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第1話 新天地の生活
1-1 別次元への扉
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今日も僕の友達はインターネットだけだった。
生まれたときから歩行ができないほど体が弱く、15年間も病室で寝たきりの人生を送っていた僕はPCだけが自由に使用できた。
無限の世界に広がるインターネットは僕に様々な美しい風景写真や腹を抱えるような面白い動画、SNSを通じた意気投合した友達と巡り会えた。インターネットで出会えた友達とチャットや電話をして寂しい心を埋めてくれた。
だが僕にはインターネットの世界からはみ出すことができなかった。病室に監禁された僕にはPCが表示してくれる美しい光景を自分の瞳で見ることはできないし、喫茶店などで友達と直接話し合うこともできない。
外の世界に触れることができずに僕は一生を病室で終えてしまうのか?PCの画面外の世界に行くことはできないのだろうか?
毎日同じ部屋で恐怖を感じながらSNSを適当にチェックしていると、すぐにマウスやキーボードから手を離して耳を覆うほどの大音量のアラート音が突然発せられた。何秒間か経過してアラート音に慣れたとき、僕はすぐにPCの電源を長押ししてアラート音を消そうとした。
しかしPCの電源を長押ししてもPCの画面は消えずアラート音も鳴り続ける。そして僕は最終手段であるPCの破壊を考える。ノートPCを床に叩きつければアラート音は消えるし、新種のコンピュータウイルスにやられたと両親に言えば最新のPCも買ってもらえ一挙両得だ。
決断した僕は小さいテーブルに置かれているノートPCを持ち上げて、真っ白な床に思いっきり叩きつけた。ノートPCが落下した音が病室に鳴り響くとアラート音が消えて、静かな空間に戻った。これで僕は古いPCから最新のPCに交換できると楽観的に考えていた。
するとノートPCからアラート音ではなく若い女性の優しい声が発せられた。
「私に力を貸してください」
基盤が剥き出しになり画面も割れているのに、何でまだ動いているんだ! 俺は病室の堅いベッドから手を伸ばしてノートPCを拾い上げ、再び叩き落とした。
「止まれ! 壊れろ!」
これでコンピュータウイルスを退治できただろうとやりがいを感じながらノートPCの画面を見つめると、突然真っ白な画面が表示され、画面から小さい粒が無数に出現した。これはコンピュータウイルスではなく、未来からの敵の仕業か? 一体、何が目的なのか?
病院食のご飯粒よりも小さい無数の粒は1箇所に集まり、少女の姿に構成された。これが未来のワープ技術なのだろうか?
僕の目の前に出現した少女は再び優しい声を発した。今度はPCのスピーカーからではなく、明瞭な人間の声が聞こえた。
「奈木奈央様、私に力を貸してください。貴方様なら私達の世界を救えるはずです」
なぜ僕の名前を知っている? そしてなぜ僕が世界を救えるのか? 意味が分からない。
「貴方様は私達の世界の救世主となる英雄です。私とキクニナガ王国に一緒に来てください」
「キクニナガ王国?」
僕は小さなテーブルに置いてあるスマートフォンを手に取り検索しようとしたが少女の声が遮った。
「貴方様が今から検索しても出ません。私達の国はこの世界とは別次元の空間にあります。もしよければ新しい世界に行きませんか?」
別次元という響きは怖いが、雰囲気が変化しない病室の空間にも飽きたし、両親も僕のことを見捨てたのか半年に一回しか訪れなくなった。それなら僕は新天地で楽しい人生を謳歌したほうがいいだとう。
「分かった、一緒に行こう! 僕をキクニナガ王国に連れて行って!」
「ありがとうございます。では私の手を掴んでください」
白色のロングヘアーをなびかせている少女の手を掴むと、僕と少女は徐々に体が白色の粒子に変化していった。僕は思わず少女の手から離れようとすると、少女は強い力で僕の手を掴んだ。
「奈木様、落ち着いてください。これが私達の世界に行くための儀式です。心配しないでください」
「でも僕の足や手が粒になっている!」
「大丈夫です。少しの間だけ我慢してください」
「僕はどうなってしまうの! 粒になってどうなるの!」
「これから奈木様のPCのモニタを通してキクニナガ王国に移動します」
粒となった僕の体はPC画面に吸い込まれていくのを確認した。そして僕の下半身が白色の粒となってしまった。もう後戻りできない!
「キクニナガ王国への移動は一瞬なので安心して目を瞑って、私の手を絶対に離さないでください。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
今の僕は少女を信じることしかできなかった。僕は瞳を閉じて、目の前が真っ暗になった。
生まれたときから歩行ができないほど体が弱く、15年間も病室で寝たきりの人生を送っていた僕はPCだけが自由に使用できた。
無限の世界に広がるインターネットは僕に様々な美しい風景写真や腹を抱えるような面白い動画、SNSを通じた意気投合した友達と巡り会えた。インターネットで出会えた友達とチャットや電話をして寂しい心を埋めてくれた。
だが僕にはインターネットの世界からはみ出すことができなかった。病室に監禁された僕にはPCが表示してくれる美しい光景を自分の瞳で見ることはできないし、喫茶店などで友達と直接話し合うこともできない。
外の世界に触れることができずに僕は一生を病室で終えてしまうのか?PCの画面外の世界に行くことはできないのだろうか?
毎日同じ部屋で恐怖を感じながらSNSを適当にチェックしていると、すぐにマウスやキーボードから手を離して耳を覆うほどの大音量のアラート音が突然発せられた。何秒間か経過してアラート音に慣れたとき、僕はすぐにPCの電源を長押ししてアラート音を消そうとした。
しかしPCの電源を長押ししてもPCの画面は消えずアラート音も鳴り続ける。そして僕は最終手段であるPCの破壊を考える。ノートPCを床に叩きつければアラート音は消えるし、新種のコンピュータウイルスにやられたと両親に言えば最新のPCも買ってもらえ一挙両得だ。
決断した僕は小さいテーブルに置かれているノートPCを持ち上げて、真っ白な床に思いっきり叩きつけた。ノートPCが落下した音が病室に鳴り響くとアラート音が消えて、静かな空間に戻った。これで僕は古いPCから最新のPCに交換できると楽観的に考えていた。
するとノートPCからアラート音ではなく若い女性の優しい声が発せられた。
「私に力を貸してください」
基盤が剥き出しになり画面も割れているのに、何でまだ動いているんだ! 俺は病室の堅いベッドから手を伸ばしてノートPCを拾い上げ、再び叩き落とした。
「止まれ! 壊れろ!」
これでコンピュータウイルスを退治できただろうとやりがいを感じながらノートPCの画面を見つめると、突然真っ白な画面が表示され、画面から小さい粒が無数に出現した。これはコンピュータウイルスではなく、未来からの敵の仕業か? 一体、何が目的なのか?
病院食のご飯粒よりも小さい無数の粒は1箇所に集まり、少女の姿に構成された。これが未来のワープ技術なのだろうか?
僕の目の前に出現した少女は再び優しい声を発した。今度はPCのスピーカーからではなく、明瞭な人間の声が聞こえた。
「奈木奈央様、私に力を貸してください。貴方様なら私達の世界を救えるはずです」
なぜ僕の名前を知っている? そしてなぜ僕が世界を救えるのか? 意味が分からない。
「貴方様は私達の世界の救世主となる英雄です。私とキクニナガ王国に一緒に来てください」
「キクニナガ王国?」
僕は小さなテーブルに置いてあるスマートフォンを手に取り検索しようとしたが少女の声が遮った。
「貴方様が今から検索しても出ません。私達の国はこの世界とは別次元の空間にあります。もしよければ新しい世界に行きませんか?」
別次元という響きは怖いが、雰囲気が変化しない病室の空間にも飽きたし、両親も僕のことを見捨てたのか半年に一回しか訪れなくなった。それなら僕は新天地で楽しい人生を謳歌したほうがいいだとう。
「分かった、一緒に行こう! 僕をキクニナガ王国に連れて行って!」
「ありがとうございます。では私の手を掴んでください」
白色のロングヘアーをなびかせている少女の手を掴むと、僕と少女は徐々に体が白色の粒子に変化していった。僕は思わず少女の手から離れようとすると、少女は強い力で僕の手を掴んだ。
「奈木様、落ち着いてください。これが私達の世界に行くための儀式です。心配しないでください」
「でも僕の足や手が粒になっている!」
「大丈夫です。少しの間だけ我慢してください」
「僕はどうなってしまうの! 粒になってどうなるの!」
「これから奈木様のPCのモニタを通してキクニナガ王国に移動します」
粒となった僕の体はPC画面に吸い込まれていくのを確認した。そして僕の下半身が白色の粒となってしまった。もう後戻りできない!
「キクニナガ王国への移動は一瞬なので安心して目を瞑って、私の手を絶対に離さないでください。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
今の僕は少女を信じることしかできなかった。僕は瞳を閉じて、目の前が真っ暗になった。
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