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第2.5章 希望の空
第19話 夜が明けて
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俺とミアとエレナがアーガスの家に着くと、アーガスに仕えている騎士やメイドが俺たちに駆け寄ってきた。
「東条様、お怪我はないですか? 大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。心配させて申し訳ない」
「ミア様もご無事でなによりです。早く休んでください」
「ありがとう。早速休ませてもらう」
「東条様、アメリア様たちはどちらへ行かれましたか?」
「アメリアたちは深い傷を負った魔法学校の生徒の手当をしている。俺たちもここで少し休んでから魔法学校で生徒の治療をする」
「では休憩後に私たちも一緒に同行してよろしいでしょうか? お手伝いできることがあれば何でもやります」
「ありがとう、じゃあ30分後にここを出るから準備してくれ」
「承知いたしました」
俺たちは大勢の騎士やメイドに丁寧に迎えてもらってから家に入ると、アーガスが深く頭を下げていた。
「皆様、我々のために立ち上がってくださり、ありがとうございます。皆様がいなければこの世界は崩壊していたでしょう。心から感謝しております」
「そこまでしなくていい。俺たちは平和のために戦っただけだ」
アーガスは何度も俺たちに頭を下げて家に迎え入れた。するとエミリーも俺たちの帰りを待って玄関で待機していた。エミリーは大粒の涙を流している。
「皆さんがご無事で良かったです!」
エミリーは急に俺たちに駆け寄って、力強く俺たちを抱いてきた。
「東条さん、帰ってきれくれて、ありがとうございます。本当に心配で寝られませんでしたよ」
「エミリー、心配してくれてありがとう。でも俺はエミリーに会うために必ず生き残るから心配しなくて大丈夫だよ」
「ですけど東条さんの無茶な行動が不安でゆっくりできませんよ。今日はずっとここにいますよね?」
「すまないが30分後に俺たちはここを出る。魔法学校での戦闘で傷ついた生徒を治療しないといけない」
するとエミリーは俺の胸倉を強く掴み、不安と慈悲が混じった表情で俺の瞳を見続けた。
「東条さん! 絶対に行かないでください! 東条さんは黒魔術師との戦いで疲れ果てているのに、これ以上力を使ったら本当に死んでしまいますよ!」
「気遣ってくれるのは有り難いが、重症の生徒が多すぎるし、それに治療を行える魔道士がこの戦いで大勢失ってしまった。だから俺たちは絶対に行く」
「ミアさん、東条さんに何か言ってください!」
エミリーはミアに助けを求めたが、ミアは可愛そうな表情をしながら首を振った。
「エミリー、東条が決めたことを撤回させるのは不可能よ。諦めて」
「でもミアさんなら!」
「無駄だよ。私は東条と何度も一緒に戦っているけど、東条は弱者を絶対に救うために自分を犠牲にしてでも妥協しない魔道士よ。私がやめてと言っても東条を止められない。東条には東条の信念があるから、エミリーは東条の考えを尊重して見守ってほしい」
「そうですか……」
エミリーは落胆した表情でエレナの顔を除いた。エレナは「無理です!」と即答してミアの後ろに隠れた。エミリーは諦めた表情で俺を見つめた。
「分かりました、東条さんを止めることは諦めます。ですが絶対に力を使いすぎないでください。ここで約束してください」
「ああ、分かっている。エミリーのためにもちゃんと守るよ」
「本当ですよ! 東条さんがいない世界にしないでくださいね!」
「心配しすぎだよ。俺は絶対に大丈夫だ。俺はエミリーのために必ず帰ってくるから、少しだけ待っていてくれ」
「分かりました。では少しの間だけでもゆっくり休んでください」
俺は深くお辞儀をしているエミリーから離れて個人部屋に向かった。すぐに体力を回復させてアメリアたちと合流しよう。
しかし俺たちは個人部屋の手前でミアに静止されて立ち止まった。
「東条、エレナの部屋はあるか?」
