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155 二人を着替えさせる

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 トントントン


「入っていいのじゃ!」


 ガチャッ


 メルティー様の部屋に入ると、すでに二人共起きていて椅子に座っていた。


「おはようございます」

「おはようなのじゃ!」
「お早う御座います。お布団の寝心地は素晴らしいものでした!」
「それは良かった。それでですね、御二人の服を用意しましたので、早速着替えて頂こうと思います」

 それを聞いた二人が対照的な表情を見せる。

「わかったのじゃ!」
「えーと、私もですか?」
「御二人ともです。ただ用意した服がですね、見栄えは素晴らしいのですが着るのが少し大変な服なので、最初はお手伝いします」
「着るのが大変な服、ですか?」


 マジックバッグから、十二単と晴れ着を取り出した。


「おおおおおおお!!なんて美しい服なのじゃ!!!」
「本当に見事な服ですね!この様な服は初めて見ました!」
「とても珍しい服でしょう?なので、これをただ渡しても着方がわからないと思うので、お手伝いを申し出たわけです」
「確かに全くわかりません」
「えーと、メルティー様の服の方が間違い無く時間がかかるので、先にマリアナの着替えから始めましょう」
「私からですか!?わ、わかりました」

 男性の前で服を脱ぐのを躊躇っているマリアナ。
 安心しなさい。お嬢様の召使いを極めた俺には、見慣れた風景みたいな物だ。

「メルティー様に仕えるならば、下着から全て完璧でなければなりません」
「・・・え?えええええええ!?ちょ、ちょっとお待ちを!」

 折角だし下着も全て着せ替えたいので、混乱に乗じて丸裸にした。
 そして、いつものようにブラジャーから着けて行く。

「尾張で身分の高い女性達は皆、このブラジャーを身に着けています。この下着は胸を隠すと同時に、胸の形を美しく保つ効果があります」
「わ、わかりました!けれど殿方に着替えさせられるなんて!」
「安心して下さい。こう見えて私は、もうすでに何人もの女性の着替えを担当してきたプロです。少し触りますよ」

 素早く、通常の3倍の速度で寄せて上げる。

「駄目っ!!」
「終わりました。胸を寄せて上げると、普段よりも大きく見せることが出来るのです。メルティー様、どうです?大きく見えませんか?」
「いつもより大きいのじゃ!!」
「は、恥ずかしいです!!」

 いきなり裸にされたショックで、それどころじゃないみたいだな。

「では下も履かせますので、片足を上げて下さい」
「これは自分で出来ます!」
「もうついでのことなのです!はい、足を上げて!」
「ひ~~~ん!」


 抵抗されながらも何とか下着を履かせた。しかし尾張の女性と違ってスムーズにいかんなあ・・・。でもどちらかと言えば、尾張の女性達がおかしいような気もする。


「では服を着ましょう。これは晴れ着という着物で、特殊な服ですので着方を憶えて下さいね。もし覚えられなければまた手伝いに来ます」
「覚えます!」


 慣れない着物に少し梃子摺ったけど、なんとか着せることが出来た。
 しかし無茶苦茶似合ってるな!


「どうです?美しい着物でしょう。とても良く似合ってますよ!」
「マリアナ!ものすごく綺麗なのじゃ!!」
「あ、有難う御座います!・・・でも本当に美しい服ですね」

 机に鏡を置いて、自分の姿を確認させる。

「これは姿見じゃありませんか!」
「おおおおーーー!ここにも姿見があるなんて、すごいのじゃ!」
「この姿見は差し上げますので、服装の乱れなどの確認に使って下さい」
「有難う御座います!はぁ~、本当に綺麗な服・・・・・・」

 将軍家の侍女がこれほど惚れ込むとは、流石は日本伝統の衣装だな。


「さあ、次はメルティー様の番ですよ」
わらわの番なのじゃ~~~!!」
「お手伝いします!」

 とりあえず着ている服を脱がせて裸にしたけど、さすがにブラジャーは必要無いよな・・・。パンティーだけ履かせよう。

「ん?わらわにはあの、ぶらじゃあとかいう物は着けないのか?」
「ブラジャーという下着は、マリアナのような大人が着用する物なのです。メルティー様が成長して大人になったら着けましょう」
「ええええ~~~!わらわも着けてみたいのじゃ!」
「胸が窮屈なだけだと思いますが、じゃあ着けてみますか・・・?」

 将軍様がご所望ならば仕方がない。ブラジャーを着けてあげた。

「んーーー、よくわからないけど可愛いから気に入ったのじゃ!」
「良くお似合いですよ!メルティー様」

「そ、そうですか・・・。では服を着ましょうか」


 さて、過去最大の超大物の服だ。今は最終形態で綺麗に畳まれているが、バラしてしまうと取り返しがつかないので完璧に記憶する。

 ・・・よし、覚えた!


 それから30分ほど時間をかけ、何とか十二単を着せることに成功。


「完成です!!」
「おおお!これで終わったのじゃな!?」
「メルティー様!とても美しゅう御座います!!」

 本当に見事な着物だ・・・。これぞまさに将軍家のお姫様って感じ。
 本人にも鏡で確認してもらう。しかし重そうだな・・・。


「なんて綺麗な服なのじゃ!京でもこの様な美しい服は、着たことがないのじゃ!」
「私もこの様な見事な服が存在するなど、思いもしませんでした!」
「この服は『十二単じゅうにひとえ』という名の着物です。種類としては、マリアナが来ている着物と一緒ですね。ただ、ちょっと重くないですか?」
「重いのじゃ」
「デスヨネー!他に何か軽い服も用意しますので、今日は我慢して着ていて下さい」
「綺麗だから我慢するのじゃ!」
「マリアナは大丈夫ですか?」
「私は全く問題ありません。素晴らしい服を有難う御座います!」


 いやー、マジで大変だった。
 着替えさせるだけで、まさかこんなに時間がかかるとは思わなかった・・・。
 
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