回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ

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ピアディとの対話後、思わぬ突破口を見出してテオドールは国王、――祖父に手紙を書いた。

手紙には、これまでのアルトレイ伯爵家で母セオドラを巡る問題を詳細に記した。
ケイやその母ポーラの状況や、セオドラの身近に危険人物がいることもしっかりと書いて、早馬で王宮の祖父王に届けさせた。

すると、遣いの者は祖父王からの返信を携えてその日のうちに戻ってきた。

――明日の午後、王宮へ来るように。



翌朝。テオドールは母の目を盗んで馬車に乗り込み、王宮へ向かっていた。

(同じ王都にいるのに、お祖父様とお会いするのは久し振りだな)

テオドールは決意を黒い瞳にのせ、馬車の中から王宮の門を見上げた。

(待っていてください、母上。私が、あなたを救ってみせます)

王宮の玉座の間に足を踏み入れた瞬間、テオドールは圧倒されそうになった。
高くそびえる天井、重厚な装飾、そして玉座に鎮座する祖父王。

王家の威厳を感じさせる空間だが、今のテオドールにはそれ以上の重圧がのしかかっていた。

テオドールは決意を込めた瞳で祖父王を見上げた。
母と同じ銀髪と、赤い目をしている。この国の王族が血筋に持つ色だ。

「テオドール、よく来たな」

祖父王の声が玉座の間に響いた。
威厳に満ちた声だが、どこか疲れた響きを感じ取ることができた。

「はい、お祖父様。お力を貸していただきたく、参上しました」

テオドールは跪き、頭を垂れた。

「……顔を上げよ。手紙を読んだ。詳しい事情を話してくれるか?」

テオドールが顔を上げると、祖父王の厳しい瞳が真っ直ぐに見つめていた。

「……母上が、狂気に囚われています」

祖父王の瞳が僅かに揺れた。

「妾の子である私の異母弟ケイを憎み、妬み、排除しようとしています。言動があまりにも異常です。まるで、呪いにでも囚われたかのように……」

テオドールの声は震えていた。

「母上を、救いたいのです。どうか、お力を貸してください」

テオドールは深々と頭を下げた。

玉座の間に静寂が訪れた。

祖父王は目を閉じ、深い息を吐いた。

「……そうか、セオドラは……」

その声には、深い悲しみが滲んでいた。



祖父王は目を開け、重い口調で語り始めた。

「テオドールよ、お前に話しておかねばならぬことがある。お前の母、セオドラがその狂気に囚われた理由だ」

テオドールは息を呑んだ。

「セオドラは……真実を知らずに結婚したのだ」

「真実、ですか?」

「そうだ。お前の父ユヴェルナートには、最愛の女性がいた。だが、セオドラはそのことを知らずに結婚した」

「は、はい。両親は王命の政略結婚と聞いております」

最愛の女性はケイの母ポーラのことだ。

「当初、ユヴェルナートは既に婚約者がいて結婚の日取りも決まっているからと、セオドラとの結婚を断ってきた。……だが、私が王命で強引に進めさせた」

「………………」

「ユヴェルナートはセオドラの初恋の男でな。私はセオドラを娘として溺愛しておる。だから、何としてでも愛した男と連れ添わせてやりたかったのだ」

祖父王の瞳は、深い後悔に沈んでいた。

「だから驚いたであろうな。婚姻を結んだ後で、ユヴェルナートに自分以外の女がいて、本命はそちらだと知ったのだ。セオドラが怒るのも無理はない」

「……父とポーラ様からしたら、母上のほうが邪魔者ですよね。なぜ、両親を無理やり結婚させたのですか?」

祖父王の顔が陰った。

「私は、王家の血とアルトレイ家の血を混ぜたかったのだ」

「………………」

「アルトレイ家は、勇者の血を引く一族。王家と結びつけることで、王国の安定を図ろうとした」

テオドールは言葉を失った。
これまでの説明が言葉通りなら、祖父王はセオドラの恋を成就させることと、王家の野望を強引に両立させたつもりで、結果セオドラを犠牲にしたことになる。

「お前も知っての通り、今この国は戦争を控えて国難の真っ只中だ。だが、もう何十年も国力が衰えて、貴族や民への求心力に欠ける状態が続いている。
――アルトレイ伯爵家の勇者の血筋が欲しかった。そして授かったのがお前だ、テオドール」
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