家出少年ルシウスNEXT~聖剣の少年魔法剣士、海辺の僻地ギルドで無双する

真義あさひ

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番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す

リストランテ・サルモーネ

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 リースト伯爵家が王都で開店しているレストランはリストランテ・サルモーネといった。
 サルモーネはサーモンのことで、鮭が名産のリースト伯爵領の名物料理を出す店だ。
 庶民でも背伸びすれば入れる程度の高級店で、王都の大通りから二本ほど裏手の商業区域にある。

「ゲンジと申します。短期間ですがお世話になります。雑用でも何でも遠慮なくお申し付けください」
「あはは、この人、調理スキルの特級ランクで飯ウマ持ちだから、いろいろ教えてもらって。さすがに臨時雇いじゃメインシェフにはできないけど、ゲストシェフやってもらうから」

(ぼ、坊主ううう!)

 目立たないように厨房の隅っこで芋の皮剥きでもしてようと思ったのに!
 本家の次男坊ルシウスの紹介でそうもいかなくなってしまった。

 そんなスペシャルな臨時料理人ゲンジがどうなったかといえば、試しにと作らされた賄い用のサーモンパイで元からの料理人やスタッフを美味に泣かせた結果、新メニュー開発を任されることになった。

「新メニューって。サーモン料理なら皆さんのほうが詳しいでしょうに」
「最近マンネリなんだよね。新しい風を入れたいというか」
「新しい風ですか……」

 実はリースト伯爵家のサーモンパイは既に完成された域に入っている料理で、あまり工夫の余地がない。
 多少、中身の鮭以外の具や、皿に添えるソースを変えるぐらいだった。
 というより、基本の塩胡椒で味付けした鮭の切り身を入れて焼いたパイを、赤ワインソースで食すベーシックタイプがなんだかんだいって一番美味いのである。

「俺の専門の味付けだと、バターの入ったパイ生地にはあんまり合わないんだよね」

 味噌や醤油、出汁などは鮭単体には相性が良いのだが、パイ生地と合わせると口の中で喧嘩してしまう。

 そうはいっても、料理人として古今東西の料理の基本知識は頭に入っている。
 要するに洋風料理の鮭ならば、まだ店で出していないサーモンパイに応用できそうな工夫がいくつかあった。



 まずはピザ風。
 中にピザ味のトマトソースで味付けしたフィリングを入れたパイなら、日本でも見たことがあった。街のパン屋でも売っている店があったはずだ。

 サーモンパイは小型の四角か三角の具を密閉した形で焼くことが多いので、基本の鮭にチーズを加えて焼き上げる。
 皿にシンプルなトマトソースを敷いて、ナイフで切り分けたとき“とろーり”とろけたチーズと鮭、パイ生地と一緒にトマトソースといただく。

「フレッシュチーズも、ハードチーズのも両方おいしい!」

 紹介者の責任を果たすためと言いながら、毎日ちゃっかり厨房での試食会にやってくるルシウスも大満足だったようだ。

「これはトマトソースも一緒に入れて焼かないのですか?」
「それもいいんだけど、ソースの水分が多いからね。パイの中がべちゃっとすると食感が悪くなるだろう?」
「ならソースをもっと煮詰めておくとか」
「全部パイの中に入れてもいいけど、料理のフォーマル度は下がるね。でも賄い用に作って後から冷めても美味いのはそっちのほうだろうね」
「ああ、ならテイクアウトを希望されたときにも応用がききますね」
「そうそう」

 あくまでも鮭が料理の主役なので、トマトソースはシンプルに皮剥きして種を除いてカットした生トマトを塩を足してフレッシュ感が残る程度に煮詰めるに留める。

「生鮭をスモークサーモンに変えても美味しいよね」

「「「それは絶対間違いないやつ!」」」

 ルシウスや厨房の皆さんの心が一つになった瞬間である。

 チーズ入りサーモンパイのトマトソース添えはその日のディナーのスペシャルメニューとして提供され、客たちの熱狂的な支持を得た。

 後日、ランチタイムにも食べられるリストランテ・サルモーネの定番メニューに採用されることになる。


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