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ルシウス君、称号ゲット!からのおうちに帰るまで
魔力使いの旧世代と新世代
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ココ村支部に新たに冒険者としてやってきた魔術師フリーダヤと聖女ロータスは、ここを拠点にココ村海岸を調査してくれるという。
彼らは、フリーダヤのほうは円環大陸の中央にある神秘の永遠の国に所属の魔術師。
ロータスは完全フリーで、どの国や団体にも属さない。
どちらも冒険者登録をしているそうで、ランクは名誉あるSSSランクとのこと。
ということは、実力的には最高峰だ。かなりできると見た。
冒険者ランクはSSになると、そのとき滞在している国からの指定依頼を受ける義務が発生する。
たとえばギルマスのカラドンがそうだ。
ところが、更にひとつ上がって最高ランクのSSSになると、今度はどの国や団体にも縛られることがなくなる。
まさに、名誉ランクと言われる所以だ。
「やっと来てくれましたね、我が師たち。このままあたし一人で対処しなきゃならないのかって、冷や冷やしたわー!」
女魔法使いのハスミンは、二人が到着して大喜びしていた。
聞けば、ハスミンは彼らの弟子で、既に200年近く生きている魔力使いとのこと。
ギルド3階のギルマスの執務室に集められたところで明かされた真実に、さすがのルシウスも目を剥いていた。
「……ハスミンさんがこの人たちを呼んだの? もしかして、やたらと僕に構ってたのって……」
「そ。ルシウス君はすごく強いし、聖剣の持ち主だから、もしかしたらと思って。でもあなたはあたしより強いから、師匠にはなれないし」
「……僕、環使いになるのはイヤだなあ」
勝手に新世代の魔力使いからターゲットにされていたらしい。
勝手すぎる。何てことだ!
ちなみに、聖女ロータスから強引に『聖者覚醒』させられたルシウスは、フリーダヤとロータスペアを警戒して、二人とは慎重に距離を置いていた。
二人から環使いの修行をするよう言われたが、拒否している。
「あのね、僕の国ではあなたたちの使う環は要注意の術式に指定されてるんだ。民間はともかく、貴族の魔力使いに環使いはほとんどいないよ」
ルシウスの故郷、アケロニア王国は魔法魔術大国と呼ばれているが、旧世代の魔力使いたちの国だ。
新世代が使う環の使い手の数は少ない。
「僕の実家も魔法の大家だけど、もう何世代も前に環を扱うことはしないと決めているよ。……悪いけど、あんまり僕に関わってほしくないです」
「君のところでは、環についてどう聞いてるの?」
とは、若葉のような薄緑色の髪と瞳の魔術師フリーダヤだ。
およそ800年前に環を開発した当の本人である。
見た感じ、飄々とした、悪意を感じさせない優男だったが油断はできない。
どう聞いているも何も、環は新世代の魔力使いたちを象徴する唯一の術式で、概要だけなら魔力使いは誰でも知っている。
まず、旧世代が自分が本来持つ分や儀式、生贄からのみ調達できる魔力を、新世代の環使いたちは光の円環環を通して他者や外界といった世界から直接使うことができる。
ただし、調達できる魔力量は術者の力量や器次第なので、まったく訓練や努力が不要というわけではない。
環使いは、同じ系列に属していたり、親しい者同士なら、離れていても互いの環を通じて物品や情報のやり取りが可能である。
今、円環大陸の各国にある通信用の魔導具や、移動のための転移魔術陣は環使いたちが開発したものである。
そして、女魔法使いのハスミンがたまに使っているアイテムボックス機能が環にはある。
この、異次元空間に物品を収納する術式は、とうとう旧世代たちが開発できなかったもののひとつだ。
「うん。よく勉強してるね」
「こういうの、学校で習ったよ。それと注意事項もね」
環を使うためには、執着を落とす必要がある。
「その執着を落としすぎて、責任を放り出して家や国から出奔してしまう危険性がある。だから、王侯貴族制のアケロニア王国では環は推奨されてません!」
「やっぱり、そう言われてるかー」
「結婚前日に環に目覚めて、結婚相手を置き去りにして家を出てしまった人もいると聞いてるよ」
「あ、それは」
ルシウスの隣に立っていたハスミンが笑いを噛み殺している。
「そ、それ、それね、あたしのお姉様だわ。ガブリエラっていうの。結婚式の前日に我が師フリーダヤが家に来てね。お姉様を環使いに覚醒させて連れて行っちゃったのよね」
200年近く前の出来事だという。
「やっぱり要注意じゃない。結婚前日の花嫁が出奔するってどんだけなの?」
「まあ、あれにはいろいろあってね……」
「ちなみにお姉様に捨てられた相手は、後にあたしの旦那様になったの。結果オーライ!」
「ええええ。なにそれ?」
フリーダヤとハスミン師弟は互いに顔を合わせて苦笑いしている。
聖女のロータスは我関せずだ。
とそこへ、いつものやつ。
「魚だ! 魚が来たぞー! 総員、戦闘配備!」
さて、ココ村支部のビッグネームな新人二人は戦ってくれるのだろうか?
