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温もり
しおりを挟む「もし嫌じゃなかったらさ、行かない?
映画館で良いなら、この前みた子ぎつねの映画、第2話があるよ」
「大きなスクリーン?」
「そう、大きなスクリーン」
行ったこともない映画館を想像をした。
目の前に広がるテレビよりも大きなスクリーン。
そこに映り出される映像は、どれだけ綺麗なのだろう。
「ポップコーンもあるよ」
「……ポップコーン」
映画館の想像は、昨日裂けた体の痛みを忘れる程だった。
寝ている間に部屋に進入されては、
セックスばかりを強要され、
いつしかそのことしか頭になかった俺にも、
まだ幸せなお出かけの想像は出来るのだと思う。
みぃさんが鳴いて、僕と柳瀬さんの手に擦り寄る。
一瞬驚くけれど、手を離すには至らない。
「その時は、ちゃんとみぃは友達に預けとくよ。
大丈夫」
みぃさんに話しかける柳瀬さんに、
きっと彼の友達もまた優しいのだろうなと思う。
繋いだ手が、どんどん温かくなっていく。
人の体温ってこんなに温かかったっけ。
「……柳瀬さんの手は、みんなを温かくするのかなぁ」
思わず呟いたら、彼は小さく笑った。
「蒼の手も温かいよ」
この人の手は、きっと俺が繋ぐべきものじゃない。
手を繋ぐ行為は、落ち着くけれど、落ち着かない。
こんな矛盾を感じてしまう俺はおかしいのに、離せないのはなぜだろう。
"怖い人が怖くて、優しい人がもっと怖いなら幸せになんかなれないね"
立花さんの声を思い出し、震えそうになる体を抑えた。
ーー分かってる、分かってる。
この手は俺のものじゃない。
でも、あと少しだけ。
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