回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ

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「お腹もいっぱい! よし、修行するのだケイよ!」

「そのことなんだが、ピアディ。今は兄やセオドラ対策を先にしたい」

「どして!? 早く勇者に目覚めてわれを助けてほしいのだ。われと海の底の神殿をキレイキレイに清めてほしい!」

「それなんだが……」

今のところわかっていることは、主にこの三つだ。


・ケイたちアルトレイ伯爵家は勇者の末裔である

・勇者はこの世に邪悪がはびこるとき現れるとの伝承がある

・ケイは回帰前、海の底で勇者の証である金色の光を発した


「もう一度、金色の光を出せるよう訓練が必要だ。だが光……マナを扱うには魔法を学ぶ必要がある」

「マナとはなんぞ? 魔力のことなのだ?」

「ああ。回帰前の俺は剣術しか修めてなかったんだ。魔法は学園に入学後じゃないと学べない」

貴族は家庭教師から学ぶのが一般的だが、この国では十六歳から王都学園に入学の義務がある。

「魔法使いは国が管理しているんだ。適性検査も学園でなければ受けられない。素質があれば上級アカデミーに進学の推薦が受けられる」

「魔法ならわれが教えてやるのだ」

ぷるんとピアディが柔らかな胸を張った。

「!? お前、そのなりで魔法使いか!? ……あ、いや、回帰魔法が使えるのだから不思議ではないが、でも」

そういえば、何となく回帰後はずっと一緒だが、ケイはこのピンクのウパルパの来歴をよく知らない。

回帰前、海に投げ捨てられた後、深い海の底で出くわしたときのピアディは赤黒く巨大なサラマンダーだった。

けれど今のピアディを見ていると、このベビーピンク色のウーパールーパーの姿のほうが本来の姿に思える。

「ピアディ。そろそろお前のことを教えてくれないか?」

「われのこと? 聞きたい? 聞きたい?」

この様子だと話したくて仕方がないようだ。

「ああ。お前がただの愛らしいウパルパではないとわかっている。話してくれるか?」

「むふー。そこまで言うなら教えてやるのだ」

持ち上げられて満更でもなさそうに、ピアディは語り始めた。



「そう。お前の言う通り、われはただのかわゆいウパルパではない。進化した種族《ハイヒューマン》の中でも、魚人族という種族。
偉大なる海王様の血を引く子孫であり、海洋国家ポセイドニアの正統な王なのだ」

「魚人族……海王様の子孫?」

そんな存在や国のことなど、聞いたことがない。

ただ、『進化した種族《ハイヒューマン》』は有名なのでケイも知っている。
王国のあるこの大陸の中央部には、彼らだけの秘密の国があって、すべての国の真の支配者だという噂が伝承として語り継がれているためだ。

(彼らは滅多に人前に姿を現さない。だからピアディの言葉が本当かも確かめようがない)

「虚言を申しているのではないぞ。ここはわれが国を治めたのと同じ世界のようだが、時代が違うようだ。見たところ、われが生きた時代より千年近く前みたい」

いつも無邪気に跳ねているウパルパが、とんでもないことを言い出した!

ではピアディは未来人なのか?

「うむ。千年後の未来でわれは何十万年も前に失われた魚人族の国を復活させた。それがポセイドニアぞ。でも……」

愛らしい顔がションボリ顔になる。

「われの国は邪悪な存在に襲われ、滅ぼされてしまったのだ」

ピアディは、小さな身体を震わせた。

「われは、唯一守り通せた神殿を海の底に沈めた。そして、次元の狭間で長い時を過ごし、穢れが時の流れによって浄化されるのを待っていたのだ」

「あの大きなサラマンダーの姿は?」

「あれは、われがあれ以上穢れが広がらないよう、穢れを引き受けていた姿。
かわゆいだけのウパルパでは能力に限りがあるゆえ」

「次元の狭間とは?」

「われは進化した種族《ハイヒューマン》として時空を操作する能力を持っておる。穢れが漏れて世界を汚染せぬよう、海の底を通じて異次元にわれと神殿を封印しておったのだ」

「……回帰前、なぜ俺はそんなお前に会えたんだ?」

「わからぬのだ。われ、ずっと寝てたけど暖かい金色の光に起こされたのだ。次元の狭間から海底に出たら、そなたとお母上が落ちてきた」

ピアディにも理由はわからないようだ。

「まだ正体を掴めておらぬが、そなたと同時期に不穏な影の気配もあった。警戒が必要ぞ」

「……確かに。たまに気持ちの悪い気配を感じるな」

「この家には何かが潜んでいるのだ。調べねばならぬ」

「………………」

ピアディの青い瞳が、哀しげに揺れた。

「……まだ、神殿の中には、われの大切な人たちが眠ったままなのだ」

「え?」

「われの家族……おとうたん、ねえや、大好きな最愛、運命……みんな神殿で眠ったまんまなのだ……穢れが浄化されたなら、きっと復活できるはず……」

ケイは息を呑んだ。

「じゃあ、お前はずっと、一人で仲間を守ってあんな暗い場所にいたのか」

「うむ。われ、ずっと寂しかったのだ。
だが、そなたが勇者の光を放ったとき、われは目覚めた。そなたの力が、われに希望を与えてくれた」

ピアディの小さな身体が震えていた。

「そなたが勇者に覚醒すれば、神殿を浄化して、みんなを助けられる。
……だから、お願いなのだ。そなたに、助けてほしいのだ。だから勇者になるための修行もしてほしいのだ」

青く澄んだ瞳からポロポロと真珠粒のような涙がこぼれる。

ケイは、ピアディの真剣な眼差しを見つめ、力強く頷いた。

「ああ。約束しよう。また生きてお母様やお父様に合わせてくれた恩を、必ず返す。だから……泣くな」

「ありがとうなのだ、ケイ……」

指先で涙を拭ってやると、ピアディは泣き止んで笑ってくれた。

「そなたには、われの〝相棒〟の称号を賜わすのだ。ありがたく思えなのだー」

「ふっ。生意気ウパルパの相棒とはな。まあ、悪くないか」

――思いがけず、ピアディとの絆が深まった気がした。








※ピアディの元の時代では大変かわいそうなことになってる件……
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