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第19話 農作業中に……

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……とか言ってたのに、米が手に入らないんじゃ意味ないよね。
イリアスとアリシアは、すでにやる気になっている。
やれやれ、仕方ないか。
僕は立ち上がる。
とりあえず、何をすればいいのか聞こう。
イリアスによると、稲は水田を作って育てるのが一般的らしい。
この村でも、昔はそうやって育てていたようだ。
今は、村の人達のほとんどが農業をやめてしまったらしく、稲を育てる場所はない。
しかし、イリアスは諦めなかったようだ。
村人を説得してまわった。
その結果、村長の家に田んぼを作る事になった。
イリアスは村長に、田んぼの作り方を教えてもらう。
そして、早速実行に移す事にしたようだ。
まずは苗作りからだ。
これは、苗床と呼ばれる場所に種籾を置き、発芽するまで待つ。
次に、育苗箱(苗を入れるための箱)に種籾を移し替える。
そして、それを土に植える。
最後に水を撒く。
これで、約1週間で収穫できるらしい。
早ければ早いほどいいのだが、さすがにそこまで早くはできないそうだ。
まぁ、気長に待とう。
僕達は苗床を作った。
といっても、種籾は村長の家にあるものを拝借するだけだ。
この世界の種は不思議だ。
日本の米と同じものなのに、違う種類に見えるからな。
見た目が違うだけで、味は同じだ。
鑑定してみたらわかると思うが、まだ試していない。
米を鑑定するのは、もう少し後になりそうだ。
さて、次は水汲みか。
井戸まで行って水を汲んでくる。
かなり重労働だぞ。
だが、2人は平然としている。
身体能力が高いからだろうか? それとも、魔法を使っているのか? とにかくすごい。
僕も負けていられない。
がんばろう! 僕達は、田んぼ予定地へとやってきた。
苗床の準備をする。
そこに種籾を置いていく。
これを全部使うわけではないが、今回は少し多めに置いておく。
田んぼの広さは、だいたい10アールくらいだ。

「この広さだと、5日くらいかな?」

アリシアが言う。
5日間ぶっ続けで作業するのか……。
結構大変だぞ。

「今日は準備だけして、明日から始めよう」

イリアスが提案する。
僕は賛成する。
正直、疲れている。
ゆっくり休みたかった。

だが、二人は僕を休ませる気は無い様だ。

田んぼの土を耕すらしい。
僕も手伝う。
クワなんて無いので、スコップを使う。
2人がサクッと終わらせてしまうので、僕はただ見ているだけだった。
楽ちんである。
でも、何もしないのは落ち着かない。

僕はイリアスの腰をもむことにした。

最近気づいたが、イリアスは腰痛持ちだ。
僕がもみほぐすと調子が良くなるらしい。
僕が、イリアスの背中をマッサージしようとした時だ。

「あ、もっと、してぇ……」

イリアスが喘ぎ声のような変な声で言った。
イリアスはビクっと身体を震わせる。
……僕は固まった。……何これ?
なんでこんな状況になったんだ? 僕はイリアスの背中を押していたはずだ。
しかし、いつの間にかイリアスと泥にまみれて抱き合っていた。
僕の胸元には、イリアスの豊かな乳房がある。
その柔らかさと温かさを感じながら、頭の中はパニックになっていた。
どうなっているんだ? なんで、こうなった?
僕はイリアスから離れようとするが、身体に力が入らない。

「んっ……だめ、逃げないで」

イリアスが甘えるように囁いた。
僕は必死に抵抗するが、どんどん動けなくなっていく。

「ソウマ……好き」

イリアスが耳元でささやく。
僕は混乱していた。
頭が回らない。
イリアスの唇が近づいて来る。
田んぼ仕事そっちのけで愛し合う。
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