破壊のオデット

真義あさひ

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その後の顛末と歩く薔薇 ※ざまぁ回

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 その後、ドマ伯爵家は取り潰しが決まった。

 やはり、サムエルがリースト侯爵家の乗っ取りを表す発言を繰り返しており、それを記録した魔法樹脂を大量に証拠としてオデットが用意していたことが決定打となった。

 慌てたのはサムエル本人と、庶子だからと半ば放任していた父親のドマ伯爵だ。

 だが、後悔してももう遅い。

 現在の当主をはじめとして、本家の者は全員が貴族籍を剥奪の上、平民落ち。
 この国では貴族家の当主の座や爵位の簒奪を犯した者への処罰は、家族も連帯責任を取らされる。
 ましてやリースト侯爵家のような、特殊な血筋の一族への犯罪は御法度中の御法度である。

 元ドマ伯爵家の者たちは、王都と王家の直轄地、リースト侯爵領への立ち入りを生涯禁じられる。

 没収された財産はすべて、現在のリースト侯爵家に与えられることとなった。
 領地は国が没収し、直轄地として女王が治める。

 本来なら貴族家や爵位の簒奪は、事実確認が取れた時点で即処刑も有り得る。
 実際、リースト侯爵家の現当主の継承時に起こった簒奪事件のときの首謀者たちは、短期間で全員処刑となっている。

 だが、それは被害者のオデットが望まなかった。

「死んで終わりなんて、楽をさせたくない」

 それに、資産家でもあったドマ伯爵家の全財産をもってしても、オデットへの百年分の慰謝料と賠償金には足りなかった。

 サムエルを含むドマ伯爵家の人間は、残りの人生をオデットに償い続けることになる。

 当然、ドマ伯爵家の者たちはオデットを恨み続ける人生になるだろう。



 けれど、彼女はもう決して油断などしない。

 リースト侯爵家は平民落ちしたドマ伯爵家の者たち全員に監視を付けた。
 まったく無関係の善意の有志を装って、彼らを保護し、衣食住の世話と仕事の世話まで行った。

 平民落ちしたとはいえ、伯爵家の人間たちで元が資産家の家だから、皆それなりの能力はある。

 自分たちの懐の中で最後まで有効活用するということのようだ。
 骨の髄までしゃぶり尽くす気でいる。



「えげつない。が、見事だ。リースト伯爵令嬢オデット」

 リースト侯爵家の簒奪未遂を犯したドマ伯爵家の断罪結果の報告を息子のユーグレン王太子から聞いたグレイシア女王は、執務室でしみじみ呟いた。

「リースト家の人間ってのは、愛でられるための薔薇じゃないんだよなあ。あやつら、自分から動いて棘を刺しに行くものな。薔薇だけど足が付いてる。歩く薔薇」

「まあ、人間ですからね。薔薇が似合う麗しの一族ではありますが、どうして皆それを忘れてしまうのか」

 今回は更に、棘を刺した獲物は最後まで逃さず、自分たちの養分として徹底活用するというおまけ付き。

 本来ならサムエルの「自分が新侯爵になる」発言の証拠だけ持って国の司法に訴えれば、もっと簡単に片付いたはずだ。
 それをわざわざ、事件性を拡大させて百年前のドマ伯爵家の犯罪まで含めて断罪した。
 女にしておくのが惜しい。なかなかの手腕である。

「派手なパフォーマンスをかまして、自分の望み通りの結末に持っていく胆力もある。良い、実に良い。わたくしの好みだ」
「オデット嬢を側近になさいますか。女王陛下」
「わたくしのではなく、お前のだ。だが、側近より正妃にしてはどうか」

 誰かが言い出すとは思ったが、やはりこの母親が言うか、とユーグレン王太子は渋い顔をした。
 ユーグレンは今年23歳でまだ独身。体調不良を原因に婚約者もいない。

「あれに未来の王妃が務まるとお思いですか」
「意外といけるのではないか? お遊戯会を楽しむようなものだと思えば、王宮の政争もなかなか乙なもの」

 いずれにせよ、オデットは現在、学園高等部の1年生。卒業までまだ2年ある。
 その間に王家から婚約の打診をするかしないか調整するとグレイシア女王は言った。


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