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第1章生徒会

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かに鍋うんまーー。
そう幸せに満たされる俺に、和風男子くんは俺の隣に座ってスプーンを差し出してくる。
「はい、あーん」
「あーーん♡」
そう言って俺はパクリとスプーンを咥えてかに鍋を味わう。徳原は俺からスプーンを引き抜くと、何も入っていないスプーンを恍惚な表情で口に含みねっとり舐め上げた。そして再び取り皿に取ったかに鍋をスプーンで掬う。
いやね、最初はどうかなとは思ったよ。思ったが、これに口出ししてやっぱかに鍋あげない的な事を徳原に言われて困るのは誰だ、俺だ。
徳原との間接キス<かに鍋。俺の中で不等式が出来上がった瞬間だった。
「神代様はかに鍋がお好きなのですね」
「うん!5000円以上の食べ物は何でも好きだよ」
「クソだな」
失礼な奴だな、誰だよ。
聞き覚えのある声に突然言われた言葉にそう思いながら、俺は声のする方に視線を向ける。と、そこにいたのは赤髪で細身の呆れ顔を浮かべる美少年、会長だった。さっき悲鳴が上がっていたから委員会の誰かが食堂に来たんだろうと思っていたが、まさかこいつだったとは。
「うわぁ…」
あからさまに顔を歪める俺に、会長は眉を寄せながら向かいの席に座る。おい座んじゃねぇよ、そう会長様に言うのが俺の夢。………、嫌な夢だな。
「何だ、俺が居ては不満か?」
「別にそんな事は無いですけどぉ、会長が居ると目立つじゃないですか。ほら、会長って無駄に美形だから」
「無駄とは何だ無駄とは。つか美形って言うなら神代や徳原もだろ」
「えっ!」
「ありがとうございます」
にこやかに礼を言う徳原に対し俺は美形とあまり言われた事が無い為、とてつもなく嬉しくて会長の同席を許す。
「もうっ、仕方無いですね。ここにいていいですよ。ほら、俺って美形だから」
「………、あぁ」
真顔で俺から顔を反らした会長はスマホで手早く料理を注文する。変わらず徳原から差し出されたスプーンをパクリと咥え、くぽっと小さな音を立て引き抜かれた。熱さのせいか一瞬視界がぼやける。
すると会長が眉を寄せ険しい顔で何も乗っていないスプーンを咥える徳原を睨んだ。その視線に気付いた徳原は柔らかな笑みを浮かべて首を傾げる。
「?何でしょうか、紅玉こうぎょく様」
「ほんとだよ紅玉様」
紅玉様って誰。
「お前、オレの前でいちゃつくとはいい度胸だな」
「いちゃつくなんて、人聞きが悪いですね。私はただ神代様に幸せのお裾分けをしていただけですよ。ですよね?神代様」
「うんっ」
するりと膝から股にかけて太ももを撫でられてくすぐったいと思いながら俺は笑顔でそう返す。けれど何故かいつも感じるセクハラ等の感情は無い。まあどうでもいいと俺は徳原の着物の袖を軽く引っ張った。
「ねぇ徳原、そんな事よりもう一口ちょうだぁい」
自分でも驚くようないつもより甘い声が出るが、別にどうでもいい。早くかに鍋が食べたい。
そう思っていると、会長が不審そうにこちらを見つめてきた。
「んぇ?」
「まさか神代、お前……」
「何ですぅ?徳原、それより早くかに鍋を───」
そう言っていた時、顔を近付けてきた徳原は俺の首をぬるりと舐めた。
「あっ……?な、何やってるの?」
飛び引きそうになる俺の背中に手を回し、徳原はその後も数度俺の首を舐めた。あ、ヤバい。それまで何も感じなかったのに、感じた気持ちよさにはっきりそう思った。
逃げようと腰を引くが、すらりと徳原に背中に手を回される。逃げたくても宥めるようにゆっくりと背中を撫でてきて、優しいそれにとろんと俺は体の力を抜いてしまう。未知の感覚にぞわぞわしながら俺は何かにすがりたくて徳原の背中に手を回した。
けれどすぐに会長が徳原の首根っこを掴み俺から彼を引き離し、解放された俺は離れた温もりを名残惜しく思いながら俺は意識を手放した。
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