『向量操作』で世界を覆す

異世界召喚

目を開けたら俺たちは皆、知らない場所にいた。

周りには甲冑を着て手に槍を持った兵士のような人たちが俺たちを囲んでいて、その奥には玉座のようなものがあり、白髪で白い髭を生やして初老の、王様のような人が座っている。

そしてその横にはプラチナブロンドの髪を腰まで伸ばした見た目は俺たちと同い年ぐらいの美しい女の子が立っている。

「ねえ、蒼矢君。この状況って蒼矢君が貸してくれた小説にあったよね？」

「うん、異世界召喚だと思う」

「ていうことは勇者召喚なのかな？」

「多分ね。もしかしたら別の可能性もあるけど…」

「ようこそおいでくださいました勇者様方」

俺と葵が予想していると玉座の隣に立っていた女の子がこっちに歩いてきてそう言った。

その言葉に対し先生が対応する。

「失礼、あなたはいったい誰ですか？」

「わたくしはこの国、キャマロッツ王国の第一王女マリーヌ・キャマロッツです」

自分が王女だという女の子は頭を下げて次にこう言った。

「どうか我らをお助けください」

「ん？助けてとは一体どういうことですか？」

「そのことも含めお父様から説明があります」

女の子がそう言い後ろに下がると玉座に座っている男性が話し始める。

「余がキャマロッツ王国の国王、グスタフ・キャマロッツだ」

それから今回のことについての説明が始まった。

この世界は俺たちがいた地球とは違うフリーデンという世界だと言うこと。

俺たちはこの世界を脅かしている魔王を倒すために呼ばれたと言うこと。

そして……

俺たちは向こうの世界には帰れないと言うことだった。

「ふざけんな！」

「そうよ！向こうには家族だっているのよ！」

地球に帰れないと言う話を聞いてクラスメイト達はみんな荒れた。

「せめてもの詫びと言ってはなんだが勇者様方の生活は一生保障しよう」

「そんなんで納得できるか！」

「そうだそうだ！」

「……勇者様方には勝手なことをして大変申し訳ないとこをしたと思っている。だが、我らも必死なのだ…」

キャマロッツ王がそう言った途端クラスメイトが静かになった。

「今、同盟国である隣国が魔王に攻められており我らが援助をすることによってなんとか戦えているがそれもあとどれほど保つか……それほど魔王の軍勢は強大なのだ。最後の望みで勇者様方を召喚したがその結果100人ほどいたこの王国の魔術師は殆どが昏倒しており意識不明だ」

キャマロッツ王はそう言い玉座から立つと頭を下げてこう言った。

「どうか我らを……この世界を救ってはくれないだろうか」

キャマロッツ王の言葉にクラスメイトは困惑する。

そりゃそうだ。

ここで断ってこの国が滅んだら俺たちが滅ぼしたようなものだからな。

そんな中、正輝が行動を起こした。

「みんな俺は戦おうと思う。今の話を聞いてもまだ納得しない人がいるかもしれない。けど俺は目の前の困っている人を見捨てるような人にはなりたくないんだ」

正輝の言葉にクラスメイトは迷い始める。

あともうひと押しあれば全員賛同するだろう。

それにもう乗り掛かった船だしな、俺もいくか。

「正輝、俺も一緒に戦うよ」

「蒼矢…」

「俺たちは親友だろ？なら俺も一緒に戦うのが筋ってもんだ」

「……ありがとう、蒼矢」

「じゃあ蒼矢君が戦うなら私も戦う」

今度は葵が賛同した。

「それなら俺も戦うぞ！」

「私も！」

葵に続いて他のクラスメイト達全員も賛同の意を示した。

「すみません先生、俺たちで勝手に決めてしまって」

「まあ先生としては危険なことはさせたくないんだが、郷に入っては剛に従えというからな。それに自分たちで決めたんだろ？なら後悔しないようにしなさい」

「ありがとうございます、先生」

これで俺たちはみんな異世界の戦いに参加することになった。