「そうだった! エミリーに聞くべきだった! 空いている部屋はないか探してみるよ」
「東条、慌てるな。休憩時間を犠牲にしてエレナの個人部屋を作る時間がもったいない。東条が1つだけ条件を飲んでくれればすぐに解決する」
「どんな条件だ?」
「エレナと一緒に東条の部屋で休んで貰えないか? 私は1人で寝たい」
「えっ!」
ミアの大胆すぎる提案に俺は言葉を失い、エレナは顔を赤らめた。
「東条、私はもう寝るから2人で解決してくれ。おやすみ」
「ミア、待ってくれ! そんな条件は飲めない! エレナはミアの部屋で寝るべきだ!」
「私と何度も一緒に戦ってきた東条なら私の性格をよく理解しているはずだ」
俺はミアの性格をよく知っている。ミアは黒魔術師を圧倒する屈強な魔道士という役割を周囲にアピールしているが、中身は黒魔術師に脅されて心が破壊された脆い少女だ。彼女はエレナに本当の姿を見られたくないために1人にしてほしいのだろう。
「しょうがない、エレナの寝所は俺が考えておくよ。ミア、おやすみ」
「おやすみ」
そして廊下に取り残された俺はエレナに小声で提案した。
「すまない、アメリアの部屋で寝てくれないか? 今は誰も使っていないから勝手に寝てもいいと思うよ」
エレナは俺の提案を即座に断り、大きく首を振った。
「駄目ですよ。勝手に他人の部屋を借りるのはいけないと思います」
「そうだよな、駄目だよな。俺たちはどうしようか?」
仲間の部屋を無断で使うのも悪いし、未使用の部屋を探すのも時間がもったいない。俺は天井を見つめながら考えていると、エレナが俺の右手を優しく握った。彼女は潤っている瞳で恥ずかしそうな表情をしていた。
「東条さんで一緒に寝ていいですか?」
「大丈夫なのか?」
「ええ、これしか方法がないですし、私は気にしませんよ」
「分かった、俺は離れて寝るから安心してくれ」
「いいえ、東条さんとくっついて寝たいです」
「えっ! 俺たちは出会ってから数時間しか経っていないぞ! 俺を信用していいのか?」
俺は困惑してエレナから目を逸らそうとしていたが、エレナは俺をじっと見つめていた。
「当たり前ですよ。魔法学校のために、そして私を守るために必死に戦ってくれた東条さんを心から信頼していますよ。だから早く一緒に寝ましょう。私たちには休憩時間がありません」
「ああ、……。分かった、……」
異世界に訪れる前までには絶対にあり得ない光景に出会って混乱している俺に対してエレナは俺の全身を包み込むように抱きついてきた。
「東条さん、私は1人が怖いです。一緒にいてください」
俺は彼女を個人部屋に通して、1つのベッドで一緒に寝始めた。エレナは俺の腕を掴みながら安心している表情で寝ていた。
30分後、俺とエレナはノックせずに入室してきたミアに体を擦られて起床した。
「東条、エレナ、早く行くぞ」
「分かっている、今すぐ行くよ。エレナはどうだ?」
「私も心身ともに大丈夫です。すぐに皆さんの元に向かいましょう」
俺たちは廊下を駆け抜けて玄関にたどり着くと、エミリーが俺たちの目の前で深くお辞儀をしていた。
「皆さん、アメリアさんたちと一緒に絶対に帰ってきてくださいね」
「エミリーは心配しすぎだ。俺たちは邪悪に負けないから安心して待っていてくれ」
「行ってくる。私たちを心配する暇があるならエレナの個人部屋をすぐに作ってくれ」
エミリーはミアに不思議そうな表情で尋ねた。
「エレナさんって誰ですか?」
「エミリーにとっては初対面だったな。私たちの新しい仲間の魔導学校の優等生。自己紹介してやれ」
エレナはミアに振られて簡単に自己紹介した。
「魔法学校で魔道士の勉強をしておりますエレナです。アメリアさんの論文を読んで光の魔法について興味が湧き、私もいつか悪夢に苦しめられている国民を救えるような魔道士になりたいです。まだまだ東条さんのように活躍できませんが、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。エレナさんの部屋は大至急用意しますね」
「ありがとうございます。それでは行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
