異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
3 / 216
第一章 異世界転移、村ごと!

俺、彼女に振られる

しおりを挟む

 その後、営業部に戻ると先に戻っていた上司から「もう今日は帰っていいよ」と野良犬でも追い払うような仕草で言われ、居た堪れない気持ちで退社した。

 落ち込んだ気分のまま、スマホで同じ会社に勤めてる彼女にアプリからメッセージを送った。
 元々今日はゴールデンウィークの予定を聞きたかったのもあった。
 ……本当ならコンペ優勝したぜって堂々と賞金で旅行に誘いたかったんだが……
 愚痴を聞いてもらうしかない。

 だが、会社のある新橋からの帰り道、いつも使う彼女お気に入りの銀座の洒落たカフェで、更なる試練が俺を襲った。

「コンペの話聞いたよ、ユウキ君。残念だったね」
「あ、ああ。だが聞いて欲しいんだ穂波。あの八十神の野郎が」

 俺の企画をパクったんだ、と言おうとしたところで。

「そのことなんだけど。ユウキ君、ごめん。別れてほしいの」

 女性向けの高級ブランド風の襟のないツイードのピンクのジャケットスーツを着た彼女、穂波は今日も可愛かった。内巻きにした艶のある焦茶に染めたショートボブのヘアスタイルがよく似合ってる。

 何より青森出身の彼女は色白で巨乳だ。そこが良い。

 その彼女の口から、まさかの。まさかの別れの言葉が!?

 しん、とカフェ店内が静まり返った。銀座に似つかわしくない流行りのJ-POPだけが流れている。
 うぐ。周りの客たちが皆、こちらに聞き耳を立ててるじゃないか。

「実はね。この前、八十神さんから私、告白されて」
「まさか俺とあいつで二股かけてたのか!?」
「違うわ! 私そんなふしだらな女じゃない!」
「だ、だよな」

 と胸を撫で下ろすのはまだ早かった。

「でも私、ずっと八十神さんに憧れてて……。あの人仕事もできるしいつも髪も決まってるしメンズブランドのセカンドバッグ持ってるとこお洒落だなって。今回ついにコンペで優勝もしたって聞いて、私……お付き合いしたいと思ったの。だからごめんなさい。私と別れてください」

 言って穂波が深々と頭を下げた。

「嘘……だよな?」
「ううん。本当。八十神さんにはユウキ君と別れてからお返事しますって言ってあるの。だからちゃんとあなたとキレイに別れたい。あなたには悪いと思うけど筋を通したいの」
「筋、か……まあ、そうだよな……」

 正直、俺の穂波は可愛い。俺の三つ下の二十五歳、ちょっとセレブ生活に憧れすぎなのが玉に瑕なぐらいで、社内でも狙ってた男が多いのは知っていた。
 だからめちゃくちゃ男どもを牽制して守ってたのに、よりによってあの八十神か! あのスカしたイケメン野郎か! どこが良かったんだ、やはりあの生意気なブランドスーツか……!

「……わかった。でも八十神は」
「ありがとう! じゃあこの後、八十神さんと待ち合わせしてるのでもう行くね!」
「え、ちょ、穂波!」

 呆気に取られる俺に構わず、ブランド物のバッグを持って穂波はそのままカフェを出て行った。
 テーブルの上には広げたままのメニューが。――俺たちはまだコーヒーの注文すらしていなかったのだ。

 穂波を引き留めようと伸ばした俺の腕も空振りして、行き場を失った。
 店内の他の客たちや店員も微妙そうな顔でこちらに注目していた。
 銀座の路面店だから店内は客席が詰めてあって、会話は周りに筒抜け。もう、俺は穴があったら入りたい気分だった。

 流れていたJ-POPもちょうど曲の切れ目だった。
 俺たちカップルの破局を目の当たりにして、しーんと静まり返っていた店内に少しずつ他の客たちの雑談が戻ってきたところで。

 次に流れてきたJ-POPがヤバかった。

 なんで。
 なんで。

『夢オチだったら良かったよね』的な歌詞で始まるメランコリックな曲が流れるかなーーーーー!!

 ざわ、と店内が騒然とした。
 そうだ、数年前にヒットチャート一位を独占して話題になったドラマの主題歌だ。俺のスマホにだってダウンロードして入っている!

 ほんと夢だったら良かったな……現実だよこんちくしょう……!

 俺は彼女に振られて青ざめるやら、空気を読んだかのような曲のタイミングの良さに恥ずかしくなるやらでパニックに陥った。

 これはダメだ。本当にいかん。
 なんかこう男の沽券とかプライドとか自尊心とかそんな感じのものが木っ端微塵だ。

 無言で席を立った。お冷やを先に持って来てくれてた店員と目が合う。気の毒そうな顔で小さく頷いてくれた。申し訳ないが店を出よう。

「……えっ?」

 とそこへスーツの腕を掴んでくる手があった。
 そんなに強い力じゃない。隣の席に座ってた品の良い初老のマダムだ。

「あ、あの?」
「気を落とさないでね。あなた、いい男だからすぐ次が見つかるわよ」

 言って、マダムが手の中に何かを握らせてくれた。
 恐る恐る手を開いてみると、そこにはこのカフェ――この店はショコラティエ併設のカフェなのだ――のトリュフチョコレートの包みが一つ。

「………………っ。ありがとう、ございます……!」

 ここのショコラは無茶苦茶にお高いのだ。このトリュフだって一粒ワンコイン以上する。
 俺は銀座マダムの思いやりに涙を滲ませながら、カフェを後にした――。


しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...