愛人は貴族の嗜み?それなら私は天才王子の公妾になりますね

こじまき

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1 愛人は貴族の嗜み

「エルミナ、紹介しよう」

貴族学園の卒業を控えたある日、婚約者のレオン様との放課後のお茶の席。

彼はなぜか、ピンク髪の一年生を同席させた。

「俺の恋人、ミレイユだ」

ミレイユは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「愛人は貴族の嗜みだ。だから婚約中に恋人をもつのも、別に問題ない」
「…」
「ガリ勉にはわからないかもしれないが、これが男の甲斐性ってやつさ」

そして決め台詞のように言うのだ。

「妻をもちながら愛人も養ってやるなんて、男の中の男だろ?」

ミレイユは当然、彼の味方をする。

「ミレも本当にそう思いますぅ♡レオン様かっこいぃ♡♡」

レオン様の顔に、にやりと笑みが浮かぶ。

「貞淑な妻と可愛らしい愛人から同時に愛されることが、選ばれし男のロマンだ」

「選ばれし男」にも疑問が残るが、それよりも「同時に愛される」という前提は、どう考えても成立しない。

私は彼を愛していないのだから。

とうの昔に、愛想は尽きている。

同級生に影響されて花街や仮面舞踏会に出入りし、成績はどんどん下がって。

何度忠告しても、「俺は天才だから、やる気になればできる」と笑って。

レオン様が、あの方のような天才なはずがない。

よくて「中の中」。

伯爵家にようやく生まれた跡取りで、年老いた両親に溺愛されて育って。

魔法学園では、自分より家格の低い取り巻きとだけ交流して。

ちやほやされて慢心し、そこそこの才能を磨こうともせず。

子どものまま育って、自己肯定感だけやたら高くて。

そんな彼を、「婚約者だから」という理由だけで、愛せるはずなどないのに。

ついため息が出てしまう。

「ああ…心配だよな。でも大丈夫だ」

心配ではなく呆れているのに、彼はいいように誤解する。

「ミレイユを愛人にしても、エルミナは正妻として尊重される。俺は二人とも平等に愛せる男だから」

それが彼なりの…自分勝手な甲斐性だと理解する。

「…そうですか」

私がそれだけ返すと、レオン様は不満げな顔をした。

「なんだよ、その反応。もっとさ…他にあるだろ?」
「他に…とは?」
「俺と結婚できるうえに、妻として尊重されることが嬉しいとか」

信じられないが、どうやら本気で言っているらしい。

「そうは言われてもミレイユと競うのは不安だから、俺のためにもっと自分磨きを頑張る、とか」

眩暈がする。

「レオン様、そんな風に言っちゃ可哀そうですぅ♡いちおだけど、正妻なんだしぃ♡」
「ミレイユは優しいな。でもエルミナはもっと俺のために努力しなきゃだめなんだ」

吐き気までしてきた。

「レオン様のお考えがどうあれ…私の感情は、誰かに強要されるものではございません」

それだけ言って、踵を返す。

「おい、待てよ!茶は!?」

レオン様の声が追いかけてくるけれど、振り返ることはない。ほんの少し残っていた情も摘まれた今は、ただできるだけ早くテラスを離れたい。

「彼から離れる」と心に決めて。
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