54 / 172
憧れの冒険者活動へGO!
社畜の前世が悔しいカレン
しおりを挟む
「カズン様も前世は日本だったのよね。亡くなったのは平成?」
「ああ。高校に入った年で十代半ばだったし、元号が変わる気配もまだなかった」
「へえ。じゃあ、次の令和やその次は知らないんだ。次の天皇になったの、プリンセスかプリンス、どっちか知りたい?」
「いや……それは謎のままにしておこう」
それより、カズンには気になることがあった。
「カレン嬢。君は、その……」
「どんなふうに死んだかって?」
「……差し支えなければ教えてもらえないか」
死ぬときの思念が、この世界に生まれ変わった境遇を多少なりとも左右しているように思える。
そう伝えると、カレンは少しだけ考えるような真面目な顔付きになった。
「カズン様。多分、この世界は全力を出せる世界よ。あたしはそう思ってる」
「『全力を出せる』?」
「そ。あたし、日本にいたときは自分の頭を押さえつける、すごく強い圧力を感じてた。日本なんて島国の、南の更に小さな石垣島なんて狭い島で、何やるにも周りがうるさいの」
「………………」
「せめて沖縄本島に出たかった。けどうちは貧乏だったし、学校も島内しか行けなかったのよね」
それでも高校時代は島内のチェーン店系スーパーでのアルバイトに明け暮れて、海外渡航の費用を稼いだ。
何とかラジオ英会話を足掛かりに基本的な英会話を学び、高校のネイティヴの英語教師の協力もあって大学は海外に進学できたのだ。
「海外に出ると、日本の良くないところが外側からよく見えるんだ。学生のアルバイト一つ取っても、時給めっちゃくちゃ安かったし。石垣島なんてスーパーの時給830円よ? 平成から上がっても10円単位とか舐めてない? アメリカじゃ最低でも時給2000円はあったっつーの!」
「……僕のときは東京で高校生850円だったな……未成年の学生だから大人より100円安かった」
「そこからしておかしいのよ。労働内容同じなのに何で時給下げるんだっての!」
海外に出てから、アメリカから始まって欧米諸国、アジア、中東と行けるだけ行きまくったという。
「だけど途中で、大きな戦争が起こって日本に帰国したの。石垣島には戻らないで、伝手を辿って関西のほうで就職してね。理系のAI開発してる国内大手。アメリカじゃ量子工学専攻してたからそれ関連」
「君は凄かったんだな。今でも充分凄いと思うが」
カズンなど、地元の徒歩十数分のところにある公立高校だった。まだ進路も何も定めていない高校生のうちに死んだから、もちろん大学進学や就職なども経験していない。
量子工学も、カズンからしたら別世界の分野だ。カズンのいた時代では量子といえば、あと数十年たてば今のパソコンとは次元の違う処理能力を持った量子コンピューターが出てくるようになる、とたまにメディアで報道されていた程度しか知らない。
「そう思うでしょ? まあ経歴だけ語るとそういうインテリ女子っぽい印象受けるのは当然だと思うのよ。でも日本で就職したのが間違いだったわ。まず帰国子女ってところで生意気だと言われる」
「……それは」
カズンが日本人だった頃も、そういう事例はよく見聞きしていた。
「女だからって、舐められる。勤務年数が少ないうちは、重要案件には触らせてもくれない。新人の女社員なんだからお茶入れろとか言われてビックリしたわ、アメリカなら大学で学んだことそのまますぐ活かせる職場に就職、が当たり前だって聞いてたから」
「日本の就職事情をあまり調べてなかったってことか」
「……ううん。ちゃんと就職面談のとき、アメリカの大学で学んだことをすぐ実践できる職場に配置するって約束してもらってたの。でもいざ就職してみると、そんなのただの口約束だろって言われて、下積みからやらされたわけ。コピー取りとか」
何で契約書を交わさなかったんだ前世の自分! とカレンが本気で悔しがってる。
「それで、自分の専門でもないどうでもいい仕事に追われて、日々残業で終電も間に合わず職場に寝袋持ち込んで寝る、みたいな生活が続いて……一年は経ってなかったかな。多分、そのまま過労で死んじゃったんだと思う」
「じゃあ、自分が死んだときの記憶はないのか」
「そうね。けど、それまでにも、自分の人生はこんなんじゃない、もっと活躍できるはずなんだ、そんな異世界にあたしは行きたい……って毎日空に念じてたわ。多分それが天に通じて、今ここにカレン・ブルーとして転生したんじゃないかなって。……あっ、ピザ新しいの焼けたみたい。持ってきますね!」
言うなり石窯のほうへ足早にカレンが向かう。
これはじっくり話したいなと思い、カズンは空いた皿をブルー男爵家の使用人に片付けてもらって、新しいグラスとデカンタのジュース、取り皿などを持って近くの壁際のソファ席に移動した。
「ああ。高校に入った年で十代半ばだったし、元号が変わる気配もまだなかった」
「へえ。じゃあ、次の令和やその次は知らないんだ。次の天皇になったの、プリンセスかプリンス、どっちか知りたい?」
「いや……それは謎のままにしておこう」
それより、カズンには気になることがあった。
「カレン嬢。君は、その……」
「どんなふうに死んだかって?」
「……差し支えなければ教えてもらえないか」
死ぬときの思念が、この世界に生まれ変わった境遇を多少なりとも左右しているように思える。
そう伝えると、カレンは少しだけ考えるような真面目な顔付きになった。
「カズン様。多分、この世界は全力を出せる世界よ。あたしはそう思ってる」
「『全力を出せる』?」
「そ。あたし、日本にいたときは自分の頭を押さえつける、すごく強い圧力を感じてた。日本なんて島国の、南の更に小さな石垣島なんて狭い島で、何やるにも周りがうるさいの」
「………………」
「せめて沖縄本島に出たかった。けどうちは貧乏だったし、学校も島内しか行けなかったのよね」
それでも高校時代は島内のチェーン店系スーパーでのアルバイトに明け暮れて、海外渡航の費用を稼いだ。
何とかラジオ英会話を足掛かりに基本的な英会話を学び、高校のネイティヴの英語教師の協力もあって大学は海外に進学できたのだ。
「海外に出ると、日本の良くないところが外側からよく見えるんだ。学生のアルバイト一つ取っても、時給めっちゃくちゃ安かったし。石垣島なんてスーパーの時給830円よ? 平成から上がっても10円単位とか舐めてない? アメリカじゃ最低でも時給2000円はあったっつーの!」
「……僕のときは東京で高校生850円だったな……未成年の学生だから大人より100円安かった」
「そこからしておかしいのよ。労働内容同じなのに何で時給下げるんだっての!」
海外に出てから、アメリカから始まって欧米諸国、アジア、中東と行けるだけ行きまくったという。
「だけど途中で、大きな戦争が起こって日本に帰国したの。石垣島には戻らないで、伝手を辿って関西のほうで就職してね。理系のAI開発してる国内大手。アメリカじゃ量子工学専攻してたからそれ関連」
「君は凄かったんだな。今でも充分凄いと思うが」
カズンなど、地元の徒歩十数分のところにある公立高校だった。まだ進路も何も定めていない高校生のうちに死んだから、もちろん大学進学や就職なども経験していない。
量子工学も、カズンからしたら別世界の分野だ。カズンのいた時代では量子といえば、あと数十年たてば今のパソコンとは次元の違う処理能力を持った量子コンピューターが出てくるようになる、とたまにメディアで報道されていた程度しか知らない。
「そう思うでしょ? まあ経歴だけ語るとそういうインテリ女子っぽい印象受けるのは当然だと思うのよ。でも日本で就職したのが間違いだったわ。まず帰国子女ってところで生意気だと言われる」
「……それは」
カズンが日本人だった頃も、そういう事例はよく見聞きしていた。
「女だからって、舐められる。勤務年数が少ないうちは、重要案件には触らせてもくれない。新人の女社員なんだからお茶入れろとか言われてビックリしたわ、アメリカなら大学で学んだことそのまますぐ活かせる職場に就職、が当たり前だって聞いてたから」
「日本の就職事情をあまり調べてなかったってことか」
「……ううん。ちゃんと就職面談のとき、アメリカの大学で学んだことをすぐ実践できる職場に配置するって約束してもらってたの。でもいざ就職してみると、そんなのただの口約束だろって言われて、下積みからやらされたわけ。コピー取りとか」
何で契約書を交わさなかったんだ前世の自分! とカレンが本気で悔しがってる。
「それで、自分の専門でもないどうでもいい仕事に追われて、日々残業で終電も間に合わず職場に寝袋持ち込んで寝る、みたいな生活が続いて……一年は経ってなかったかな。多分、そのまま過労で死んじゃったんだと思う」
「じゃあ、自分が死んだときの記憶はないのか」
「そうね。けど、それまでにも、自分の人生はこんなんじゃない、もっと活躍できるはずなんだ、そんな異世界にあたしは行きたい……って毎日空に念じてたわ。多分それが天に通じて、今ここにカレン・ブルーとして転生したんじゃないかなって。……あっ、ピザ新しいの焼けたみたい。持ってきますね!」
言うなり石窯のほうへ足早にカレンが向かう。
これはじっくり話したいなと思い、カズンは空いた皿をブルー男爵家の使用人に片付けてもらって、新しいグラスとデカンタのジュース、取り皿などを持って近くの壁際のソファ席に移動した。
22
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる