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第5話 聖女を救え! はじめてのダンジョン!
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「アティナー!」
「どこだー!」
クルスもナツヤも、村中を走りながらアティナの名を呼ぶ。
だが、返事は返って来ない。
「どうせすぐ帰ってくるだろう。心配し過ぎだ」
「村長、万が一ということがあります。皆に呼び掛けてください!」
ナツヤの訴えを村長は無下に扱った。
どうやら側にいるデルマンのことを気にしている様だ。
「オシドスさん、すまない。我々で探すしかない」
「ありがとうございます。ナツヤさん。あなたが協力してくれるだけで十分です」
落胆の表情で村長の家から出て来たナツヤを、オシドスは温かい言葉で労った。
「デルマンの野郎……」
クルスは悔しくて唇を噛み締めた。
ポツリ、ポツリ……
何かが頬を伝う。
雨だ。
ザアアアアアア!
バケツをひっくり返したかのような大雨になった。
こんな時に……
雨に凍えながら暗い場所で怯えるアティナを想像すると、クルスはどうすることも出来ない自分に腹が立った。
「どこか思い当たる場所はないんですか?」
ナツヤが問い掛ける。
「そうですね……いつもは、私と一緒に農作業を終え、ここ最近は昼過ぎになると散歩して来ると言って出て行きます。だいたい30分くらいしたら帰ってくるんですが……」
「散歩……ですか。それはどこに?」
「公園、川沿い、丘……本人が言うにはその日によって違うみたいです」
その辺りはもう、調べつくした。
一体、アティナはどこに?
(!?)
目の前が一瞬、真っ白になる。
まるで激しい光に幻惑された感じだ。
天から地に向かって閃光が走った。
それは、小高い山のてっぺんにあるガジュマルの木に落ちた。
(まるで白いドラゴンが舞い降りたみたいだ)
そう思っていると、
ガカアアアアアアンッ!
数秒遅れて雷鳴が轟いた。
(白いドラゴン……)
クルスを中心に、手にそれぞれの武器を持った英傑の末裔達。
端っこで、白い絹の衣を着たアティナが皆を見守る様に立っている。
彼女の肩には真っ白なドラゴンの子供が乗っていた。
不意に、クルスの頭に浮かんだのはゲームパッケージ画像。
ドラゴネスファンタジアのそれだった。
クルスの頭の中で全てが繋がった。
「クルス、どこへ行くっ!?」
「ちょっとお腹痛くなったから家に戻る!」
雨の中、クルスはガジュマルの木に向かった。
~~~
「やっぱりだ……」
昼間、アティナが悪ガキ達にいじめられていた場所にクルスは立っていた。
そこから北にガジュマルの木が見える。
村の神木とされるガジュマルの木は、雷に打たれてもビクともしていなかった。
(アティナは毎日この空き地を通り過ぎ、ガジュマルの木に通っていたんだ)
その証拠に、空き地を囲う茂みに轍が出来ていた。
小さな靴跡付きの。
アティナは今日もガジュマルの木に向かって行った。
彼女はそこにいるはずだ。
なんでわざわざ、身内に嘘を付いてまで毎日そこに通うのか。
(まったく。その優しさのせいで人がどれだけの人が迷惑をこうむってるのかし知っているのかよ……)
だけど、クルスはアティナのそういうところが大好きだった。
~~~
「いない……」
木の根元には誰も居なかった。
この大雨だ。
アティナはどこかに避難したのか?
