1 / 199
第1話 リストラされた僕、それでもギルドにしがみつく僕
しおりを挟む
「お前、働いてないから、追放」
ギルドマスターであるタイチの声がギルドホールの会議室に響いた。
その言葉に僕は耳を疑った。
「な、なぜですか?」
「だって、お前、治癒魔法使いのくせに、全然、俺達のこと治癒してないじゃん」
タイチはレベル90の戦士。
パーティでの戦闘では常に壁役として働いていた。
僕は彼やパーティのメンバーを後方で援護していた。
それが伝わっていなかったとは……
「ユウタ」
「はい」
「我がギルド『鉄騎同盟』はメンバー数10名の零細ギルド。それだけのメンバーをクエストの少ない報酬で賄っていくのは大変なことなの」
会計係のセイラが冷たい声で言う。
彼女はレベル80の魔法使い。
確か属性は『風』。
銀縁メガネを指でクイクイ上げながら、帳簿を見ている。
「分かってくれるわね」
「う~ん」
僕は腕を組んでしまった。
要するにこのギルドは、貧乏だということか。
僕は口減らしのためにクビになるという訳か。
「これは俺からの餞別だ」
そう言いながら3枚の金貨を放って来たのは、ギルド一のお調子者、ナオシゲ。
彼はレベル50の武闘家。
一番僕に優しかった。
「……」
じっと僕を見つめたまま黙っているのは、暗殺者のリンネ。
確か14歳。
このギルドで一番若い。
黒髪の美少女で、無駄口を叩かず確実に仕事を遂行する。
その他にもメンバーはいるが……
この場には僕を含めてこの5人のみ。
「分かりました」
僕はギルドに恩を感じていた。
孤児で奴隷商人に売られていた僕を、ギルドマスターのタイチは拾ってくれた。
屋根のある部屋で生活出来たことは、僕に人間らしい気持ちを取り戻させてくれた。
そして、僕は自分が治癒魔法を使えるということに気付いた。
だけど、僕の治癒魔法はとてつもなく特殊で、皆には気づいてもらえなかったみたいだ。
◇
ギルドホールを出た僕は、しばらくどうしたものかと立ち尽くしていた。
この世界は魔王討伐に躍起だった。
いくつものギルドが形成され、その中からいくつものパーティが生まれていた。
誰もが一旗揚げようと、必死だった。
僕はいくつかのギルドを訪問しようかと思った。
人生には目的があった方がいい。
それに、強くなればまた、『鉄騎同盟』からの誘いも来るかもしれない。
その時は、本当に恩返しが出来るかもしれない。
「おっと、失礼」
僕の横を、長身白髪の女性が通り過ぎる。
いい香りがした。
切れ長の目にはサファイヤブルーの瞳が輝いている。
ローブをはためかせながら僕が先ほど出て来たばかりのギルドホールに向かっている。
「あ」
彼女を出迎えたのは、タイチ。
彼は深々と礼をし、こう言った。
「やっとタダ飯喰らいをリストラ出来ました。リサ様。今日から治癒魔法使いとして、我がギルドで活躍をお願いいたします」
つづく
ギルドマスターであるタイチの声がギルドホールの会議室に響いた。
その言葉に僕は耳を疑った。
「な、なぜですか?」
「だって、お前、治癒魔法使いのくせに、全然、俺達のこと治癒してないじゃん」
タイチはレベル90の戦士。
パーティでの戦闘では常に壁役として働いていた。
僕は彼やパーティのメンバーを後方で援護していた。
それが伝わっていなかったとは……
「ユウタ」
「はい」
「我がギルド『鉄騎同盟』はメンバー数10名の零細ギルド。それだけのメンバーをクエストの少ない報酬で賄っていくのは大変なことなの」
会計係のセイラが冷たい声で言う。
彼女はレベル80の魔法使い。
確か属性は『風』。
銀縁メガネを指でクイクイ上げながら、帳簿を見ている。
「分かってくれるわね」
「う~ん」
僕は腕を組んでしまった。
要するにこのギルドは、貧乏だということか。
僕は口減らしのためにクビになるという訳か。
「これは俺からの餞別だ」
そう言いながら3枚の金貨を放って来たのは、ギルド一のお調子者、ナオシゲ。
彼はレベル50の武闘家。
一番僕に優しかった。
「……」
じっと僕を見つめたまま黙っているのは、暗殺者のリンネ。
確か14歳。
このギルドで一番若い。
黒髪の美少女で、無駄口を叩かず確実に仕事を遂行する。
その他にもメンバーはいるが……
この場には僕を含めてこの5人のみ。
「分かりました」
僕はギルドに恩を感じていた。
孤児で奴隷商人に売られていた僕を、ギルドマスターのタイチは拾ってくれた。
屋根のある部屋で生活出来たことは、僕に人間らしい気持ちを取り戻させてくれた。
そして、僕は自分が治癒魔法を使えるということに気付いた。
だけど、僕の治癒魔法はとてつもなく特殊で、皆には気づいてもらえなかったみたいだ。
◇
ギルドホールを出た僕は、しばらくどうしたものかと立ち尽くしていた。
この世界は魔王討伐に躍起だった。
いくつものギルドが形成され、その中からいくつものパーティが生まれていた。
誰もが一旗揚げようと、必死だった。
僕はいくつかのギルドを訪問しようかと思った。
人生には目的があった方がいい。
それに、強くなればまた、『鉄騎同盟』からの誘いも来るかもしれない。
その時は、本当に恩返しが出来るかもしれない。
「おっと、失礼」
僕の横を、長身白髪の女性が通り過ぎる。
いい香りがした。
切れ長の目にはサファイヤブルーの瞳が輝いている。
ローブをはためかせながら僕が先ほど出て来たばかりのギルドホールに向かっている。
「あ」
彼女を出迎えたのは、タイチ。
彼は深々と礼をし、こう言った。
「やっとタダ飯喰らいをリストラ出来ました。リサ様。今日から治癒魔法使いとして、我がギルドで活躍をお願いいたします」
つづく
27
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる