異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
23 / 216
第一章 異世界転移、村ごと!

俺、あの野郎に脅しをかけて終わりにした(つもり) ※ざまぁフラグ回

しおりを挟む

 男爵の屋敷に戻る頃には陽も暮れていた。
 夕食の時間までまだあるそうなので、ピナレラちゃんと別れて客間で改めてスマホを確認することにした。

「……やっぱり。メールやメッセージアプリもふつうに受信してるな……」

 俺のスマホには元職場の人間からのメールや、親しかった人たちや友人たちからはアプリ宛のメッセージがぽつぽつ届いていた。

「ん? 鈴木からメッセージは珍しいな」

 鈴木は同じ大学の後輩だ。去年の新卒でまだ若いが、俺が辞めるまでは部署も同じ営業部だったので面倒を見ていた。
 今どきっ子の筆無精というかダウナー系の面倒くさがりでメッセージアプリでもスタンプ一つで会話を済ませるし、既読スルーも平気でかます男だったはず。
 ところがそのメッセージはいつもの短文か顔文字かスタンプだけで済ませる男とは思えないほど、長文だった。

「八十神、あの野郎……俺が辞めた後も好き勝手やってるのか」

 鈴木からのメッセージは、コンペ優勝後の八十神の快進撃と、元カノ穂波との社内での仲良しぶり、そして俺のあることないことを広めていることが書かれていた。
 鈴木は俺を心配して気にかけてくれているようだ。

『彼の行動は明らかにユウキ先輩への名誉毀損です。正直ろくでもねえって思います』

「くそ。元の世界にいたなら殴り込みに行ってやったのに」

 すぐ鈴木に返信したが、いつになっても既読が付かない。
 何度か繰り返してみた。これはスルーされたというより、電波状態が不安定で相手方にメッセージが届いてないらしい。
 仕方ない、これは何度か再送信を繰り返してみよう。

「……スマホもネットも一応使えるが、信頼性は低い、か」

 客間の椅子にもたれかかり、溜め息を吐いた。
 まだ晩飯まで時間がかかりそうだ。ピナレラちゃんは帰宅後すぐ屋敷のお手伝いを始めてしまったし。
 手伝いが必要か尋ねたが、「おきゃくさんはやすんでなきゃなの!」と言われた。

 だから、スマホを充電しながらインターネットで時間を潰すことにした。

 このときの俺はまだ異世界転移という非日常に浮かれていた。
 だから元の世界でもなか村が消失して大騒ぎになってることも知らず、学生時代の友人たちと遊んでた頃の気分でネット掲示板に「村ごと異世界転移したけど質問ある?」というスレッドを立ててしまった。
 このスレは意外と反響があり、時々スマホでチェックするのが楽しみになっていた。



 そして約二十分後、ピナレラちゃんが食事の用意ができたことを知らせに来た。

「おにいちゃ! ごはんだよ! きょうはごちそう!」
「あんがとう」

 すぐにピャーッと走り去ったピナレラちゃん。まだまだ子供らしい野性味が残っていて、めんこいべさ。

「もう今日はスマホはやめようかな」と思ってバッテリーを長持ちさせるためにスマホを切ろうとした瞬間、ふとメッセージアプリを開いた。

「八十神君。こんなに距離があるのにお互いスマホで繋がってるなんてね。フレンドだぜ、フレンド!」

 実はノリと勢いで退職してしまった俺だが、その直後から考えてたことがある。

 八十神は俺のコンペ企画書を、いつ、どこで、どうやって盗んだんだろうか?
 俺はデスク周りにメモをあちこち書き散らすタイプで、会社から貸与されてたパソコンのIDとパスワードもデスクマットの中に入れていた。元々会社のパソコンには大したデータは入れてなかったし企画書データは唯一の例外だった。
 退職時にはそのメモはすべて処分し、パソコンもシステム部に初期化してもらったが……

 八十神は間違いなく、その俺のIDとパスワードでデスクのパソコンにログインし、保存してあった企画書を盗んだに違いない。
 コンペでのあいつのプレゼンは、単なるメモからでは作れるものではなかった。根本にはパソコンに保存されていた俺の企画書があった。

「あの野郎。意識高い系気取ってタブレット持ち歩いてるくせに、ITには詳しくなかったはずだ」

 俺も長年のパソコンとスマホのユーザーだ。小学生の頃からアメリカのフルーツマークの製品を使い続けている。情報処理の資格こそ取っていなかったが、会社で使う情報システムについては一般人以上に知識があった。

 コンペの日、何日もかけて完成させた企画書データが消えてしまい、俺はパニックになった。
 だが、肝心なことを忘れていた。データはパソコンのハードディスクにあったわけではなく、社内ネットワーク上の個人用ストレージに保存されていたのだ。

「つまり、いつパソコンにログインして、ストレージのデータにアクセスしたり削除したりしたかの記録は、システム部に行けば確認できたはずなんだ」

 なのに俺ときたら必死に間に合わせの資料で企画書を作り上げて、結果はズタボロの惨敗。プレゼンすらできなかった負け犬だ。

 システム部は定期的にデータのバックアップを取っているので、そのバックアップから企画書を復元できたかもしれない。しかし、それに気づいたのは退職後、もなか村に帰った後。もう手遅れになってからだった。


 八十神へ俺は二つのメッセージを送った。最初のメッセージは。

『お前の悪事は必ずバレる。
 俺のIDとパスワードで不法ログインして企画書データを盗み、証拠隠滅のためにデータを削除したことを知っている。』

 二通目。

『俺が辞めたからって、お前の罪が消えるわけじゃない。くたばれ、パクり野郎』

 ネットの接続が不安定で、このメッセージが八十神に届いたかは定かでない。
 俺はこのメッセージを送った後、八十神のアドレスをブロックし、削除した。


しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...