黒狼陛下は人質皇子に抱かれたい

こじまき

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10 あなたって最高【マクシス目線】

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僕が王城で暮らし始めて数日後、目を覚ますと、城の空気が慌ただしかった。

「アリ殿、何かあったのですか?」
「ウィリアス様が熱を出したんだよ。いつもなら熱があっても元気なんだが、今回は様子が違うらしくてな」
「殿下が…」

僕はカエルンブリアから持ってきた、恥ずかしいほど小さな自分の荷を探って、小さな袋と瓶を取り出す。

「役に立てるかもしれません。王子殿下の部屋に案内してもらえませんか?」

案内された先では、ウィリアス王子殿下が荒い息をしてベッドに横たわっていた。頬は真っ赤で、額には汗がにじんでいる。

「喉…痛いよ…ママ…」

ベッドサイドには王妃様と、鼻から下を布で覆った祈祷師がいる。祈祷師は薬草を焚き、シカの角に果物を指し、低い声と高い声を行ったり来たりしながら何か唱えていた。

「うちで一番優秀な祈祷師、ボシュカだ。美人だが気がクソ強いから、怒らせないように気をつけろ」とアリ殿が耳打ちしてくれる。

「アリシア草…」

祈祷師殿は僕のつぶやきに気づき、灰色の目でちらりと彼を睨む。そして壺の中から何かを取り出し、王子殿下の真っ赤な頬に塗った。

(祈祷が終わったら、少しだけ診せてもらおう)

祈祷師殿が渾身の力を込めて短く太く唸り、祈祷が終わった。

「き…祈祷師殿」
「何」
「僕…にも診させていただいてもよろしいでしょうか」
「祈祷なんて無意味だとか、医者が必要だとか、ケチつける気?カエルンブリアの奴らってそうなんだよね」
「いいえ!喉が痛いならアリシア草は理にかなっています。それに祈祷には精神的な効果もあるでしょう。病気のとき、自分の回復を願ってくれる存在は、何よりありがたいものですから。祈祷師殿の治療を否定する意図はございません」

祈祷師殿は大きな灰色の目をさらに大きく見開いた。

「医学や薬学の知識はあんの?」
「ほんの少し」
「変な動きをしたら、その場で腕を折るわよ」

祈祷師殿はそう言って、ベッドサイトを空けてくれた。ウィリアスの顔は真っ赤で、身体は熱く、口を開かせてみると舌も赤く腫れて発疹がある。これは、僕もかかったことがある。

「祈祷師殿、これを飲ませると症状が緩和するはずです」
「何これ?」
「ルエラ草からつくった薬です。自作ですが、効果は自分で確かめています」
「安全なの?毒じゃないでしょうね?」

僕は薬をひとさじ自分の口に入れた。祈祷師殿と王妃様は顔を見合わせて頷いた。薬を飲ませて三十分後には皇子殿下の熱は下がり、彼は穏やかに寝息を立て始め、祈祷師殿は僕に握手を求める。

「疑ってごめんね、本当にありがとう」
「いえ、大したことはしていません」
「そんなことない!すごいわ!」

祈祷師殿は鼻から下を覆っていた布を外した。アリ殿の言った通り、意志の強そうな美人だ。

「ね、この薬の作り方を教えてくれない?きっとみんなの役に立つわ」
「はい」

祈祷師殿はパッと僕に抱きつく。薄い布で作った服で覆われた胸が、ぎゅっと僕の身体に当たる。

「あなたって最高ね!」
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