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第63話 出港
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「すいません、何度も言ってるじゃないですか。僕を先にしてもらえませんか?」
クルスのイライラは頂点に達した。
だから、馬車から降り、兵士に詰め寄った。
「おお、お前はいつもの」
兵士はクルスの顔を見て、目を丸くした。
「何だ? ぼうず。行商人にでも転職したのか?」
もう一人の兵士がクルスの頭を撫でる。
「そうじゃないんですよ。僕は急いでるんです。ロドス大陸への定期船に乗らなきゃならないんですっ! 早く身分確認して下さい!」
門番の兵士達とクルスは顔なじみだった。
それもそのはず、クルスは定期的に錬金のため港町マドニアにアイテムを持ち込んでいたからだ。
良好な関係を築くために、クルスはたまに兵士達にアイテムを与えたりしていた。
今では世間話をする仲になっていた。
「すまんな。クルス。順番的にはこの商人の身分確認が先なんだ」
「くっ……」
だが、兵士達はクルスとの人間関係よりも、仕事を優先したい様だ。
「あ、兵士さん。わしらは後回しでもいいですよ。トラキアへの船はまだ時間があるからな」
ゲロルグが気を使ってくれたお陰で、クルスの身分確認の方が先になった。
クルスは手早く身分証を提出し、街の中に通された。
海からの風がクルスの頬を撫でる。
まず目に飛び込んで来るのは、中心地にある白い塔。
頂上の展望台からの夜景は素晴らしく、恋人達のデートスポットとして有名だった。
石畳で舗装され、お洒落な街灯と、オブジェが街を彩る。
パルテノ村とは比べものにならないくらいの賑やかさ。
観光地としても有名な街。
港町マドニアは様々な大陸からやって来た船が立ち寄る。
ラインハルホ王国にとって、異文化を流入するための玄関口としての機能を持っていた。
異文化が混じり合った異国情緒溢れる街並みが特徴的だ。
だが、クルスは今、この街を楽しむ余裕は無い。
「くそーっ!」
クルスは当初、この街で旅の支度を整える予定だった。
戦いに備えたかった。
収納袋に詰め込んだアイテムを売り、金に替え、強力な武器防具を揃えたかった。
ゴブリン戦でボロボロになった鉄の剣では、先が思いやられる。
特に、イリアス山は雪で覆われている。
アイゼンの付いたブーツを調達したかった。
そして、錬金で強力なアイテムを用意しておきたかった。
この街は様々な貿易品が持ち込まれることから、錬金技術が発達し、至る所に錬金術師の店がある。
そこで、『万能草』、『熟睡寝袋』、『カイロ』、『ホット蜂蜜』、『激熱唐辛子』など、寒さ対策向けのアイテムを錬金しておきたかった。
だが、
今のクルスにとって、港町マドニアで旅の支度を整える暇は無かった。
全てを無視して、クルスは走った。
だが、
彼の目に映るのは、錨を上げ、帆を張り、今まさに出航しようとしている船。
その船こそが、彼が乗ろうとしていたロドス大陸への船だった。
「待ってくれー!」
「カーン、カーン、カーン……」
クルスの叫びと、教会の鐘が、同時に街に響いた。
船は港を離れ、大海原へと旅立った。
つづく
クルスのイライラは頂点に達した。
だから、馬車から降り、兵士に詰め寄った。
「おお、お前はいつもの」
兵士はクルスの顔を見て、目を丸くした。
「何だ? ぼうず。行商人にでも転職したのか?」
もう一人の兵士がクルスの頭を撫でる。
「そうじゃないんですよ。僕は急いでるんです。ロドス大陸への定期船に乗らなきゃならないんですっ! 早く身分確認して下さい!」
門番の兵士達とクルスは顔なじみだった。
それもそのはず、クルスは定期的に錬金のため港町マドニアにアイテムを持ち込んでいたからだ。
良好な関係を築くために、クルスはたまに兵士達にアイテムを与えたりしていた。
今では世間話をする仲になっていた。
「すまんな。クルス。順番的にはこの商人の身分確認が先なんだ」
「くっ……」
だが、兵士達はクルスとの人間関係よりも、仕事を優先したい様だ。
「あ、兵士さん。わしらは後回しでもいいですよ。トラキアへの船はまだ時間があるからな」
ゲロルグが気を使ってくれたお陰で、クルスの身分確認の方が先になった。
クルスは手早く身分証を提出し、街の中に通された。
海からの風がクルスの頬を撫でる。
まず目に飛び込んで来るのは、中心地にある白い塔。
頂上の展望台からの夜景は素晴らしく、恋人達のデートスポットとして有名だった。
石畳で舗装され、お洒落な街灯と、オブジェが街を彩る。
パルテノ村とは比べものにならないくらいの賑やかさ。
観光地としても有名な街。
港町マドニアは様々な大陸からやって来た船が立ち寄る。
ラインハルホ王国にとって、異文化を流入するための玄関口としての機能を持っていた。
異文化が混じり合った異国情緒溢れる街並みが特徴的だ。
だが、クルスは今、この街を楽しむ余裕は無い。
「くそーっ!」
クルスは当初、この街で旅の支度を整える予定だった。
戦いに備えたかった。
収納袋に詰め込んだアイテムを売り、金に替え、強力な武器防具を揃えたかった。
ゴブリン戦でボロボロになった鉄の剣では、先が思いやられる。
特に、イリアス山は雪で覆われている。
アイゼンの付いたブーツを調達したかった。
そして、錬金で強力なアイテムを用意しておきたかった。
この街は様々な貿易品が持ち込まれることから、錬金技術が発達し、至る所に錬金術師の店がある。
そこで、『万能草』、『熟睡寝袋』、『カイロ』、『ホット蜂蜜』、『激熱唐辛子』など、寒さ対策向けのアイテムを錬金しておきたかった。
だが、
今のクルスにとって、港町マドニアで旅の支度を整える暇は無かった。
全てを無視して、クルスは走った。
だが、
彼の目に映るのは、錨を上げ、帆を張り、今まさに出航しようとしている船。
その船こそが、彼が乗ろうとしていたロドス大陸への船だった。
「待ってくれー!」
「カーン、カーン、カーン……」
クルスの叫びと、教会の鐘が、同時に街に響いた。
船は港を離れ、大海原へと旅立った。
つづく
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