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お約束
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キャマロッツ王国に戻ってきた翌日。
俺は自室で毎日の日課になりつつあるルミナの尻尾のブラッシングをしていた。
この尻尾のブラッシングは馬車で移動してた時も、1日たりとも欠かしたことはない。
暇さえあれば大抵の時間はやっている。
そのおかげでルミナの尻尾はモフモフの触り心地を維持できている。
ブラッシングが終わったあと、俺は私服を着て出かける準備をする。
「おとーさん、どこか出かけるの?」
「ちょっとな、買い物に行くんだ」
「ルミナも一緒に行っていい?」
「いいぞ……と言いたいところなんだけどルミナには一つお願いがあるんだ」
「お願い?」
「お母さんと待っててくれないか?お母さんにプレゼントを買おうと思っててな、知られたくないからこのことがバレないようにお母さんを部屋にとどめてもらいたいんだ」
「わかったの」
「いい子だ。じゃあお願いな」
「任せてなの」
俺はルミナに葵の足止めを任せて城下町へと向かった。
城下町へと着いた後、俺は司書の女性から聞いたある場所へと顕現したナビの指示のもと向かう。
それはアクセサリー屋だ。
貴族向けの高めの値段設定だが良い物を売っている。
今日俺がここに来た目的は結婚指輪を買うためだ。
こういうのはお約束だからな。
早速中に入ってみる。
中には地球のと同じようなショーケースが並んでおりその中にアクセサリーが展示されている。
俺は目当てのものを見つけるすため店内を探してみる。
ショーケースの中にあるアクセサリーは宝石が付いているものが多く、目当てのものが中々見つからない。
しばらく探しているとやっと目当てのものを見つけた。
俺が探してたのは銀色のストレートの指輪だ。
値段を確認してみると高かったが予算を超えていなかったので安心した。
昨日のうちにカイザードラゴンの魔石を王城で換金しておいてよかった。
おかげでまだ余裕がある。
これなら俺と葵の分を買える。
それに葵の指輪のサイズも昨日のブラッシングの時に見た葵の指からナビに測ってもらった。
ナビが見ただけでサイズを測れるのには驚いたが、おかげで助かっている。
「すみません、この指輪を2つください」
「かしこまりました」
欲しかった指輪を2つ買って店から出る。
指輪の入った箱をアイテムボックスにしまった後、俺はそのまま王城に帰ろうとするがあることを思った。
(俺、ルミナに何かプレゼントしたことあるっけ?)
服は買ってあげたが、あれは必需品だからプレゼントではなく必要な買い物だ。
それに今はお願いを聞いてもらっている。
(…なんかルミナに買って行こう……)
俺はそう思いそのまま城下町を散策した。
しばらく歩き回ってみたが何をプレゼントしようか全然思いつかない。
そんなふうに困っていたら急に後ろから声をかけられた。
「あの~~…」
「ん?」
振り向くとそこには14~15歳くらいの赤毛の少女がいた。
「なにかお困りのようですが、どうしたんですか?」
「あ~~、ちょっとね。プレゼントをどうしようか迷ってて」
「プレゼントですか!それならいい場所を知っていますよ!ついてきてください!」
「え?あっ!ちょっ!」
俺が何か言おうとする前に少女は俺の手を引っ張って走る。
手を引っ張られて走り続けると人が少ない通りに入っていき何かの店へと入った。
「お父さん!お客さん連れてきたよ!」
この店は雑貨屋だろうか、いろいろなものが売ってある。
さっきの少女の声に反応したのか店の奥から父親と思われる男性が出てきた。
「アリサ、お前はまたお客さんを無理矢理連れてきたのか」
「無理矢理じゃないよ、いいお店聞かれたから案内しただけどよ」
「はぁ、まったく……」
どうやらアリサという少女が人を無理矢理連れてくるのはいつものことのようだ。
「お客さんもすみません」
「いえいえ、俺も探し物をしていたんでちょうど良かったです」
「そう言ってもらえるとありがたいです。自己紹介が遅れましたね、僕の名前はカリオで娘の名前はアリサです」
「はじめまして、蒼矢です」
「何を探していたんですか?」
「子供へのちょっとしたプレゼントを」
「ほお、お子さんにですか」
「え!?お子さんがいるんですか!?」
俺がそう言うとアリサは驚いた。
「てっきり家族とか恋人さんへのプレゼントだと思ってました。ていうか蒼矢さんって何歳ですか?」
「16だよ」
「え!?私とそんな変わらないじゃないですか!?それなのにもう子供がいるんですね」
「養子なんで」
「男の子ですか?女の子ですか?」
「女の子です」
「じゃあプレゼントとしてはこの辺りですかね」
アリサはそう言って店の商品を探しに行った。
「元気な娘さんですね」
「ええ。妻がいない今、僕に残されたのは娘とこの店だけです」
「そうですか」
「ですがこの店も後どれぐらいやっていけるか……」
「どういうことですか?」
「この店、前はお客さんが来てたんですけど今は1人も来ないんです」
「なぜですか?」
「借金をしてるんです。本物かどうかは怪しいですが……」
「それは一体……」
「アリサが貴族に目をつけられたんです。あの子は綺麗だからアリサを見つけた貴族が妾になれと言ってきてアリサがそれを拒んだんです。その日から客が来なくなりさらにいわれのない借金までしていて店の経営が困難になりました」
「アリサは知っているんですか?」
「教えていませんがあの子も薄々気づいていると思います」
「そうですか」
『マスター、複数の足音がこの場所に近づいてきています』
(本当か?)
