黒狼陛下は人質皇子に抱かれたい

こじまき

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30 代帝と廃帝【ルキウス目線】

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「マクシスがケニ族と和平を結んで、代帝になっただと…!?」

《帝兄はケニの女神像をケニ族に返還し、交易により永続的な富をケニ族にもたらすと提案した。帝国の危機に駆け付けたヴァルグランド国王ガイセルの助力もあり、和平交渉がまとまった》

妻の祖国・神聖トルクキア帝国に身を寄せていた私のもとに知らせが届いた。隣でコルネリアが「じゃあマクシスは生きているのね!」と甲高い声をあげた。「またマクシスに抱いてもらえるわ」という声が、耳に障る。

「くそ…っ!」

今の私は帝都と民を捨てて逃げた皇帝であり、マクシスは勇敢かつ冷静にケニ族との交渉に臨んで帝国を守った英雄だ。マクシスが玉座の前に立ち、重厚な赤い絨毯に並んだ臣下たちが一斉にひざまずく様子が目に浮かぶ。

《臣下も民も帝兄の功績を称え皇帝即位を求めたが、帝兄は「正統な後継者はユリウス皇太子殿下である」「自分の子をもつつもりはない」と頑として聞き入れなかった。最終的にはグレンクス将軍が古代カエルンブリア帝国の制度を持ち出し、帝兄がユリウス皇太子が即位するまでの「代帝」となることで決着した。この顛末すらも、帝兄の慎み深さの表れとして、民と臣下からの敬愛を深める結果になっている》

私は書簡を握りつぶす。

あいつは身分の低い踊り子から生まれた皇族の恥さらしだ。それなのに父の金髪と青い目を受け継いだ。身の程知らずにも、正統な後継者たる私が受け継げなかったものを、あいつが受け継いだ。

だから変な気を起こさないよう、男娼のように扱って躾けてやったのに。躾の甲斐あって、なんにせよ私の顔色を伺い、欲しいものがあるときは「挿れてくれ」と願うように育ったのに。

そのあいつが代帝だと…

断じて許せない。

あいつは私の下で喘いで、私に「陛下、僕の卑しい穴に挿れてイカせてくださいませ」と懇願していなければならないんだ。私がそう望んでいるのだから。もうあいつ以外では勃たないのだから。

行かねばならない。

「開けろ!我こそがこの国の正統なる皇帝だ!」

しかしグリアの城門で神聖トルクキア帝国の兵たちを従えてそう叫んでも、門は開かない。ようやく姿を現したグレンクスは言った。

「我らは帝国を捨てた皇帝ではなく、帝国を救った代帝陛下に仕える」
「貴様っ…!父上と私に厚遇されてつけあがったか!!」
「なんとでも言うがいい、高慢で臆病で色狂いの裏切者め」

グレンクスが合図すると、無数の帝都民が城壁の上に姿を現した。私を「天使」と称えていた民たちが、「裏切者」「臆病者」「帰ってくるな」「私たちにはマクシス陛下がいる」と叫びながら石を投げてくる。

「くそ…くそっ!」
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