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182 聖帝の使者

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 こういう展開も予測していたので、俺の返事は予め決まっている。


「そんな奴は知らん!」


 周りにいるチェリンやエルフ達を見ると、皆緊張で顔が強張っていた。


「嘘をつくな!!そっちがその気なら無理にでも探させてもらうぞ!」

「お前らみたいな不穏分子を尾張に入れるわけねーだろ。引き返しな」

「なんだと!?貴様、聖帝軍に逆らう気か!」


 うぜえな。こんな奴等を尾張に入れたら、確実に揉め事を起こすだろうが!
 メルティー様を探してるらしいから、見つかるまで帰る気も無さそうだし。


「で、そのメルティーってのを捕まえてどうする気なんだよ?聖帝様は」

「お前の知った事ではない!もしメルティーを庇っているのなら、我らは尾張を攻め滅ぼすぞ!」

「なんだと?」


 使者は10人か。


「聖帝軍は強大だ!このような小さな国など簡単に踏みつぶせるのだよ」

「へ~、やってみろよ?尾張なめてると、お前ら全員死ぬぞ?」

「調子に乗るな下郎!」


 使者と名乗る男が剣を抜いた。


「抜いたな?ならば俺とお前らは現時点をもって敵対したわけだ。短気な使者を送って来るとは、聖帝とやらも高が知れてるな」


 シュッ

 抜刀術で目の前の傲慢な男を斬った。


「ぐおあああああああああっっっ!!」


 そして間髪を入れず残りの9人に襲い掛かる。


「き、貴様!!ガッ、ガハッ!」
「おい!ま、待て!ごアアアあッッッ」
「ヒ、ヒイイィィィィィ!!」


 1人も逃がさねえよ?お前らは全員此処で行方不明になるんだ。

 すかさずルルが支援魔法を発動し、全員が戦いに参加する。
 そして逃げようとした男の背後にエルフ達が壁を作り、完全に逃げ道を無くした。

 ハハッ!流石は尾張の精鋭達だ。いきなりの戦闘でこの連携、実に頼もしい!

 チェリンが1人を叩き斬り、ボヤッキーも1人の首を跳ねた。あと4人。


「く、来るなアアアアア!!」

「喧嘩売って来たのはお前らじゃねえか。尾張に恫喝など通用しない」


 更に2人を斬り、残り2人はエルフ達の魔法で絶命した。



 ・・・・・



 壁を作る予定の場所から少し移動し、そこに死体を全て燃やして埋めた。


「さて、これで俺らが殺った証拠は消え去ったが、いつかは聖帝軍にバレるだろな」
「使者が帰って来ないことに気付くのが、いつになるかよね」
「聖帝軍と戦争になるですか?」
「今すぐどうこうはならんだろうけど、遠くないうちに戦争が始まるかもな。高圧的な態度だったんで容赦無くぶった斬ったけど、ああいう奴は下手に出ればどこまでも調子に乗るだけだ。使者を斬ったことに関しては微塵も後悔などしていない」
「まあね~。でも、やっと平和になったのに今度は聖帝軍かあ~~~」


 隣国が相手かと思ったら、いきなり聖帝軍ってなあ・・・。
 おっと、このチャンスを逃してはならん!


「私もよくよく運のない男だな。壁を作りに来ただけなのに、あんな獲物に出会うなどとは」


 とりあえずノルマ達成だ!
 何の話かって?そりゃあ、もちろん名セリフよ!


「小烏丸がいる時で良かったわよ。私一人の時に来られてたら一体どうなってたか・・・。使者って名乗られたら斬って良いのかすら判断出来ないわ」
「確かにそうかもな。自分の判断に後悔はしてないけど、ルーサイアに帰ったらミスフィートさんに叱られるかもしれんし。何にしても、これで壁の重要度が跳ね上がったな。戦闘直後ですまないが、早速壁の建造に入ってもらえるか?」
「いつか聖帝軍が攻めて来るとなると、手は抜けないのですよ!」
「現状の守りじゃ不安すぎますからね。強固な壁を作って見せますよ」
「頼もしいな!後から改造するのも二度手間だろうから、道路の先の門から始めてくれ。俺とボヤッキーはまた前回のように動くんで、休憩小屋だけ作って欲しい。食事もそこで作るから、腹が減ったら適当に集まってくれ」
「りょうかーい!」


 ということで、まず即席の仮設住宅を建ててもらった。
 中に入ってストーブや照明を設置する。


「チェリンは、少し壁作りを見たら館に戻るんよな?」
「うん。しばらく見てると思うけど、帰る時に挨拶に寄るわね」
「そうか、じゃあ帰りはバイクで送ってやるよ。館までそれなりに距離があるだろ」
「それは助かるわ!ありがとう。じゃあ壁作りを見て来ま~す」
「あいお~」


 さーて、服の強化を頑張りますか。たぶん壁作りに1週間近くかかるだろうから、持ってる服全ての強化が終わりそうだな。





 ************************************************************





 それから1週間ほどで、ほぼ予定通りに国境の壁が完成。

 美濃方面に伸ばした壁と繋がった場所の内側には砦を建設し、中で1000人ほどが生活出来るようにした。今は時間が無いので中身はつるっぱげだけどね。
 その砦は重要なポイントになるので、街から離れてて可哀相だけど常時兵士を100人くらい詰めとくつもり。

 チェリンも完成した壁を見て、抱えてた不安が一掃されたようだ。


「本当に素晴らしい守りだわ!これなら敵の進軍を食い止めることが出来る!」

「トラネコ城からの援軍と共に防壁で耐えていてくれれば、その間にルーサイアからの本隊が到着し、まったく尾張を荒らされることなく戦えるハズだ」
「聖帝軍が相手になった場合は、三河の援軍とか期待出来るのかしら?」
「そうだな・・・、美濃や伊勢程度との衝突なら尾張だけで何とかしたいけど、相手が聖帝軍ともなれば三河に援軍要請することになるかもな~。まあ尾張と三河が合わされば、聖帝軍がどんだけ大軍でも負ける気がしない」
「本当に頼もしいわ!」

 援軍に頼るのは、自分達で対処出来ない場合の時だけだ。
 聖帝軍が相手だろうが、尾張だけで倒せそうならば援軍は呼ばない。

「ただアレだぞ?俺たちが三河を頼りたいように、三河が尾張を頼って来る場合もあるってことだ。しかもあの清光さんが尾張を頼るってことは、その時の敵は間違いなく強大だ!」
「ひゃあ~~~~!同盟を組むってことは、同盟国の敵国も自分らの敵になるってことなのね。でも三河との同盟はそれを踏まえても価値があるわ」
「武力だけじゃなく、三河は経済的にも非常に優れているからな~。尾張が育てば、交易でもお互いに成長して行けるぞ!もっともっと頑張らねえとな!」


 今はまだ三河におんぶに抱っこ状態だから、帰ったらとっととガラス工場を作って、三河にも沢山貢献せにゃいかんな。
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