『はい、間違い無いかと』
どうやら招かれざる客が来たようだ。
……なんかこういうのもお約束だな。
俺は自室で毎日の日課になりつつあるルミナの尻尾のブラッシングをしていた。
この尻尾のブラッシングは馬車で移動してた時も、1日たりとも欠かしたことはない。
暇さえあれば大抵の時間はやっている。
そのおかげでルミナの尻尾はモフモフの触り心地を維持できている。
ブラッシングが終わったあと、俺は私服を着て出かける準備をする。
「おとーさん、どこか出かけるの?」
「ちょっとな、買い物に行くんだ」
「ルミナも一緒に行っていい?」
「いいぞ……と言いたいところなんだけどルミナには一つお願いがあるんだ」
「お願い?」
「お母さんと待っててくれないか?お母さんにプレゼントを買おうと思っててな、知られたくないからこのことがバレないようにお母さんを部屋にとどめてもらいたいんだ」
「わかったの」
「いい子だ。じゃあお願いな」
「任せてなの」
俺はルミナに葵の足止めを任せて城下町へと向かった。
城下町へと着いた後、俺は司書の女性から聞いたある場所へと顕現したナビの指示のもと向かう。
それはアクセサリー屋だ。
貴族向けの高めの値段設定だが良い物を売っている。
今日俺がここに来た目的は結婚指輪を買うためだ。
こういうのはお約束だからな。
早速中に入ってみる。
中には地球のと同じようなショーケースが並んでおりその中にアクセサリーが展示されている。
俺は目当てのものを見つけるすため店内を探してみる。
ショーケースの中にあるアクセサリーは宝石が付いているものが多く、目当てのものが中々見つからない。
しばらく探しているとやっと目当てのものを見つけた。
俺が探してたのは銀色のストレートの指輪だ。
値段を確認してみると高かったが予算を超えていなかったので安心した。
昨日のうちにカイザードラゴンの魔石を王城で換金しておいてよかった。
おかげでまだ余裕がある。
これなら俺と葵の分を買える。
それに葵の指輪のサイズも昨日のブラッシングの時に見た葵の指からナビに測ってもらった。
ナビが見ただけでサイズを測れるのには驚いたが、おかげで助かっている。
「すみません、この指輪を2つください」
「かしこまりました」
欲しかった指輪を2つ買って店から出る。
指輪の入った箱をアイテムボックスにしまった後、俺はそのまま王城に帰ろうとするがあることを思った。
(俺、ルミナに何かプレゼントしたことあるっけ?)
服は買ってあげたが、あれは必需品だからプレゼントではなく必要な買い物だ。
それに今はお願いを聞いてもらっている。
(…なんかルミナに買って行こう……)
俺はそう思いそのまま城下町を散策した。
しばらく歩き回ってみたが何をプレゼントしようか全然思いつかない。
そんなふうに困っていたら急に後ろから声をかけられた。
「あの~~…」
「ん?」
振り向くとそこには14~15歳くらいの赤毛の少女がいた。
「なにかお困りのようですが、どうしたんですか?」
「あ~~、ちょっとね。プレゼントをどうしようか迷ってて」
「プレゼントですか!それならいい場所を知っていますよ!ついてきてください!」
「え?あっ!ちょっ!」
俺が何か言おうとする前に少女は俺の手を引っ張って走る。
手を引っ張られて走り続けると人が少ない通りに入っていき何かの店へと入った。
「お父さん!お客さん連れてきたよ!」
この店は雑貨屋だろうか、いろいろなものが売ってある。
さっきの少女の声に反応したのか店の奥から父親と思われる男性が出てきた。
「アリサ、お前はまたお客さんを無理矢理連れてきたのか」
「無理矢理じゃないよ、いいお店聞かれたから案内しただけどよ」
「はぁ、まったく……」
どうやらアリサという少女が人を無理矢理連れてくるのはいつものことのようだ。
「お客さんもすみません」
「いえいえ、俺も探し物をしていたんでちょうど良かったです」
「そう言ってもらえるとありがたいです。自己紹介が遅れましたね、僕の名前はカリオで娘の名前はアリサです」
「はじめまして、蒼矢です」
「何を探していたんですか?」
「子供へのちょっとしたプレゼントを」
「ほお、お子さんにですか」
「え!?お子さんがいるんですか!?」
俺がそう言うとアリサは驚いた。
「てっきり家族とか恋人さんへのプレゼントだと思ってました。ていうか蒼矢さんって何歳ですか?」
「16だよ」
「え!?私とそんな変わらないじゃないですか!?それなのにもう子供がいるんですね」
「養子なんで」
「男の子ですか?女の子ですか?」
「女の子です」
「じゃあプレゼントとしてはこの辺りですかね」
アリサはそう言って店の商品を探しに行った。
「元気な娘さんですね」
「ええ。妻がいない今、僕に残されたのは娘とこの店だけです」
「そうですか」
「ですがこの店も後どれぐらいやっていけるか……」
「どういうことですか?」
「この店、前はお客さんが来てたんですけど今は1人も来ないんです」
「なぜですか?」
「借金をしてるんです。本物かどうかは怪しいですが……」
「それは一体……」
「アリサが貴族に目をつけられたんです。あの子は綺麗だからアリサを見つけた貴族が妾になれと言ってきてアリサがそれを拒んだんです。その日から客が来なくなりさらにいわれのない借金までしていて店の経営が困難になりました」
「アリサは知っているんですか?」
「教えていませんがあの子も薄々気づいていると思います」
「そうですか」
『マスター、複数の足音がこの場所に近づいてきています』
(本当か?)
『はい、間違い無いかと』
どうやら招かれざる客が来たようだ。
……なんかこういうのもお約束だな。
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