春が、弱々しい力で、私の背中を、ぽん、ぽんと、優しく叩いた。
「……ううん」
掠れた、幸せに満ちた声が、耳元で聞こえる。
「……すごく、気持ち、よかった……です。……あなたの、ぜんぶ……もらえた、みたいで……」
「……は、る……」
あまりに健気で愛おしい言葉に、私はもう、何も言えなかった。
ただ、この腕の中にあるかけがえのない宝物を、決して離さぬと誓うように、さらに強く、強く、抱きしめることしかできなかった。
それが私の最後の理性を守っていた、最後の砦を崩壊させる合図だった。
これまでは、彼の痛みを恐れていた。
だが今、腕の中で震えるこの体は、明らかに悦びを訴えている。
その事実が、私の中に眠っていた、私自身も知らなかった獣を静かに解き放った。
腰の動きが、次第に速度を増していく。
最初は、一つ一つを確かめるように、慎重だった動き。
それが春の吐息を吸い込むたびに、彼の肌の熱を感じるたびに、どうしようもなく本能的なものへと変わっていく。
ぎし、と寝具の軋む音。
肌と肌がぶつかり合う、生々しい音。
そして、二人分の粘液が奏でる、これまで聞いたこともない、淫らで、そしてどうしようもなく甘い水音。
書庫の静寂と墨の匂いを愛したはずの私が、今、この原始的で、生命そのもののような音に、心の底から酔いしれていた。
「……せいじゅん、さま……っ、あ……ぁん……!」
春が私の名を呼ぶ。
それはもう、懇願のようでもあり、祈りのようでもあった。
その声が私の耳朶(じだ)を打つたびに、体の奥で熱い塊が、さらに大きく膨れ上がっていく。
私は、彼の汗で濡れた髪をかき分け、そのうなじに深く吸い付いた。
肌から立ち上る湯上がりの清潔な香りと、彼自身の甘い体臭、そして交じり合った我々の汗の匂い。
そのすべてが、私の思考を麻痺させる極上の毒だった。
視線を落とせば、月明かりに照らされた、夢のような光景が広がる。
白い肌は興奮で淡い桃色に染まり、私のつけた痕が、そこかしこに、所有の印のように散っている。
快感に潤んだ瞳はとろりと蕩け、ただ、私だけを映していた。
ああ、駄目だ。
もう、止められない。
朔也先生に授かった理知的な教えなど、この圧倒的な五感の奔流の前では何の役にも立たない。
私はただ、この愛しい体をもっと深く、もっと激しく、感じたかった。
「はる……春……っ!」
私の呼びかけに、春の指が私の背中に、強く食い込む。
それはもはや、ただ体を支えるためではない。
もっと、もっと、と。私を、求める仕草だった。
そのいじらしいほどの求めに応えるように、私は、最後の理性を手放した。
動きはもはや制御を失い、ただ、互いの魂をぶつけ合うような、激しいものへと変わる。
「あっ、あ……! せいじゅんさま、……もう、……!」
腕の中で春の体が、びく、びくっと、大きく痙攣した。
しなやかな指先が、きつく私の背を掻き立てる。
その瞬間、春の内側で熱いものが、きゅっと、私を締め付けた。
春が、悦びの頂点へと達したのだ。
そのあまりに無防備で、美しい絶頂の表情を見た瞬間。
私の内でも、四十年ものあいだ固く閉ざしてきた扉が、轟音と共に、破壊された。
「……は、る……っ!」
獣のような低い呻き声と共に、私は己のすべてを、彼の最も奥深くに注ぎ込んだ。
熱く濁流のような衝動が、体中を駆け巡る。
視界が、白く、点滅した。
長い、長い絶頂の果てに、私は、糸が切れたように春の体の上に崩れ落ちた。
全身から力が抜けていく。
聞こえるのは、互いの荒い息遣いと、早鐘のように鳴り響く心臓の音だけ。
汗で、互いの肌が、ぴたりと吸い付いていた。
「……すまない」
私は顔を上げることもできず、春の髪に顔をうずめたまま、謝った。
「……我を、失った。……痛かったであろう……?」
すると腕の中の春が、弱々しい力で、私の背中を、ぽん、ぽんと、優しく叩いた。
「……ううん」
掠れた、幸せに満ちた声が、耳元で聞こえる。
「……すごく、気持ち、よかった……です。……あなたの、ぜんぶ……もらえた、みたいで……」
「……は、る……」
あまりに健気で愛おしい言葉に、私はもう、何も言えなかった。
ただ、この腕の中にあるかけがえのない宝物を、決して離さぬと誓うように、さらに強く、強く、抱きしめることしかできなかった。
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