ガジュマルの木を観察すると、根元に小さな穴が空いていた。
子供一人がやっと入れるくらいの大きさだ。
その暗い穴の奥底を覗き込んだ。
「スライト!」
補助魔法を唱えた。
クルスは自分の周りを明るく照らした。
これで、穴の中に入りアティナを探すことが出来る。
~~~
地上から下ること数メートル、中はちょっとした洞窟になっていた。
洞窟とはいっても、クルスの目の前には奥まで続く一本道があるだけだった。
いわゆる、ダンジョンにしては単純な構造だが、逆に他に選択肢は無く、その道を進むしかなかった。
前後をモンスターに挟み撃ちされれば逃げることは困難だ。
「ま、大丈夫だろう」
ゲームではモンスターが発生するのはクルスが16歳になってからのことだ。
まだ、現れるにはまだ早すぎる。
「しかし、ゲームの時にはこんな洞窟なかったぞ」
ゲームのパラテノ村にもガジュマルの木はあったが、それはあくまで飾りだと思っていた。
「それとも僕のやり込み度が足りなかったのかな」
アティナとのパン屋経営が強制終了させらたクルスは、行き場の無くなった想いを最速クリアに振り向けた。
だから、あまり寄り道をしなかった。
全てのステータスをカンストし、モンスターを倒し、全てのアイテムを集め、マップの隅々まで踏破するのもゲームの醍醐味だ。
その点については反省すべきだと、自称ゲーマーのクルスは思っている。
「ギゲ……グゲゲ……」
角を曲がった先から鳴き声が聞こえる……
「まさか、まさかな……動物がいるだけだ」
自然と腰に差した銅の剣に手が行く。
角からそっと顔を出し、様子を窺う。
(あっ!)
いた!
アティナだ。
彼女は子供一人がやっと入れるくらいの岩の裂け目に入り込んでいた。
そして、彼女は何かを守っている様だ。
彼女の背後から顔をのぞかせているのは、白い鱗をまとった生き物だ。
◇◇◇
『聖女アティナ
パラテノ村にて牧師の父オシドスと暮らす。
クルスと幼馴染。
出自に複雑な事情を持つ少女。
幼い頃に命を救ったホワイトドラゴンを従える。
聖女ゆえに、物語にて重要な役割を果たす』
ドラゴネスファンタジア取扱説明書 登場人物紹介の章 2ページ目より
◇◇◇
(やはり、ホワイトドラゴン……を助けるために)
説明書や公式ホームページなどでアティナとホワイトドラゴンが仲良くなったきっかけは詳しく書かれていなかった。
ホワイトドラゴンとアティナが出会うなら今の時期くらいだろうと、クルスは思ったからここに来た。
クルスは誓った。
アティナを救い出す!
だが、彼の目の前には3体のゴブリンが彼の行く手を塞ぐように背を向けていた。
ゲームではモンスターが発生するのはクルスが16歳になってからのことだ。
だが、それはあくまでゲーム内での話だ……。
つづく
「どこだー!」
クルスもナツヤも、村中を走りながらアティナの名を呼ぶ。
だが、返事は返って来ない。
「どうせすぐ帰ってくるだろう。心配し過ぎだ」
「村長、万が一ということがあります。皆に呼び掛けてください!」
ナツヤの訴えを村長は無下に扱った。
どうやら側にいるデルマンのことを気にしている様だ。
「オシドスさん、すまない。我々で探すしかない」
「ありがとうございます。ナツヤさん。あなたが協力してくれるだけで十分です」
落胆の表情で村長の家から出て来たナツヤを、オシドスは温かい言葉で労った。
「デルマンの野郎……」
クルスは悔しくて唇を噛み締めた。
ポツリ、ポツリ……
何かが頬を伝う。
雨だ。
ザアアアアアア!
バケツをひっくり返したかのような大雨になった。
こんな時に……
雨に凍えながら暗い場所で怯えるアティナを想像すると、クルスはどうすることも出来ない自分に腹が立った。
「どこか思い当たる場所はないんですか?」
ナツヤが問い掛ける。
「そうですね……いつもは、私と一緒に農作業を終え、ここ最近は昼過ぎになると散歩して来ると言って出て行きます。だいたい30分くらいしたら帰ってくるんですが……」
「散歩……ですか。それはどこに?」
「公園、川沿い、丘……本人が言うにはその日によって違うみたいです」
その辺りはもう、調べつくした。
一体、アティナはどこに?
(!?)
目の前が一瞬、真っ白になる。
まるで激しい光に幻惑された感じだ。
天から地に向かって閃光が走った。
それは、小高い山のてっぺんにあるガジュマルの木に落ちた。
(まるで白いドラゴンが舞い降りたみたいだ)
そう思っていると、
ガカアアアアアアンッ!