大きく手を振って見送っているエミリーと別れ、俺たちは再び魔導学校に向かって歩きだした。
「東条様、お怪我はないですか? 大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。心配させて申し訳ない」
「ミア様もご無事でなによりです。早く休んでください」
「ありがとう。早速休ませてもらう」
「東条様、アメリア様たちはどちらへ行かれましたか?」
「アメリアたちは深い傷を負った魔法学校の生徒の手当をしている。俺たちもここで少し休んでから魔法学校で生徒の治療をする」
「では休憩後に私たちも一緒に同行してよろしいでしょうか? お手伝いできることがあれば何でもやります」
「ありがとう、じゃあ30分後にここを出るから準備してくれ」
「承知いたしました」
俺たちは大勢の騎士やメイドに丁寧に迎えてもらってから家に入ると、アーガスが深く頭を下げていた。
「皆様、我々のために立ち上がってくださり、ありがとうございます。皆様がいなければこの世界は崩壊していたでしょう。心から感謝しております」
「そこまでしなくていい。俺たちは平和のために戦っただけだ」
アーガスは何度も俺たちに頭を下げて家に迎え入れた。するとエミリーも俺たちの帰りを待って玄関で待機していた。エミリーは大粒の涙を流している。
「皆さんがご無事で良かったです!」
エミリーは急に俺たちに駆け寄って、力強く俺たちを抱いてきた。
「東条さん、帰ってきれくれて、ありがとうございます。本当に心配で寝られませんでしたよ」
「エミリー、心配してくれてありがとう。でも俺はエミリーに会うために必ず生き残るから心配しなくて大丈夫だよ」
「ですけど東条さんの無茶な行動が不安でゆっくりできませんよ。今日はずっとここにいますよね?」
「すまないが30分後に俺たちはここを出る。魔法学校での戦闘で傷ついた生徒を治療しないといけない」
するとエミリーは俺の胸倉を強く掴み、不安と慈悲が混じった表情で俺の瞳を見続けた。
「東条さん! 絶対に行かないでください! 東条さんは黒魔術師との戦いで疲れ果てているのに、これ以上力を使ったら本当に死んでしまいますよ!」
「気遣ってくれるのは有り難いが、重症の生徒が多すぎるし、それに治療を行える魔道士がこの戦いで大勢失ってしまった。だから俺たちは絶対に行く」
「ミアさん、東条さんに何か言ってください!」
エミリーはミアに助けを求めたが、ミアは可愛そうな表情をしながら首を振った。
「エミリー、東条が決めたことを撤回させるのは不可能よ。諦めて」
「でもミアさんなら!」
「無駄だよ。私は東条と何度も一緒に戦っているけど、東条は弱者を絶対に救うために自分を犠牲にしてでも妥協しない魔道士よ。私がやめてと言っても東条を止められない。東条には東条の信念があるから、エミリーは東条の考えを尊重して見守ってほしい」
「そうですか……」
エミリーは落胆した表情でエレナの顔を除いた。エレナは「無理です!」と即答してミアの後ろに隠れた。エミリーは諦めた表情で俺を見つめた。
「分かりました、東条さんを止めることは諦めます。ですが絶対に力を使いすぎないでください。ここで約束してください」
「ああ、分かっている。エミリーのためにもちゃんと守るよ」
「本当ですよ! 東条さんがいない世界にしないでくださいね!」
「心配しすぎだよ。俺は絶対に大丈夫だ。俺はエミリーのために必ず帰ってくるから、少しだけ待っていてくれ」
「分かりました。では少しの間だけでもゆっくり休んでください」
俺は深くお辞儀をしているエミリーから離れて個人部屋に向かった。すぐに体力を回復させてアメリアたちと合流しよう。
しかし俺たちは個人部屋の手前でミアに静止されて立ち止まった。
「東条、エレナの部屋はあるか?」
「そうだった! エミリーに聞くべきだった! 空いている部屋はないか探してみるよ」
「東条、慌てるな。休憩時間を犠牲にしてエレナの個人部屋を作る時間がもったいない。東条が1つだけ条件を飲んでくれればすぐに解決する」
「どんな条件だ?」
