8 / 44
アケロニア王国は公私の区別が厳しい
しおりを挟む
このルシウスなる麗しの若き子爵様、とにかくお世話のし甲斐があるのなんの。
じっと一ヶ所で落ち着いていられない性質のようで、思い立ったが吉日を地で行く性格だ。
それで話好きだから、とにかく喋る喋る。
けれど一方的に自分が喋るだけでなく、同じくらいユキレラの話も楽しそうに聞いてくれるのだ。
ユキレラのことは「お前はもう身内だから」と言って、何かと気にかけてくれている。
遠縁で一族に認められたとはいえ、平民に過ぎないユキレラをだ。
時間的な余裕の多い彼には、あちこち連れ回された。
王都のお貴族様御用達のテーラーや百貨店は、ど田舎者のユキレラにはまさに別世界だった。
あんなにたくさんの物があるところを、見たことがなかった。
「本当なら外商っていって、家まで担当者に商品を持ってきてもらう貴族が多いんだけど。僕の今の家は小さいから、お店に行ったほうが便利なんだよ」
(ほうほう。外商ちゅうのは商店の移動販売みたいなもんなのけ?)
何やらお貴族様には買い物にもルールがあるらしい。
貴族の秘書、付き添い人としての立ち居振る舞いはルシウス直々にレクチャーを受けた。
このアケロニア王国に限らず、王族や貴族のいる国でのマナーはほぼ共通化されている。
一度基本を覚えてしまえば、あとは自分の属する場所に合わせて微調整していけばいい。
基本的なマナーは、どの領地出身でも学校の中等部を卒業していれば基本科目として学ぶようになっているのが、ここアケロニア王国だ。
ユキレラも、ど田舎村で通っていた学校で月に一度、ど田舎領のお貴族様のおじいちゃん先生から言葉遣いや食事、会話のマナー講座を授業として受けてきている。
「アケロニア王国は王侯貴族と、それ以外の庶民の仲が良いんだ。だけどそれはプライベートだけ。日常が緩い分、公のフォーマルな場はものすごく厳しいんだよね」
この国では、国王と平民でも親しく挨拶して言葉を交わし名前を呼び合うが、公の場で同じことをやると、一昔前だったらその場で平民は国王の護衛騎士に首を落とされても文句は言えない。
そんなことを聞かされてユキレラは震え上がった。
馴れ合ってたらいきなり首切られるとかこわい。
「き、貴族様や王族様らしき方がいたら、全力でへりくだりますっ」
「あはは。そんなに難しく考えることないよ。王族相手なら王宮内や公式行事の場、貴族相手なら相手の本宅やパーティー、お茶会の会場内でだけ気をつけてれば八割以上カバーできるからね」
「の、残りの二割に地雷が埋まってるでしょ、それ!?」
「あははは」
「笑って誤魔化してるしー!?」
大丈夫だ、とルシウスはその麗しのユキレラとよく似た顔で微笑んだ。
「お前はもうリースト伯爵家の一族だからね。うちが懇意にしてる方々に面通しするまでは、必ず僕が側にいる。ちょっとぐらい粗相したって平気さ、そのぐらいの“顔”はきくつもりだよ」
「おおおお。お頼もしいです、ルシウス様っ」
この上司様が頼もしすぎる。
--
アケロニア王族の在り方は理想の王族像ですが、実は公私の区別がものすごく厳格で、ルシウス君も小さい頃はいろいろやらかして怒られてはギャン泣きしたことがある。
そんで国内では、人格者の王族たちに舐めてかかった貴族や平民たちが処罰されることもわりとある……
じっと一ヶ所で落ち着いていられない性質のようで、思い立ったが吉日を地で行く性格だ。
それで話好きだから、とにかく喋る喋る。
けれど一方的に自分が喋るだけでなく、同じくらいユキレラの話も楽しそうに聞いてくれるのだ。
ユキレラのことは「お前はもう身内だから」と言って、何かと気にかけてくれている。
遠縁で一族に認められたとはいえ、平民に過ぎないユキレラをだ。
時間的な余裕の多い彼には、あちこち連れ回された。
王都のお貴族様御用達のテーラーや百貨店は、ど田舎者のユキレラにはまさに別世界だった。
あんなにたくさんの物があるところを、見たことがなかった。
「本当なら外商っていって、家まで担当者に商品を持ってきてもらう貴族が多いんだけど。僕の今の家は小さいから、お店に行ったほうが便利なんだよ」
(ほうほう。外商ちゅうのは商店の移動販売みたいなもんなのけ?)
何やらお貴族様には買い物にもルールがあるらしい。
貴族の秘書、付き添い人としての立ち居振る舞いはルシウス直々にレクチャーを受けた。
このアケロニア王国に限らず、王族や貴族のいる国でのマナーはほぼ共通化されている。
一度基本を覚えてしまえば、あとは自分の属する場所に合わせて微調整していけばいい。
基本的なマナーは、どの領地出身でも学校の中等部を卒業していれば基本科目として学ぶようになっているのが、ここアケロニア王国だ。
ユキレラも、ど田舎村で通っていた学校で月に一度、ど田舎領のお貴族様のおじいちゃん先生から言葉遣いや食事、会話のマナー講座を授業として受けてきている。
「アケロニア王国は王侯貴族と、それ以外の庶民の仲が良いんだ。だけどそれはプライベートだけ。日常が緩い分、公のフォーマルな場はものすごく厳しいんだよね」
この国では、国王と平民でも親しく挨拶して言葉を交わし名前を呼び合うが、公の場で同じことをやると、一昔前だったらその場で平民は国王の護衛騎士に首を落とされても文句は言えない。
そんなことを聞かされてユキレラは震え上がった。
馴れ合ってたらいきなり首切られるとかこわい。
「き、貴族様や王族様らしき方がいたら、全力でへりくだりますっ」
「あはは。そんなに難しく考えることないよ。王族相手なら王宮内や公式行事の場、貴族相手なら相手の本宅やパーティー、お茶会の会場内でだけ気をつけてれば八割以上カバーできるからね」
「の、残りの二割に地雷が埋まってるでしょ、それ!?」
「あははは」
「笑って誤魔化してるしー!?」
大丈夫だ、とルシウスはその麗しのユキレラとよく似た顔で微笑んだ。
「お前はもうリースト伯爵家の一族だからね。うちが懇意にしてる方々に面通しするまでは、必ず僕が側にいる。ちょっとぐらい粗相したって平気さ、そのぐらいの“顔”はきくつもりだよ」
「おおおお。お頼もしいです、ルシウス様っ」
この上司様が頼もしすぎる。
--
アケロニア王族の在り方は理想の王族像ですが、実は公私の区別がものすごく厳格で、ルシウス君も小さい頃はいろいろやらかして怒られてはギャン泣きしたことがある。
そんで国内では、人格者の王族たちに舐めてかかった貴族や平民たちが処罰されることもわりとある……
51
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる