SFの世界に移転した病弱の少年がチート能力で異世界を救う ー未来からの招待状ー

nusuto

文字の大きさ
2 / 6
第1話 新天地の生活

1-2 招待状

しおりを挟む
 数分後、泥まみれの道路で寝ていた僕は何者かに背中を叩かれて目を覚ました。少女の優しい声が右耳から聞こえた。
 
「大丈夫? 意識はある?」
 
「ここはどこだ? 俺はキクニナガ王国にワープしたのか?」
 
「そうよ、ここはキクニナガ王国よ。それよりもあなたはどうしてここで寝ていたの? 何かあったの?」
 
 可愛らしい少女の顔が僕の目の前にやってきた。病室以外の人間と顔を合わせて会話することが初めてなので、顔を赤らめて緊張しながら答えた。
 
「僕は別次元の世界からやってきて、今さっきこの世界に来たばっかりだよ」
 
「へえー、別次元からこの国に来てくれたんだ。私たちの国に興味を持ってくれてありがとう」
 
 謎の女性によってこの世界に来たのが正解だが、少女に正解を語っていいのか分からなかったので、少女に小さく頷いた。
 
「うん……」
 
「それよりもあなたの服が泥まみれだよ! 私の家に着替えがあるから早く着替えたほうがいいよ。あなたは立つことはできる? 手を貸してあげるよ」
 
 僕は少女の暖かく柔らかい手を掴みながら、手足を動かしてみた。
 
 すると僕は病室にいた頃の体ではなく、自由に動くことができる体に変化していた! そして少女の手を借りながら、初めて立つことや歩くことができた! この世界に来なければ絶対にできなかった経験だろう!
 
「僕は自由の体を手に入れたんだ! これで僕は何でもできる!」
 
「別次元では辛い事があったのね……」
 
「僕の体が全く動かせなかったんだ。立つことも歩くことも、そして外に出ることも何もできなかったんだ」
 
 突然、慈愛に満ちた優しい表情をしている少女は僕に抱きついてきた! 出会ってから数分の出来事だよ!
 
「とても悲しいことがあったのね。でも大丈夫。この次元では私があなたの幸せをサポートしてあげるよ」
 
「名前も知らない僕を信用していいのか?」
 
「うん。あなたは悪さをするような人には思えないし、優しくて心強いオーラが見えるわ」
 
「そんなオーラは出していないと思うけど?」
 
「私にはあなたが気づいていないオーラが見えるのよ。きっとあなたはこの世界で輝かしい人生を歩むことができると思うわ」
 
「そうかなあ、僕にはそんな自信はないなあ」
 
「できる! 絶対にできるよ!」
 
 少女は小さい声から強い口調で僕を励ましてくれた。こんなに僕を褒めてくれた人は彼女しかいない。
 
「過去の悲しい記憶は忘れて、この世界を楽しもうよ! 私がいるから大丈夫! 喜びに満ち溢れた生活を送れることを約束するよ」
 
「ありがとう」
 
 少女は数歩離れてから僕と握手し、自己紹介を始めた。
 
「私はAI研究科のイチイ。イノンド町のコンピュータが不慣れな住民に操作方法を教えているわ。よろしくね。あなたの名前はなんていうの?」
 
「僕の名前はナギ。この国のことは全然知らないから色々と迷惑をかけると思うけど、これからもよろしくね」
 
「私が少しずつこの世界のことを教えてあげるから心配しないでいいよ。そうだ、ナギくん。この機械を見たことある?」
 
 イチイは左腕に付けていた黒色の腕時計を見せてくれた。でも腕時計には時針や数字が記載されておらず、真っ黒な円だけが表示されていた。
 
「腕時計? でも時刻を表示していないから違うのかな?」
 
「これは最近、政府から提供されたPCなのよ! 黒色のボタンを押すと画面が映し出されるのよ!」
 
 少女が腕時計のパネルを叩くと、パネルから白色の光が放出され、8インチくらいの液晶パネルが腕時計の真上に表示された! 光の粒子で構成された液晶パネルには日本で使っていたPCと同じような画面が映し出されていた! ここは未来なのか!
 
「凄い! こんなの初めてだよ!」
 
「私もナギくんのように驚いたわよ。今まで使っていた分厚いノートPCからこんなに小さくなるなんて信じられないよね」
 
「そうだね!SFの世界に来たような感覚だよ! このPCでは何ができるの?」
 
「検索やプログラミングはもちろん、なんとAIも操作できるのよ! 私の家にAIがあるから今すぐ出発しよう!」
 
「うん!」
 
 僕とイチイは泥だらけの道路から手を繋ぎながら抜け出して、舗装されている道路をゆっくりと歩き始めた。
 
 すると僕にとって衝撃の光景に遭遇した。青空には高速で移動する自動車、地上には20階建て以上のビル群が建てられていた! そして人々は様々な画面が表示されている腕時計型のPCを、手を一切使わずに歩きながら検索やプログラミングをしていた!
 
「ナギくん、驚きすぎだよ! 口が開いているよ!」
 
「だって空を飛ぶ自動車、巨大なビル群、手を使わずに操作するPCを見たら誰でも驚くよ!」
 
「別次元ではここまでコンピュータ技術が発達していなかったのね」
 
「そうだよ! 本当にSFの世界に迷い込んだ気分だよ!」
 
 コンピュータ技術が進化している世界に目を輝かせて観察していると、いきなり野太い大声が聞こえた。
 
「貴様は貧困層の住人ではないな! 金を早く出せ! 出さないなら撃つぞ!」
 
 僕たちはすぐに男達の声がする方向へ走ると、5人の屈強な男達が小学生の体型をしている少女に向けてライフルを構えていた。男達は大声で少女を脅していた。
 
「富裕層の貴族め! さっさと金を寄越せ!」
 
 ライフルを向けられている少女は怯えて声が出せない状況であり、男達によって逃げ道を塞がれていた。
 
 僕は少女の命を救いたい! でも僕には少女を救える力を持っていない……。僕はこの次元でも何もできないのか……。
 
 絶望を感じている僕は下を向いていると、病室で聞いたことがある少女の声が聞こえた。
 
「奈木奈央様、貴方様にこの世界を救う力を差し上げましょう」
 
 だが周りを見渡しても女性の姿はいなかった。もしかして僕の心に潜んでいるのか?
 
「私の姿を見ることはできません。私は貴方様の心の中にいます。そして私の声は貴方様しか聞こえません。私と会話するときは心の声で会話してください」
 
「あなたは病室の少女だよね?」
 
「ええ、そうですよ。私の名前はミルテ。貴方様のために全力で支援します」
 
「ミルテ、お願いがある! 少女を救いたい!」
 
「分かりました。貴方様に力を差し上げましょう。両手を御覧なさい」
 
 俺は両手を確認するとビームのように眩しい水色の光が放出している! これは何なんだ?
 
「これが少女を救うことができる力です。貴方様の記憶を上書きして、この力を自由自在に利用できるようにしておきます。奈木奈央様、貴方様は決して弱い人間ではありません。強い心を持って覚悟を決めて戦いなさい」
 
 ミルテの声が消えると、水色に発光する力が理解できた。僕にはビームを自由自在に操る能力がある。もう僕は弱くない!
 
 僕は戸惑っているイチイに小声で話しかけた。
 
「僕が奴らを懲らしめる。イチイは下がっていてくれ」
 
 イチイは目を丸くした。
 
「ナギくん、どうしたの! 私たちは悪党に勝てないわよ!」
 
「大丈夫だ。僕はこの世界を平和にするために来た。必ず倒してみせる」
 
「わかったわ、でも絶対に死なないでね」
 
 不安そうな表情をしているイチイは僕の後ろに下がった。そして僕は男達に大声で叫んだ。
 
「少女に手を出すな! 俺が相手だ!」
 
 すると男達は俺を鋭い目つきで睨んできた。僕を殺そうとしているような表情だ。
 
「何だと! 泥まみれのお前が俺たちの邪魔をするのか! 死ね!」
 
 男達は一斉にライフルの引き金を引き、無数の銃弾を放ってきた。後ろから「やめて!」とイチイの悲鳴が聞こえた。
 
 だが僕はここで負けるわけにはいかない。銃弾に向けて左手を大きく広げると、俺の周りに半球形の半透明のバリアが発生した。無数の銃弾はバリアによって弾き飛ばされ、男達のまわりに大量の弾頭が落ちていた。
 
 傷が一切ない僕はバリアを解除し、両手に水色のビームの粒子で生成した剣を構えてから男達に叫んだ。
 
「さっさと降伏して立ち去れ! 降伏しないなら戦う!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...