「エレナと一緒に東条の部屋で休んで貰えないか? 私は1人で寝たい」
「えっ!」
ミアの大胆すぎる提案に俺は言葉を失い、エレナは顔を赤らめた。
「東条、私はもう寝るから2人で解決してくれ。おやすみ」
「ミア、待ってくれ! そんな条件は飲めない! エレナはミアの部屋で寝るべきだ!」
「私と何度も一緒に戦ってきた東条なら私の性格をよく理解しているはずだ」
俺はミアの性格をよく知っている。ミアは黒魔術師を圧倒する屈強な魔道士という役割を周囲にアピールしているが、中身は黒魔術師に脅されて心が破壊された脆い少女だ。彼女はエレナに本当の姿を見られたくないために1人にしてほしいのだろう。
「しょうがない、エレナの寝所は俺が考えておくよ。ミア、おやすみ」
「おやすみ」
そして廊下に取り残された俺はエレナに小声で提案した。
「すまない、アメリアの部屋で寝てくれないか? 今は誰も使っていないから勝手に寝てもいいと思うよ」
エレナは俺の提案を即座に断り、大きく首を振った。
「駄目ですよ。勝手に他人の部屋を借りるのはいけないと思います」
「そうだよな、駄目だよな。俺たちはどうしようか?」
仲間の部屋を無断で使うのも悪いし、未使用の部屋を探すのも時間がもったいない。俺は天井を見つめながら考えていると、エレナが俺の右手を優しく握った。彼女は潤っている瞳で恥ずかしそうな表情をしていた。
「東条さんで一緒に寝ていいですか?」
「大丈夫なのか?」
「ええ、これしか方法がないですし、私は気にしませんよ」
「分かった、俺は離れて寝るから安心してくれ」
「いいえ、東条さんとくっついて寝たいです」
「えっ! 俺たちは出会ってから数時間しか経っていないぞ! 俺を信用していいのか?」
俺は困惑してエレナから目を逸らそうとしていたが、エレナは俺をじっと見つめていた。
「当たり前ですよ。魔法学校のために、そして私を守るために必死に戦ってくれた東条さんを心から信頼していますよ。だから早く一緒に寝ましょう。私たちには休憩時間がありません」
「ああ、……。分かった、……」
異世界に訪れる前までには絶対にあり得ない光景に出会って混乱している俺に対してエレナは俺の全身を包み込むように抱きついてきた。
「東条さん、私は1人が怖いです。一緒にいてください」
俺は彼女を個人部屋に通して、1つのベッドで一緒に寝始めた。エレナは俺の腕を掴みながら安心している表情で寝ていた。
30分後、俺とエレナはノックせずに入室してきたミアに体を擦られて起床した。
「東条、エレナ、早く行くぞ」
「分かっている、今すぐ行くよ。エレナはどうだ?」
「私も心身ともに大丈夫です。すぐに皆さんの元に向かいましょう」
俺たちは廊下を駆け抜けて玄関にたどり着くと、エミリーが俺たちの目の前で深くお辞儀をしていた。
「皆さん、アメリアさんたちと一緒に絶対に帰ってきてくださいね」
「エミリーは心配しすぎだ。俺たちは邪悪に負けないから安心して待っていてくれ」
「行ってくる。私たちを心配する暇があるならエレナの個人部屋をすぐに作ってくれ」
エミリーはミアに不思議そうな表情で尋ねた。
「エレナさんって誰ですか?」
「エミリーにとっては初対面だったな。私たちの新しい仲間の魔導学校の優等生。自己紹介してやれ」
エレナはミアに振られて簡単に自己紹介した。
「魔法学校で魔道士の勉強をしておりますエレナです。アメリアさんの論文を読んで光の魔法について興味が湧き、私もいつか悪夢に苦しめられている国民を救えるような魔道士になりたいです。まだまだ東条さんのように活躍できませんが、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。エレナさんの部屋は大至急用意しますね」
「ありがとうございます。それでは行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
大きく手を振って見送っているエミリーと別れ、俺たちは再び魔導学校に向かって歩きだした。
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