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14話
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半端な年齢と記憶で見知らぬ世界に途中参加。
自分のことながら、精神崩壊してもおかしくない状況だろう。
だが、気持ちは穏やかだ。
それはこの世界だから。
温暖な気候、自然に溢れた景色、新しい体験をくれる魔術、完成された社会。
この世界を形作る全てが心を惹きつける。
以前の世界は、一度の失敗でレールを外れてしまうと、懸命に這い上がらないとなかなか普通の幸せすら難しい。
だからこそ、以前の自分は、無難に平均より少し上の生活を目指していたと思う。
安定したレールの上を、そこそこ上手に安定して走ってきた。
だが、それも些細な失敗により、容易に平均以下に落ちてしまうことを学んだ。
以前のように周囲に目を配り、中央値と自分の位置を定めて、どこか怯える生き方を繰り返したくはない。
姉のネメシスが言う通り、先ずは自分に正直になって、何がやりたいか考えてみよう。
この世界はどんなに失敗しても幸せに生きていける、そう思えた。
『この人生で何をやり遂げたい?』
心に問いかけながら悶々と歩いていると、少し先に小さな橋が見えてきた。
一人分の幅しかない小さな橋。
奇妙なことに、橋の下には川や湖はなく、その袂は両側とも地面となっている。
まるで、交差点に掛かる歩道橋を小さくしたようだ。
何か思い出せそうだ。
「うっ!」
痛みの覚悟を決めて手すりに右手を置いた途端、うめき声が漏れた。
毎回、殴られたような痛みなので嫌になる。
だが、いずれ思い出さないといけないことだ。
知らないことが多すぎると生活に不便が生じるし、周りからも不審がられてしまう。
橋の頂上へ向かって歩き出す。
頂上といっても2m程度の高さしか無いから直ぐに着いた。
そして、景色は一変した。
眼の前には、絶対にさっきまでは無かった街がある。
この橋は空間跳躍の魔術が使用されている。
以前の世界では実現出来なかった夢のテレポート機能だ。
ちょうど街に行きたい用事があったので、たまたま実に都合が良かった。
街は二/三階の建物による集合体で構成されており、自宅のような独特な形ではなく、以前の世界と同じような長四角の外観をしている。
建物と道は全て白で統一されていて、太陽の光を反射している為か、外から見ると街自体が発光しているように見える。
正門らしき大きな入口はなく、メインの大通りも見当たらない。
脇道のような狭さの道からこそっと街へ侵入する。
建物間の距離が近く、目印になるような高い建物も無いので、自分がどこを歩いているのか見失いそうになる。
まして、目的の場所がどこにあるかをそもそも知らない、というか思い出せない。
ウロウロしていれば、その内に頭痛がして思い出すかと気軽に考えていたが、それも一向に訪れてくれない。
暫く歩いて、今日は諦めて来た道を戻って家に帰ろうかと思い始めたその時だった。
香ばしく懐かしい匂いが漂ってきた。
自分のことながら、精神崩壊してもおかしくない状況だろう。
だが、気持ちは穏やかだ。
それはこの世界だから。
温暖な気候、自然に溢れた景色、新しい体験をくれる魔術、完成された社会。
この世界を形作る全てが心を惹きつける。
以前の世界は、一度の失敗でレールを外れてしまうと、懸命に這い上がらないとなかなか普通の幸せすら難しい。
だからこそ、以前の自分は、無難に平均より少し上の生活を目指していたと思う。
安定したレールの上を、そこそこ上手に安定して走ってきた。
だが、それも些細な失敗により、容易に平均以下に落ちてしまうことを学んだ。
以前のように周囲に目を配り、中央値と自分の位置を定めて、どこか怯える生き方を繰り返したくはない。
姉のネメシスが言う通り、先ずは自分に正直になって、何がやりたいか考えてみよう。
この世界はどんなに失敗しても幸せに生きていける、そう思えた。
『この人生で何をやり遂げたい?』
心に問いかけながら悶々と歩いていると、少し先に小さな橋が見えてきた。
一人分の幅しかない小さな橋。
奇妙なことに、橋の下には川や湖はなく、その袂は両側とも地面となっている。
まるで、交差点に掛かる歩道橋を小さくしたようだ。
何か思い出せそうだ。
「うっ!」
痛みの覚悟を決めて手すりに右手を置いた途端、うめき声が漏れた。
毎回、殴られたような痛みなので嫌になる。
だが、いずれ思い出さないといけないことだ。
知らないことが多すぎると生活に不便が生じるし、周りからも不審がられてしまう。
橋の頂上へ向かって歩き出す。
頂上といっても2m程度の高さしか無いから直ぐに着いた。
そして、景色は一変した。
眼の前には、絶対にさっきまでは無かった街がある。
この橋は空間跳躍の魔術が使用されている。
以前の世界では実現出来なかった夢のテレポート機能だ。
ちょうど街に行きたい用事があったので、たまたま実に都合が良かった。
街は二/三階の建物による集合体で構成されており、自宅のような独特な形ではなく、以前の世界と同じような長四角の外観をしている。
建物と道は全て白で統一されていて、太陽の光を反射している為か、外から見ると街自体が発光しているように見える。
正門らしき大きな入口はなく、メインの大通りも見当たらない。
脇道のような狭さの道からこそっと街へ侵入する。
建物間の距離が近く、目印になるような高い建物も無いので、自分がどこを歩いているのか見失いそうになる。
まして、目的の場所がどこにあるかをそもそも知らない、というか思い出せない。
ウロウロしていれば、その内に頭痛がして思い出すかと気軽に考えていたが、それも一向に訪れてくれない。
暫く歩いて、今日は諦めて来た道を戻って家に帰ろうかと思い始めたその時だった。
香ばしく懐かしい匂いが漂ってきた。
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