悪人が登場しない?!完全無欠なやさしい世界 〜『電気』魔術を極めたら理想郷はぶっ壊れた〜

UMA

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11話

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姉という存在に異性として憧れた時期があった。 

実際に居たのは妹であり、到底、そんな対象とは見れないし、考えただけで気色悪い。 
姉が居なかったが故の憧れだ。 
妹は後から出来る可能性があるが、自分が生まれた時に居なかった姉は、絶対に今後も現れない。 
そんな絶対に手に入ることが無い故に生まれた、誰もが持つ無いものねだりなのだろう。 
だが、その絶対不可が崩れて、憧れの対象が突然出現したらどうだろう。 

正解は、『どうしていいか分からない』・・・戸惑う以外に何も無い。 

その少女が姉であることは直ぐ判別出来た。 
曖昧な記憶をもう一度整理する。 
名前はネメシス、17歳、医療系の魔術を扱う。 
家族想いで優しく、喧嘩をした覚えがないくらい姉弟仲が良い。 
見た目は美人というよりは可愛い系の童顔。 
その童顔に似合わず身長は170センチ位あり、モデルのようなスタイルでありながらも、女性らしさは十分過ぎるほど立派に備わっている。 
異性に好かれ、同性からも憧れられそうだ。 
部屋着と思われるゆったりとしたワンピースを着ているから、まだ出勤前だろうか。 
透けて見えそうなほど薄い生地はまだ精神的にキツい。 

「おはよう。良かった。流石にそろそろ起きる頃だろうと思って、様子見に行こうとしてたの。身体のどこにも異常はないのに熱が下がらないから、お母さんと心配してたのよ。今朝は熱も下がったようだったから安心してたけど」 
「心配かけたみたいでごめん。うん。もう大丈夫。将来のことで悩んでたから、疲れて熱でも出たのかな」 
姉弟の自然な会話が出来ているのか・・・また熱が上がりそうだ。 
 
「悩みで熱・・・ねぇ。そんなこともあるのかな。大丈夫なら良いけど。あとでお母さんとお父さんには伝えとくね。お父さん、昨日の朝に声を掛けたのになかなか来ないから、呼びに行ったのよ。そうしたら、凄い熱でうなされているあなたを見て、大慌てで私達を呼びにきたんだから」 

そういえば、朝ご飯の話をされたこと、頭を撫でられたこと、空を飛んでいたことを夢の中の出来事のように今になって思い出した。 

「一昨日の夜から何も食べてないし、お腹すいたでしょ。何食べたい?」 
白ごはん、具だくさん味噌汁、だし巻き玉子、ウィンナーと言いたいところだが、いきなり実家感覚にはなれない。 

そもそもこの世界にどんな料理、食材があるかも分からない。 
怪しまれない最低限のコミュニケーションで済むように、机の上にあるマフィンを指差した。 

「うん、じゃあ、スープも必要ね。すぐ作るから待ってて」 

姉は片手でマフィンを齧りながら、冷蔵庫らしい大きな棚から、何やら色々取り出して料理を始めた。 
その様子を眺めながら、とりあえず椅子に座る。 
食材は既にカットされているのか、そのまま鍋に入れ、手のひらサイズの小さいコップから水が注がれていく。 
どう見てもコップの見た目容量と出てくる水量が合っていないが、今は気にしないことにした。 

どうせ何らかの魔術だろう。 

彼女はそれを火にかけることなく、そのままテーブルの真ん中に置いた。 
まさかこのまま飲むのではと心配になったが、鍋がテーブルに置かれると瞬時に鍋から湯気が湧き立つ。 
鍋の中にはポコポコと小さな泡も見える。 
焦点を鍋の外側に移すと、テーブルと接している箇所が僅かに赤く光っている。 
姉は慣れた手つきで鍋をかき混ぜながら、調味料と思われる粉を順に投入する。 
徐々に濃厚なコンソメのような匂いが香り立ってきた。 

匂いが食欲を刺激し、空腹を抑えられなくなったので、目の前のマフィンに手を伸ばす。 
モッチリとした食感。 
バターの甘みで始まり、フルーツの酸味と香りが追いかけてくる。 
口の中パンパンに詰め込んでしまいたい、と思うほど美味い。 
一つ目をあっという間に平らげ、次に手を伸ばそうとしたころでスープが手元に置かれた。 
数多くの野菜とキノコが入っていることは分かる。 
具材は何か分からないが、美味しいことは疑いの余地がない。 

料理工程を目の前で見ていたので、余計に食欲がそそられる。 
片手に追加のマフィンを確保し、スープと交互に口へ運ぶ。 
それは、自分の中で揺るぎなかった和の朝食が一番という考えが、覆された瞬間だった。 
スープは具材の甘みが染み出していて、マフィンとは全く別の甘さを感じさせる。 
疲弊した脳と身体が、求めていた栄養はコレだと主張する。 
幸せホルモンが脳と腸で大量分泌されているのが分かる。 
食事だけではなく、優しく入り込んでくる新鮮な空気も一緒に味わえる贅沢。 
 
どんな高級リゾートホテルでも提供出来そうにない、濃密な空間と時間をこれから毎日堪能出来る。 

この幸せに慣れてしまわぬよう、しっかり日々を大事に噛み締めよう。 
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