数秒遅れて雷鳴が轟いた。
(白いドラゴン……)
クルスを中心に、手にそれぞれの武器を持った英傑の末裔達。
端っこで、白い絹の衣を着たアティナが皆を見守る様に立っている。
彼女の肩には真っ白なドラゴンの子供が乗っていた。
不意に、クルスの頭に浮かんだのはゲームパッケージ画像。
ドラゴネスファンタジアのそれだった。
クルスの頭の中で全てが繋がった。
「クルス、どこへ行くっ!?」
「ちょっとお腹痛くなったから家に戻る!」
雨の中、クルスはガジュマルの木に向かった。
~~~
「やっぱりだ……」
昼間、アティナが悪ガキ達にいじめられていた場所にクルスは立っていた。
そこから北にガジュマルの木が見える。
村の神木とされるガジュマルの木は、雷に打たれてもビクともしていなかった。
(アティナは毎日この空き地を通り過ぎ、ガジュマルの木に通っていたんだ)
その証拠に、空き地を囲う茂みに轍が出来ていた。
小さな靴跡付きの。
アティナは今日もガジュマルの木に向かって行った。
彼女はそこにいるはずだ。
なんでわざわざ、身内に嘘を付いてまで毎日そこに通うのか。
(まったく。その優しさのせいで人がどれだけの人が迷惑をこうむってるのかし知っているのかよ……)
だけど、クルスはアティナのそういうところが大好きだった。
~~~
「いない……」
木の根元には誰も居なかった。
この大雨だ。
アティナはどこかに避難したのか?
ガジュマルの木を観察すると、根元に小さな穴が空いていた。
子供一人がやっと入れるくらいの大きさだ。
その暗い穴の奥底を覗き込んだ。
「スライト!」
補助魔法を唱えた。
クルスは自分の周りを明るく照らした。
これで、穴の中に入りアティナを探すことが出来る。
~~~
地上から下ること数メートル、中はちょっとした洞窟になっていた。
洞窟とはいっても、クルスの目の前には奥まで続く一本道があるだけだった。
いわゆる、ダンジョンにしては単純な構造だが、逆に他に選択肢は無く、その道を進むしかなかった。
前後をモンスターに挟み撃ちされれば逃げることは困難だ。
「ま、大丈夫だろう」
ゲームではモンスターが発生するのはクルスが16歳になってからのことだ。
まだ、現れるにはまだ早すぎる。
「しかし、ゲームの時にはこんな洞窟なかったぞ」
ゲームのパラテノ村にもガジュマルの木はあったが、それはあくまで飾りだと思っていた。
「それとも僕のやり込み度が足りなかったのかな」
アティナとのパン屋経営が強制終了させらたクルスは、行き場の無くなった想いを最速クリアに振り向けた。
だから、あまり寄り道をしなかった。
全てのステータスをカンストし、モンスターを倒し、全てのアイテムを集め、マップの隅々まで踏破するのもゲームの醍醐味だ。
その点については反省すべきだと、自称ゲーマーのクルスは思っている。
「ギゲ……グゲゲ……」
角を曲がった先から鳴き声が聞こえる……
「まさか、まさかな……動物がいるだけだ」
自然と腰に差した銅の剣に手が行く。
角からそっと顔を出し、様子を窺う。
(あっ!)
いた!
アティナだ。
彼女は子供一人がやっと入れるくらいの岩の裂け目に入り込んでいた。
そして、彼女は何かを守っている様だ。
彼女の背後から顔をのぞかせているのは、白い鱗をまとった生き物だ。
◇◇◇
『聖女アティナ
パラテノ村にて牧師の父オシドスと暮らす。
クルスと幼馴染。
出自に複雑な事情を持つ少女。
幼い頃に命を救ったホワイトドラゴンを従える。
聖女ゆえに、物語にて重要な役割を果たす』
ドラゴネスファンタジア取扱説明書 登場人物紹介の章 2ページ目より
◇◇◇
(やはり、ホワイトドラゴン……を助けるために)
説明書や公式ホームページなどでアティナとホワイトドラゴンが仲良くなったきっかけは詳しく書かれていなかった。
ホワイトドラゴンとアティナが出会うなら今の時期くらいだろうと、クルスは思ったからここに来た。
クルスは誓った。
アティナを救い出す!
だが、彼の目の前には3体のゴブリンが彼の行く手を塞ぐように背を向けていた。
ゲームではモンスターが発生するのはクルスが16歳になってからのことだ。
だが、それはあくまでゲーム内での話だ……。
つづく
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