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第189話 救世主の過去
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僕は主人の醜い女が寝静まったのを確認した。
僕は毎日、添い寝をさせられた。
夜の使役をさせられ、疲れ切っていたが僕はベッドを抜け出した。
足音を立てない様に、部屋を出る。
バレやしないかと胸がドキドキする。
バレたら折檻させられる。
今頃、エリスも僕と同じ様にドキドキしながら自由を求めて外に出ようとしているのか。
そう思うことで、僕は自分を奮い立たせた。
迷路のような大きな屋敷の中を、僕は熟知していた。
毎日、掃除をさせられる。
その時に、屋敷の中を探索していたからだ。
どの通路を通れば最短で外に出れるか知っていた。
「はっ……はっ……」
屋敷の外に出た僕は、思わず息をついた。
小高い丘から街を見下ろした。
灯りがついている建物は少ししかない。
「あそこだ」
彼女が待っている場所は、街のはずれにある廃墟になったギルドホールだ。
灯台の様なギルドホールはここから、良く見える。
「ユウタ。来てくれたのね」
「うん! でも、どこに逃げる」
「そうね……辺境の近くまで」
彼女の視線ははるか遠くを見ていた。
「どれくらいかかるかな?」
「分からない。でもユウタとなら平気」
子供二人の徒歩では無理だ。
僕はそう思っていた。
手持ちの食料もわずかしかない。
だけど、彼女となら行ける気がした。
「行こう」
彼女の手を取った。
「うん」
二人して新天地を目指した。
その時だった。
「エリス、一体どこに行こうとしてるんだい?」
草むらから僕らと同じ年くらいの男の子が現れた。
「バカ息子……いえ、シロ様……あの、これは……」
「ふむ、その男の子と遊んでたのかい?」
シロ様と呼ばれた男の子は僕を見た。
僕は何故か、軽く会釈した。
シロの顔には穢れが無かった。
目が大きく、鼻筋が通った顔。
サラサラのマッシュルームカットの黒髪。
綺麗な絹の服をまとっている。
まるで女の子みたいだ。
両親の愛を全身で受け何不自由なく育って来た純粋無垢な顔がそこにあった。
きっと、こいつが毎晩、エリスをおもちゃにしている奴なのだろう。
「エリス、逃げようとしているね」
「いっ……いえ……その様なことはっ」
エリスは額から汗を流しながら、ブンブンと首を振った。
僕はエリスが否定したことに対して、ショックを受けた。
「君がその男の子と図書館で毎日会っていたのは知っていた。だけど、僕は見逃していたんだ。君も息抜きが必要だろうと思ってね」
シロは上流階級の余裕というものを持っていた。
残念ながら今の僕には余裕が無い。
それは持たざる者と、持つ者の差だった。
「だから、君がその男の子と逃げるのも知っていた。それも見逃そうと思った。けど……」
シロの顔がちょっとだけ寂しそうになった。
「僕は奴隷である君を、愛してしまった。だから、伴侶にしたい」
◇
「これが、ユウタの過去……」
アスミが送り込んだユウタの過去。
それが、私の脳内を駆け巡った。
<リンネ、これが真実なのです>
つづく
僕は毎日、添い寝をさせられた。
夜の使役をさせられ、疲れ切っていたが僕はベッドを抜け出した。
足音を立てない様に、部屋を出る。
バレやしないかと胸がドキドキする。
バレたら折檻させられる。
今頃、エリスも僕と同じ様にドキドキしながら自由を求めて外に出ようとしているのか。
そう思うことで、僕は自分を奮い立たせた。
迷路のような大きな屋敷の中を、僕は熟知していた。
毎日、掃除をさせられる。
その時に、屋敷の中を探索していたからだ。
どの通路を通れば最短で外に出れるか知っていた。
「はっ……はっ……」
屋敷の外に出た僕は、思わず息をついた。
小高い丘から街を見下ろした。
灯りがついている建物は少ししかない。
「あそこだ」
彼女が待っている場所は、街のはずれにある廃墟になったギルドホールだ。
灯台の様なギルドホールはここから、良く見える。
「ユウタ。来てくれたのね」
「うん! でも、どこに逃げる」
「そうね……辺境の近くまで」
彼女の視線ははるか遠くを見ていた。
「どれくらいかかるかな?」
「分からない。でもユウタとなら平気」
子供二人の徒歩では無理だ。
僕はそう思っていた。
手持ちの食料もわずかしかない。
だけど、彼女となら行ける気がした。
「行こう」
彼女の手を取った。
「うん」
二人して新天地を目指した。
その時だった。
「エリス、一体どこに行こうとしてるんだい?」
草むらから僕らと同じ年くらいの男の子が現れた。
「バカ息子……いえ、シロ様……あの、これは……」
「ふむ、その男の子と遊んでたのかい?」
シロ様と呼ばれた男の子は僕を見た。
僕は何故か、軽く会釈した。
シロの顔には穢れが無かった。
目が大きく、鼻筋が通った顔。
サラサラのマッシュルームカットの黒髪。
綺麗な絹の服をまとっている。
まるで女の子みたいだ。
両親の愛を全身で受け何不自由なく育って来た純粋無垢な顔がそこにあった。
きっと、こいつが毎晩、エリスをおもちゃにしている奴なのだろう。
「エリス、逃げようとしているね」
「いっ……いえ……その様なことはっ」
エリスは額から汗を流しながら、ブンブンと首を振った。
僕はエリスが否定したことに対して、ショックを受けた。
「君がその男の子と図書館で毎日会っていたのは知っていた。だけど、僕は見逃していたんだ。君も息抜きが必要だろうと思ってね」
シロは上流階級の余裕というものを持っていた。
残念ながら今の僕には余裕が無い。
それは持たざる者と、持つ者の差だった。
「だから、君がその男の子と逃げるのも知っていた。それも見逃そうと思った。けど……」
シロの顔がちょっとだけ寂しそうになった。
「僕は奴隷である君を、愛してしまった。だから、伴侶にしたい」
◇
「これが、ユウタの過去……」
アスミが送り込んだユウタの過去。
それが、私の脳内を駆け巡った。
<リンネ、これが真実なのです>
つづく
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