23 / 43
23
しおりを挟む
あまりにもピアディが修行修行とうるさいので、ケイはピアディや父から教えられたことを元に、勇者の光を使う訓練を始めることにした。
だが、うまくいかない。
思えば、回帰後はまだ一度も、勇者の証だという金色の光を見ていない。
ましてや自分から放つこともできなかった。
「ピアディ。やはり学園に入学するまで待ってくれないか? マナの扱いは独学では無理だ」
「マナとはこの時代の魔力の名前だったか? そう難しく考える必要はないのだ。われの時代では素質がない者だってバンバン魔法を使っておったぞ?」
ピアディが本来生きていた千年後のことか?
「嘘つけ」
「本当なのだ。そういう新しい魔法が開発されてたのだ。
われの友も勇者だったが、魔力値は低かった。でもちゃんと勇者をやれていたのだ」
「………………ん?」
ちょっと待て。
今、『友が勇者だった』と言わなかったか???
「お前の友達に、勇者がいたのか?」
「うむ。他には聖女、聖者、大魔道士、賢者、あとなんかいろいろ称号持ちがわれの国には揃っておった」
「いやちょっと待ってくれ。そのラインナップが揃ってて、なんでお前たちは邪悪に負けたんだ?」
どれも世界を代表するクラスの、伝説級の称号持ちではないか。
「それを聞かれると悲しい当時を思い出してしまうのだ……」
ぷるぷるのボディをしわしわにして、ピアディが落ち込んでいる。
「われの友は勇者であった。われの国を襲った邪悪を仲間たちと倒してくれたのだが、敵がしぶとくて死に際に呪いを発したのだ……」
「その呪いが、お前や海底神殿の穢れか」
「うむ……。聖剣の聖者だったお父たんや、聖女ねえやでも防ぎきれないほどのこびり付きであった」
「こびり付き……」
お掃除が大変そうな表現である。
べっとりしていそうだ。
「特にわれのお父たんは最強と呼ばれる男で。お父たんが魔堕ちしたら世界は終わりかねないから、われは皆と神殿ごと海に沈んで次元の狭間に封印したのだ」
(確かピアディは千年後の一国の主だったか。……話を聞く限り、千年後の世界には相当な危機が訪れるようだ)
壮大な話だが、今のケイにはどうしようもない。
だがピアディの話にはケイにとって重要な情報が含まれていた。
「その、友達の勇者はどうやって覚醒したんだ?」
「われも話で聞いただけなのだけど、お父上が邪悪なる者に殺されて、敵討ちの旅の中で覚醒したと言っておった」
「……そうか」
ピアディがまんまるな目でケイを見上げる。
「そなたが回帰前、勇者の光を放てたのはなぜだったのだ?」
「それがわかれば俺も苦労しない」
「今回は大サービスでわれが教えてやるのだ。あのね。そなたは強い思いを持ったとき、光を放ったのだ」
「強い思い……?」
「うむ。そなたが母を守りたいと願ったとき。勇者の光が放たれたのはその瞬間だったのであろう」
ケイはハッとした。
(お母様を……守りたい)
「ウッ。……さ、寒い……冷たい……」
まただ。回帰前の、まだ海底に沈んだままの自分が感じている冷たさが襲ってくる。
だが、凍えそうなほどの冷たさに自分を抱きしめながらも、ケイはピアディの助言から突破口を開きかけていた。
「そうだ。お母様を守りたい。人生をやり直せるなら、今度こそあんな死に方はさせない」
ケイの体が金色に光り始めた。
まだ薄っすらとした弱い光だったが、確かに光には黄金の色が付いている。
「俺は上手くできている。お母様が悲しまない人生をやり直せている……!」
「その思いを忘れぬことだ。勇者とは救う者の別名なのだぞう」
その光を兄が遠くからこっそり目撃し、驚愕していた。
(け、ケイが光っている? しかも――金色って勇者の色ではないか!)
アルトレイ伯爵家の嫡男テオドールは、もちろん自分の家が勇者の末裔だと知っている。
後継者教育で最初に学ぶ知識だからだ。
「もし、あのままケイが勇者に覚醒するなら。次期伯爵は私より……」
母から押しつけられた毒の小瓶を、手の中にぎゅっと握り締めた。
――ケイのほうが相応しいのではないか?
※ピアディの時代に勇者がとんでもないことになった話は、「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」にて。現代未来異世界転移もの。
だが、うまくいかない。
思えば、回帰後はまだ一度も、勇者の証だという金色の光を見ていない。
ましてや自分から放つこともできなかった。
「ピアディ。やはり学園に入学するまで待ってくれないか? マナの扱いは独学では無理だ」
「マナとはこの時代の魔力の名前だったか? そう難しく考える必要はないのだ。われの時代では素質がない者だってバンバン魔法を使っておったぞ?」
ピアディが本来生きていた千年後のことか?
「嘘つけ」
「本当なのだ。そういう新しい魔法が開発されてたのだ。
われの友も勇者だったが、魔力値は低かった。でもちゃんと勇者をやれていたのだ」
「………………ん?」
ちょっと待て。
今、『友が勇者だった』と言わなかったか???
「お前の友達に、勇者がいたのか?」
「うむ。他には聖女、聖者、大魔道士、賢者、あとなんかいろいろ称号持ちがわれの国には揃っておった」
「いやちょっと待ってくれ。そのラインナップが揃ってて、なんでお前たちは邪悪に負けたんだ?」
どれも世界を代表するクラスの、伝説級の称号持ちではないか。
「それを聞かれると悲しい当時を思い出してしまうのだ……」
ぷるぷるのボディをしわしわにして、ピアディが落ち込んでいる。
「われの友は勇者であった。われの国を襲った邪悪を仲間たちと倒してくれたのだが、敵がしぶとくて死に際に呪いを発したのだ……」
「その呪いが、お前や海底神殿の穢れか」
「うむ……。聖剣の聖者だったお父たんや、聖女ねえやでも防ぎきれないほどのこびり付きであった」
「こびり付き……」
お掃除が大変そうな表現である。
べっとりしていそうだ。
「特にわれのお父たんは最強と呼ばれる男で。お父たんが魔堕ちしたら世界は終わりかねないから、われは皆と神殿ごと海に沈んで次元の狭間に封印したのだ」
(確かピアディは千年後の一国の主だったか。……話を聞く限り、千年後の世界には相当な危機が訪れるようだ)
壮大な話だが、今のケイにはどうしようもない。
だがピアディの話にはケイにとって重要な情報が含まれていた。
「その、友達の勇者はどうやって覚醒したんだ?」
「われも話で聞いただけなのだけど、お父上が邪悪なる者に殺されて、敵討ちの旅の中で覚醒したと言っておった」
「……そうか」
ピアディがまんまるな目でケイを見上げる。
「そなたが回帰前、勇者の光を放てたのはなぜだったのだ?」
「それがわかれば俺も苦労しない」
「今回は大サービスでわれが教えてやるのだ。あのね。そなたは強い思いを持ったとき、光を放ったのだ」
「強い思い……?」
「うむ。そなたが母を守りたいと願ったとき。勇者の光が放たれたのはその瞬間だったのであろう」
ケイはハッとした。
(お母様を……守りたい)
「ウッ。……さ、寒い……冷たい……」
まただ。回帰前の、まだ海底に沈んだままの自分が感じている冷たさが襲ってくる。
だが、凍えそうなほどの冷たさに自分を抱きしめながらも、ケイはピアディの助言から突破口を開きかけていた。
「そうだ。お母様を守りたい。人生をやり直せるなら、今度こそあんな死に方はさせない」
ケイの体が金色に光り始めた。
まだ薄っすらとした弱い光だったが、確かに光には黄金の色が付いている。
「俺は上手くできている。お母様が悲しまない人生をやり直せている……!」
「その思いを忘れぬことだ。勇者とは救う者の別名なのだぞう」
その光を兄が遠くからこっそり目撃し、驚愕していた。
(け、ケイが光っている? しかも――金色って勇者の色ではないか!)
アルトレイ伯爵家の嫡男テオドールは、もちろん自分の家が勇者の末裔だと知っている。
後継者教育で最初に学ぶ知識だからだ。
「もし、あのままケイが勇者に覚醒するなら。次期伯爵は私より……」
母から押しつけられた毒の小瓶を、手の中にぎゅっと握り締めた。
――ケイのほうが相応しいのではないか?
※ピアディの時代に勇者がとんでもないことになった話は、「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」にて。現代未来異世界転移もの。
41
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる