212 / 217
【子爵少年ルシウスLEGEND】呪師の末裔
人を呪わば
しおりを挟む
グロリオーサ侯爵令息オネストの虐待事件は様々な方面と人々に波紋を広げた。
そしてここにも。
放課後、自宅に帰ってきたルシウスは、ふと思い出して自分のステータス画面を出してみた。
「あー。やっぱりステータスにスキルが増えてる。無欠スキルでオネスト君の〝呪術(返し)〟を習得しちゃったか」
この世界ではステータスオープン、と唱えると基本的なステータス画面が目の前に出現する。
ルシウスには〝無欠〟なる非常に珍しいスキルがある。
自分に使える・使えないを問わず、ありとあらゆるスキルを習得してしまう学習記憶型のレアスキルだ。
他者から教えてもらったものはもちろん、周囲の人々の持つスキルも自動的に習得する。
自分に適合するものならそのまま使えるし、体質や魔力の性質が合わないスキルなら非活性のまま保持できる。
自分が使えないスキルでも、他人に教えたり、直接的に伝授することが可能だった。
スキル欄の〝呪術(返し)〟をクリックすると、
『オネスト・グロリオーサから習得した特殊スキル。術者が受けた物理攻撃と同クオリティの体験を相手に〝返す〟形で現象化させる術。』
とある。
「嫌なことをされたら嫌なことを返す。良いことをされたら良いことを返す。ちゃんと裏表になってるね」
さらに詳しい解説もあった。
スキルの本来の持ち主オネストは、実母からベースとなる呪術スキルを受け継いでいる、との補足情報がある。
「………………オネスト君……」
多分、オネストの過酷な境遇は母親による〝呪術〟の結果だったのではないだろうか。
オネストの母親は、夫だった宰相から不貞を疑われる侮辱を受けている。
本人が恨んで呪いたかったのは、当然夫のほうだろう。
だが相手は一国の宰相だ。
国王を始めとした王族の側近筆頭ともなると、王族と同じで呪詛対策を行なっている。
具体的には対応する魔導具や護符を常に身に付けているし、公人として神殿主導で行われる祓いや浄化の儀式にも必ず参列している。
その宰相を呪えないなら、次に恨みの向かう先は実子のオネストしかいない。
「今日のおやつは何にしようかな~♪」
確か実家から兄のお嫁様が作って届けさせてくれたイチゴのパイがあったはず。
小型のホールのパイを四等分して、一切れを皿へ。残りは魔法樹脂に保存してまた後日。
ベリーの甘酸っぱさが紅茶に合う。イチゴは甘いものが苦手な兄も好きな果物なのだ。
オネストの実母は、夫だったユーゴス宰相を捨てた後、宰相からの謝罪も話し合いも拒絶して一方的に離婚届を突きつけている。
その後は腹いせで宰相の政敵派閥の貴族と再婚しているから、恨みは相当なものだ。
「僕の〝聖剣の審判〟でオネスト君と宰相への呪詛は断ち切ったけど」
オネストの境遇を見る限り、実母の呪詛はオネストが使った〝返し〟のような、等しい価値の攻撃を返すものではない。
ガチの呪術だ。本気で相手を破滅させる気で行っていると見た。
虐待とて、普通なら周囲の良識ある人々が気づいて救い出せる環境のはずなのにほとんど誰も動いてない。
悪意ある呪術はこうして社会的な常識を歪める作用を持つものが多い。
今回、解決に向かったのは、聖なる魔力を持つルシウスが関わったことがまずひとつ。
あとはクラスが最優秀のA組だったのが良かった。
ボナンザを始めとした、能力的にも、人格的にも優れた者が集まるクラスだった。人間としてバランスが取れた者たちはそれだけで邪悪な術に強い。
(最初の担任だけが惜しかったよね)
新たな担任は学園長のエルフィンだ。
あの美人な先生はハーフエルフで見た目よりずっと長生きで、アケロニア王国の教育者のトップ。
ルシウスは年上の兄も同じ学園生だったから、彼のことはよく知っている。
美しい外見に似合わず熱血教師で面倒見が良い。
彼が担任でいてくれる今年は、きっと良い一年になると思う。
それにしても「呪術か」とルシウスは呟いた。
「どうせやるなら、宰相にやればいいのに。本気でやれば少しぐらいダメージも通ったと思うんだよね」
ルシウスから見て、いくら何でもオネストの状況は酷すぎた。やりすきだ。
聖剣の聖なる魔力によって断ち切られた悪意ある呪術は、術者本人へと〝返った〟ことだろう。
「一応、宰相のやつに報告しておくか。オネスト君の母親のその後を調べさせたほうがいいよね」
おやつの後で、その日のうちにユーゴス宰相宛に手紙を書いて最寄りの郵便局から発送した。
速達で出したから今日中に届いて、宰相もすぐに動くだろう。
郵便局からの帰りに夕飯用のパンや食材を買って戻ってくると、実家から手紙が届いていた。
「お。『友達を連れて週末、食事に来なさい』だって」
今年、爵位を継承したばかりの兄からではない。
前伯爵にあたる父のメガエリスからだ。
「てことは、オネスト君を連れて来いってことだよね。せっかくだしボナンザ君も誘ってみよう」
ルシウスの父は、オネストの父のユーゴス宰相とは仲が悪い。
それでも学生時代は同級生。腐れ縁の悪友のようなものだと聞いている。
宰相は当時も今も、ルシウスの父メガエリスのファンで、ファンクラブ会長をずっと務めているそうで。
まんま、ルシウスとオネストのような関係なわけだ。
(オネスト君は宰相みたいなツンデレになりませんよーに!)
そんなルシウスとオネストとの関係は、紆余曲折ありながらも生涯続くことになる。
そしてここにも。
放課後、自宅に帰ってきたルシウスは、ふと思い出して自分のステータス画面を出してみた。
「あー。やっぱりステータスにスキルが増えてる。無欠スキルでオネスト君の〝呪術(返し)〟を習得しちゃったか」
この世界ではステータスオープン、と唱えると基本的なステータス画面が目の前に出現する。
ルシウスには〝無欠〟なる非常に珍しいスキルがある。
自分に使える・使えないを問わず、ありとあらゆるスキルを習得してしまう学習記憶型のレアスキルだ。
他者から教えてもらったものはもちろん、周囲の人々の持つスキルも自動的に習得する。
自分に適合するものならそのまま使えるし、体質や魔力の性質が合わないスキルなら非活性のまま保持できる。
自分が使えないスキルでも、他人に教えたり、直接的に伝授することが可能だった。
スキル欄の〝呪術(返し)〟をクリックすると、
『オネスト・グロリオーサから習得した特殊スキル。術者が受けた物理攻撃と同クオリティの体験を相手に〝返す〟形で現象化させる術。』
とある。
「嫌なことをされたら嫌なことを返す。良いことをされたら良いことを返す。ちゃんと裏表になってるね」
さらに詳しい解説もあった。
スキルの本来の持ち主オネストは、実母からベースとなる呪術スキルを受け継いでいる、との補足情報がある。
「………………オネスト君……」
多分、オネストの過酷な境遇は母親による〝呪術〟の結果だったのではないだろうか。
オネストの母親は、夫だった宰相から不貞を疑われる侮辱を受けている。
本人が恨んで呪いたかったのは、当然夫のほうだろう。
だが相手は一国の宰相だ。
国王を始めとした王族の側近筆頭ともなると、王族と同じで呪詛対策を行なっている。
具体的には対応する魔導具や護符を常に身に付けているし、公人として神殿主導で行われる祓いや浄化の儀式にも必ず参列している。
その宰相を呪えないなら、次に恨みの向かう先は実子のオネストしかいない。
「今日のおやつは何にしようかな~♪」
確か実家から兄のお嫁様が作って届けさせてくれたイチゴのパイがあったはず。
小型のホールのパイを四等分して、一切れを皿へ。残りは魔法樹脂に保存してまた後日。
ベリーの甘酸っぱさが紅茶に合う。イチゴは甘いものが苦手な兄も好きな果物なのだ。
オネストの実母は、夫だったユーゴス宰相を捨てた後、宰相からの謝罪も話し合いも拒絶して一方的に離婚届を突きつけている。
その後は腹いせで宰相の政敵派閥の貴族と再婚しているから、恨みは相当なものだ。
「僕の〝聖剣の審判〟でオネスト君と宰相への呪詛は断ち切ったけど」
オネストの境遇を見る限り、実母の呪詛はオネストが使った〝返し〟のような、等しい価値の攻撃を返すものではない。
ガチの呪術だ。本気で相手を破滅させる気で行っていると見た。
虐待とて、普通なら周囲の良識ある人々が気づいて救い出せる環境のはずなのにほとんど誰も動いてない。
悪意ある呪術はこうして社会的な常識を歪める作用を持つものが多い。
今回、解決に向かったのは、聖なる魔力を持つルシウスが関わったことがまずひとつ。
あとはクラスが最優秀のA組だったのが良かった。
ボナンザを始めとした、能力的にも、人格的にも優れた者が集まるクラスだった。人間としてバランスが取れた者たちはそれだけで邪悪な術に強い。
(最初の担任だけが惜しかったよね)
新たな担任は学園長のエルフィンだ。
あの美人な先生はハーフエルフで見た目よりずっと長生きで、アケロニア王国の教育者のトップ。
ルシウスは年上の兄も同じ学園生だったから、彼のことはよく知っている。
美しい外見に似合わず熱血教師で面倒見が良い。
彼が担任でいてくれる今年は、きっと良い一年になると思う。
それにしても「呪術か」とルシウスは呟いた。
「どうせやるなら、宰相にやればいいのに。本気でやれば少しぐらいダメージも通ったと思うんだよね」
ルシウスから見て、いくら何でもオネストの状況は酷すぎた。やりすきだ。
聖剣の聖なる魔力によって断ち切られた悪意ある呪術は、術者本人へと〝返った〟ことだろう。
「一応、宰相のやつに報告しておくか。オネスト君の母親のその後を調べさせたほうがいいよね」
おやつの後で、その日のうちにユーゴス宰相宛に手紙を書いて最寄りの郵便局から発送した。
速達で出したから今日中に届いて、宰相もすぐに動くだろう。
郵便局からの帰りに夕飯用のパンや食材を買って戻ってくると、実家から手紙が届いていた。
「お。『友達を連れて週末、食事に来なさい』だって」
今年、爵位を継承したばかりの兄からではない。
前伯爵にあたる父のメガエリスからだ。
「てことは、オネスト君を連れて来いってことだよね。せっかくだしボナンザ君も誘ってみよう」
ルシウスの父は、オネストの父のユーゴス宰相とは仲が悪い。
それでも学生時代は同級生。腐れ縁の悪友のようなものだと聞いている。
宰相は当時も今も、ルシウスの父メガエリスのファンで、ファンクラブ会長をずっと務めているそうで。
まんま、ルシウスとオネストのような関係なわけだ。
(オネスト君は宰相みたいなツンデレになりませんよーに!)
そんなルシウスとオネストとの関係は、紆余曲折ありながらも生涯続くことになる。
22
あなたにおすすめの小説
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる