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第33話 愛情だけでは作れない。異世界では素材、運、スキルで、美味しい料理は決まる。
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グリフォンの背中の上で揺られること1時間。
僕は辺境に辿り着いた。
来て見て分かった。
辺境はこの世界の果てそのものだ。
「何てことだ……」
僕は果ての突端まで行き、果ての無い暗闇を見下ろした。
下半身がゾクッとする。
が、その暗闇に魅入られそうになる。
「ユウタ。気を付けろ。落ちると、この世界から消えるぞ」
ネスコに言われて、僕は我に返った。
小さい頃、この世界の地図を見たことがある。
場所は図書館だったか。
奴隷生活での唯一の憩いが、一日30分だけの読書だった。
◇
「この世界の形、見たことある?」
「ないよ」
「じゃ、見せてあげる」
同じく奴隷だった少女が僕に見せてくれた。
この世界の地図。
真四角の大陸。
それを縁取る黒。
「この黒いところの近くに、エルフとかドワーフとかが住んでるんだって」
「何だってこんな隅っこに……」
「私達が人間が、彼らを辺境に追いやったんだよ」
彼女の小さい指が、縁取りの黒を指す。
お互い奴隷だった僕と彼女は、亜人間の気持ちが何となく分かった。
◇
辺境と言うだけあって、酷い場所だった。
荒涼とした大地を何とか耕し、痩せた苗を植えている。
脆弱な流れの川が、ここでは命を繋ぐ水源だった。
「ここがフィナの家だよ」
彼女は家と呼ぶのもためらう様な、ボロボロの小屋に住んでいた。
「フィナ」
「何?」
「お父さんとお母さんは?」
フィナはエルフの王女だ。
身内が一人も出迎えに来ていないとはどういうことだ。
「いないよ」
「え?」
「死んだ」
フィナはあっけらかんとそう言う。
散々悲しみ抜いて、もう悲しむことに飽きたのか。
そんな笑顔だった。
彼女の過酷な運命を物語る様で、僕は胸が締め付けられた。
病気か何かで死んだのか、恐らく、誰かに殺されたのか。
僕はそれを訊く勇気が無い。
「それでも私達は人間のために生きる運命なのだ」
ネスコがそう言う。
「フィナが美味しい料理を作ってあげるよ」
この世界における調理とは、以下の様に行う。
・素材を選択する。
(所有しているものの中から選ぶ。何かの肉、胡椒、野菜、魚、など)
・調理方法を選択し手順を組み上げる。
(所有している調理スキルの中から選ぶ。煮る、焼く、茹でる、など)
これらの選択は、脳内にメニューと呼ばれる選択領域を呼び出して行われる。
美味しいものが出来るかどうかは、以下が関係する。
・素材
・調理方法
・性別
・職業
・手先の器用さという隠しパラメータ
・運
・レベル
「出来た!」
フィナが初めて僕に振る舞った料理は、黒焦げのピラニアだった。
「ユウタ」
「何?」
「守護者について話してなかったな」
夕飯後のお茶の時間。
テーブルの中央には攻略本。
それをランプの明りが暖かく照らす。
「こう書かれている」
ネスコが攻略本の一文を指差す。
<守護者は、救世主が持つ特定のアイテムや、特定のクエストの達成に引き寄せられる。救世主が気に入らなければ何度でもチェンジ可能>
「どういうこと?」
「要約すると、お前が気に入った者を守護者に出来るということだ」
つづく
僕は辺境に辿り着いた。
来て見て分かった。
辺境はこの世界の果てそのものだ。
「何てことだ……」
僕は果ての突端まで行き、果ての無い暗闇を見下ろした。
下半身がゾクッとする。
が、その暗闇に魅入られそうになる。
「ユウタ。気を付けろ。落ちると、この世界から消えるぞ」
ネスコに言われて、僕は我に返った。
小さい頃、この世界の地図を見たことがある。
場所は図書館だったか。
奴隷生活での唯一の憩いが、一日30分だけの読書だった。
◇
「この世界の形、見たことある?」
「ないよ」
「じゃ、見せてあげる」
同じく奴隷だった少女が僕に見せてくれた。
この世界の地図。
真四角の大陸。
それを縁取る黒。
「この黒いところの近くに、エルフとかドワーフとかが住んでるんだって」
「何だってこんな隅っこに……」
「私達が人間が、彼らを辺境に追いやったんだよ」
彼女の小さい指が、縁取りの黒を指す。
お互い奴隷だった僕と彼女は、亜人間の気持ちが何となく分かった。
◇
辺境と言うだけあって、酷い場所だった。
荒涼とした大地を何とか耕し、痩せた苗を植えている。
脆弱な流れの川が、ここでは命を繋ぐ水源だった。
「ここがフィナの家だよ」
彼女は家と呼ぶのもためらう様な、ボロボロの小屋に住んでいた。
「フィナ」
「何?」
「お父さんとお母さんは?」
フィナはエルフの王女だ。
身内が一人も出迎えに来ていないとはどういうことだ。
「いないよ」
「え?」
「死んだ」
フィナはあっけらかんとそう言う。
散々悲しみ抜いて、もう悲しむことに飽きたのか。
そんな笑顔だった。
彼女の過酷な運命を物語る様で、僕は胸が締め付けられた。
病気か何かで死んだのか、恐らく、誰かに殺されたのか。
僕はそれを訊く勇気が無い。
「それでも私達は人間のために生きる運命なのだ」
ネスコがそう言う。
「フィナが美味しい料理を作ってあげるよ」
この世界における調理とは、以下の様に行う。
・素材を選択する。
(所有しているものの中から選ぶ。何かの肉、胡椒、野菜、魚、など)
・調理方法を選択し手順を組み上げる。
(所有している調理スキルの中から選ぶ。煮る、焼く、茹でる、など)
これらの選択は、脳内にメニューと呼ばれる選択領域を呼び出して行われる。
美味しいものが出来るかどうかは、以下が関係する。
・素材
・調理方法
・性別
・職業
・手先の器用さという隠しパラメータ
・運
・レベル
「出来た!」
フィナが初めて僕に振る舞った料理は、黒焦げのピラニアだった。
「ユウタ」
「何?」
「守護者について話してなかったな」
夕飯後のお茶の時間。
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それをランプの明りが暖かく照らす。
「こう書かれている」
ネスコが攻略本の一文を指差す。
<守護者は、救世主が持つ特定のアイテムや、特定のクエストの達成に引き寄せられる。救世主が気に入らなければ何度でもチェンジ可能>
「どういうこと?」
「要約すると、お前が気に入った者を守護者に出来るということだ」
つづく
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