寿命もないので手短に。

浅葱

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「もって二ケ月ですね。」
 目の前の医師は僕のカルテを見ながら答える。この医師は今まで何人の人間に余命を宣告してきたのだろうか。患者としては動揺に足る事態だが、目の前の医師は冷静に話しを進める。仕事の一部でしかないと考えるとなぜだか悲しくなった。
「もう、助かる方法は無いのですか?」
「宮沢さんの場合がんの進行速度が速く、治療を行っても多少余命が伸びるだけで、回復の見込みはありません。」
「そうですか。」
 医師は僕のことを話している筈なのに、どうしても僕のことだと思うことができない。それほどまでにこの余命宣告は突然で、想像もしていなかったことだった。ここ最近、疲労感が抜けずよく頭痛がおきて何となく身体は怠かったのだが、まさか癌と宣告されるとは思わなかったし、ましてや命に期限がつくとも思っていなかった。
「ありがとうございました。」
 医師の話が終わり、受付に呼ばれるまでの間これからどうするかを考えていた。僕はこれから、たった二ヶ月の間に一体何をすればいいのだろうか。たとえ無意味だとしても治療を行うべきか。家に帰って何事もなかったように日々を過ごすべきか。なぜ僕はこんなことを考えなければならないのか。まだ僕は二十七歳だぞ?まだ結婚もしてないし、人生これからなのに。なぜ僕は死ななければならないのだろうか。なぜ、僕なんだ・・・。
「宮沢さーん・・・宮沢省吾さーん。」
 看護師さんの声にはっとした。考えていたことが全部吹っ飛んで、僕は立ち上がった。
「お大事にしてくださいね。」
 看護師はそう言うと微笑んだ。きっと、誰からも好かれる性格をしているんだろうなと思った。でもこの看護師は僕がたった今余命宣告を受けたことをきっと知らないのだろうなとも思った。看護師のその誰にでも言わなければならない決まり文句は、今の僕には全く無意味な言葉に聞こえる。大事にしたところで、僕は・・・。

「おお、省吾―。」

 病院を出る時、後ろから声がかけられた。この偶然が、僕の残りの人生の行き先を決めた。
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