悪人が登場しない?!完全無欠なやさしい世界 〜『電気』魔術を極めたら理想郷はぶっ壊れた〜

UMA

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10話

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昨晩飲んだジュースはとても美味しかった。 
そして、乾いた身体に水分と栄養を十分に行き渡らせてくれた。 
だが、瓶を空にするまで飲んだ分、全てが身体に吸収される筈もなく、その余りは下腹部を破裂寸前まで膨張させていた。 

不慣れで動かしにくい身体に戸惑いながらも、ベッドから降り、ノブの無いドアをゆっくり手で押して開ける。 
部屋を出ると、長細い廊下になっている。 
照明もないのに、白い天井と壁から淡い光が発せされ、廊下全体を均一に照らしている。 
廊下突き当りを右に曲がったところにトイレがある、という記憶を頼りに漏らさないように慎重な小股で急ぐ。 
ドアを押して中に入ったところで絶望した。 

便器や穴のようなものすら無く、小部屋の真ん中にただ丸い球が幾つかあるだけ。 

部屋を間違えた! 

急いで部屋を出ようとする。 
だが、その瞬間、軽い眩暈と共に『ズキッ』と後頭部に痛みが生じた。 

そして理解した。 

一つの丸い球を手に取り、両手で持ち直し、下腹部に軽く当てて力を込める。 
すると、振り切りそうだった尿意の針は徐々に下がり始める。 
更に膀胱だけではなく、お腹全体の張りも無くなっていく。 
この球は膀胱と大腸の不要物を、この部屋下にある空間に転移させる。 

尚、それらは長い時間を掛けて肥料化され、後に良質な土壌として利用されるらしい。 
この仕組みは手を洗う必要はないし、そもそも尿道や肛門すら使うこともない。 
不安になってズボンを下ろすが、性器と肛門は退化することなくちゃんと身体に備わっていて、安心した。 

ホッと一息ついて廊下に出る。 
さっきは気付かなかったが、甘く香ばしい香りが廊下に漂っていた。 
強烈な尿意が去った今、刺激された食欲が湧き上がってくる。 
記憶の中にあるリビングへと向かい、大きなドアを開ける。 

ふわっと心地よい風に乗った新鮮な空気が通り抜けた。 
リビングの壁には、部屋をくり抜いたような巨大な窓が二つ、対照的に備わっている。 
たまに吹く優しい風が、部屋の空気を丸ごと入れ替えるような間取りになっている。 
左奥にはキッチンスペース、中央には存在感のある大きな丸いテーブル。 
そのテーブルの上には黄色と茶色を混ぜたマフィンが白い皿に積まれており、上品そうな紅茶セットが添えてある。 

 一人の少女が優雅に食している最中だった。 
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