彼らは、フリーダヤのほうは円環大陸の中央にある神秘の永遠の国に所属の魔術師。
ロータスは完全フリーで、どの国や団体にも属さない。
どちらも冒険者登録をしているそうで、ランクは名誉あるSSSランクとのこと。
ということは、実力的には最高峰だ。かなりできると見た。
冒険者ランクはSSになると、そのとき滞在している国からの指定依頼を受ける義務が発生する。
たとえばギルマスのカラドンがそうだ。
ところが、更にひとつ上がって最高ランクのSSSになると、今度はどの国や団体にも縛られることがなくなる。
まさに、名誉ランクと言われる所以だ。
「やっと来てくれましたね、我が師たち。このままあたし一人で対処しなきゃならないのかって、冷や冷やしたわー!」
女魔法使いのハスミンは、二人が到着して大喜びしていた。
聞けば、ハスミンは彼らの弟子で、既に200年近く生きている魔力使いとのこと。
ギルド3階のギルマスの執務室に集められたところで明かされた真実に、さすがのルシウスも目を剥いていた。
「……ハスミンさんがこの人たちを呼んだの? もしかして、やたらと僕に構ってたのって……」
「そ。ルシウス君はすごく強いし、聖剣の持ち主だから、もしかしたらと思って。でもあなたはあたしより強いから、師匠にはなれないし」
「……僕、環使いになるのはイヤだなあ」
勝手に新世代の魔力使いからターゲットにされていたらしい。
勝手すぎる。何てことだ!
ちなみに、聖女ロータスから強引に『聖者覚醒』させられたルシウスは、フリーダヤとロータスペアを警戒して、二人とは慎重に距離を置いていた。
二人から環使いの修行をするよう言われたが、拒否している。
「あのね、僕の国ではあなたたちの使う環は要注意の術式に指定されてるんだ。民間はともかく、貴族の魔力使いに環使いはほとんどいないよ」
ルシウスの故郷、アケロニア王国は魔法魔術大国と呼ばれているが、旧世代の魔力使いたちの国だ。
新世代が使う環の使い手の数は少ない。
「僕の実家も魔法の大家だけど、もう何世代も前に環を扱うことはしないと決めているよ。……悪いけど、あんまり僕に関わってほしくないです」
「君のところでは、環についてどう聞いてるの?」
とは、若葉のような薄緑色の髪と瞳の魔術師フリーダヤだ。
およそ800年前に環を開発した当の本人である。
見た感じ、飄々とした、悪意を感じさせない優男だったが油断はできない。
どう聞いているも何も、環は新世代の魔力使いたちを象徴する唯一の術式で、概要だけなら魔力使いは誰でも知っている。
まず、旧世代が自分が本来持つ分や儀式、生贄からのみ調達できる魔力を、新世代の環使いたちは光の円環環を通して他者や外界といった世界から直接使うことができる。
ただし、調達できる魔力量は術者の力量や器次第なので、まったく訓練や努力が不要というわけではない。
環使いは、同じ系列に属していたり、親しい者同士なら、離れていても互いの環を通じて物品や情報のやり取りが可能である。
今、円環大陸の各国にある通信用の魔導具や、移動のための転移魔術陣は環使いたちが開発したものである。
そして、女魔法使いのハスミンがたまに使っているアイテムボックス機能が環にはある。
この、異次元空間に物品を収納する術式は、とうとう旧世代たちが開発できなかったもののひとつだ。
「うん。よく勉強してるね」
「こういうの、学校で習ったよ。それと注意事項もね」
環を使うためには、執着を落とす必要がある。
「その執着を落としすぎて、責任を放り出して家や国から出奔してしまう危険性がある。だから、王侯貴族制のアケロニア王国では環は推奨されてません!」
「やっぱり、そう言われてるかー」
「結婚前日に環に目覚めて、結婚相手を置き去りにして家を出てしまった人もいると聞いてるよ」
「あ、それは」
ルシウスの隣に立っていたハスミンが笑いを噛み殺している。
「そ、それ、それね、あたしのお姉様だわ。ガブリエラっていうの。結婚式の前日に我が師フリーダヤが家に来てね。お姉様を環使いに覚醒させて連れて行っちゃったのよね」
200年近く前の出来事だという。
「やっぱり要注意じゃない。結婚前日の花嫁が出奔するってどんだけなの?」
「まあ、あれにはいろいろあってね……」
「ちなみにお姉様に捨てられた相手は、後にあたしの旦那様になったの。結果オーライ!」
「ええええ。なにそれ?」
フリーダヤとハスミン師弟は互いに顔を合わせて苦笑いしている。
聖女のロータスは我関せずだ。
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「魚だ! 魚が来たぞー! 総員、戦闘配備!」
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