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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、田んぼや畑はどうしよう?
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異世界で目覚めた翌日も朝食と昼食を男爵の家で世話になり。
午後に俺とばあちゃんは生活に必要な魔石を譲り受けて、住み慣れたもなか村の自宅へと戻った。
――ピナレラちゃんを連れて。
ど田舎村ではピナレラちゃんを持て余していたと、男爵がこっそり教えてくれたのだ。
邪魔者扱いしていたわけじゃない。単純に、まだ四歳で元気いっぱい遊びたい盛りのピナレラちゃんを、高齢者が大半の限界集落では扱いきれなかったのだ。
そこに飛んで火に入る夏の虫……じゃなくてまだギリギリ二十代の俺。わかった。ちゃんとピナレラちゃんをお世話させてもらうよ!
「おっせわーおっせわー。ピナレラ、おにいちゃとおばあちゃのおせわするー♪」
独特のメロディで即興の歌を歌いながら、ばあちゃんと手を繋ぐピナレラちゃん。いやほんとめんこいわ。ばあちゃんもずっとニコニコしている。
「ユキちゃん。こんでうちも賑やかになるなあ」
ばあちゃんが嬉しそう笑った。んだな。部屋なら余っとるし。
ピナレラちゃんの荷物は普段着と少しの雑貨、亡くなったご両親の形見のおもちゃがいくつか。昨日家から生モノを持ってくるのに使ったクーラーボックスと一緒に、また村役場からカートを借りて俺が押して歩いている。
帰宅後、ピナレラちゃんに家の中を案内して回った。
ばあちゃんちは平屋の5LDKだ。建物の中は居間を含む五つの部屋と、台所。俺は玄関近くの部屋。ばあちゃんは居間の隣。
一応客間にあたるばあちゃんの部屋の隣の一番奥の部屋をピナレラちゃんの部屋にしたが、見てるとあまり部屋にこもってるタイプでもないし。
元々俺もばあちゃんも大抵のことは居間のちゃぶ台の前に座ってやっていたから、ピナレラちゃんも一緒だな。
「わあ! ふかふか!」
ピナレラちゃん用に押し入れから予備の新しい座布団を出してきた。ぶ厚くて綿のたっぷり入った座布団にご満悦だ。うむ。はしゃぐ姿がめんこいなや。
家のことはひとまず問題ない。
トイレもばあちゃんちは元々汲み取り式のボットン便所だったのをもう随分前にコンポストトイレに変更してある。
コンポストトイレはいわゆるバイオトイレの一種だ。糞尿を微生物の力で分解して堆肥にして、少量の土として簡単に処分できる。
月に一度自分たちで取り出す必要があるが、微生物様のお陰でトイレ特有の臭いがほとんど無く衛生的だった。被災地でもこのタイプのトイレがよく使われていると聞く。
ばあちゃんちのは海外から取り寄せたもので、見た目はふつうの水洗用の洋式トイレと変わらないし、手入れも簡単である。
問題は今の日本の建築基準法だと許可が降りないことなんだが、もなか村は元の汲み取り式トイレに多少工夫しただけと誤魔化していたとかなんとか。
……まあ村ぐるみで廃村回避のため隠蔽工作してたぐらいだ、そのぐらい屁でもないだろうな。
男爵の屋敷にあったトイレも似た構造だったので、この異世界はやはり文明が進んでいると見た。
あとは、ばあちゃんちを始めとした田畑なんだが……
俺たち四人以外の、つまりもなか村の住民以外はほとんどが隣町から毎日村に出勤して、村役場の職員や農業に従事していたと村長が言っていた。
彼らのいない田畑はさすがに俺たちだけじゃ手が回らない。収穫できるものはして、あとは荒れるに任せるか、それともど田舎村の薬草に植え替えていくか。こうなると大型の家畜がいなかったのが幸いだな……
「あれ? このはっぱ、おこめ?」
「うん。美味しいよ」
昼間のうちに、ばあちゃんとピナレラちゃんと一緒に自分ちの田畑を見て回った。
うちは『御米田』の苗字の通り元々米農家だ。けどじいちゃんが亡くなってからは大幅に減反して、長男家族である俺と両親が東京に行ってからはばあちゃん一人で手入れできる分しか残していない。
稲作は特に田植えも収穫もトラクターがなきゃ話にならん。ばあちゃんは免許を持ってないからどっちのときも村内の他の田んぼの持ち主から借りていたらしい……ってその相手は転移してきてないじゃないか!?
村の備蓄の軽油が切れたらトラクターも動かなくなる。やはりほとんどの田んぼは諦めるしかないか……
ところが心配は杞憂だった。ここは文明の遅れた古代や中世とはわけが違う。
後日、男爵に田畑のことを相談すると。収穫は魔力持ちがいれば簡単にできるし、村人たちも収穫物の売却益の分け前を貰えるなら手伝ってくれるそうだ。
さ、さすが優しいほうの異世界転移……!
ただ、収穫して次に植える種や苗がないので、その後はやはりど田舎村特産の薬草に植え替えていくことになりそうだった。
午後に俺とばあちゃんは生活に必要な魔石を譲り受けて、住み慣れたもなか村の自宅へと戻った。
――ピナレラちゃんを連れて。
ど田舎村ではピナレラちゃんを持て余していたと、男爵がこっそり教えてくれたのだ。
邪魔者扱いしていたわけじゃない。単純に、まだ四歳で元気いっぱい遊びたい盛りのピナレラちゃんを、高齢者が大半の限界集落では扱いきれなかったのだ。
そこに飛んで火に入る夏の虫……じゃなくてまだギリギリ二十代の俺。わかった。ちゃんとピナレラちゃんをお世話させてもらうよ!
「おっせわーおっせわー。ピナレラ、おにいちゃとおばあちゃのおせわするー♪」
独特のメロディで即興の歌を歌いながら、ばあちゃんと手を繋ぐピナレラちゃん。いやほんとめんこいわ。ばあちゃんもずっとニコニコしている。
「ユキちゃん。こんでうちも賑やかになるなあ」
ばあちゃんが嬉しそう笑った。んだな。部屋なら余っとるし。
ピナレラちゃんの荷物は普段着と少しの雑貨、亡くなったご両親の形見のおもちゃがいくつか。昨日家から生モノを持ってくるのに使ったクーラーボックスと一緒に、また村役場からカートを借りて俺が押して歩いている。
帰宅後、ピナレラちゃんに家の中を案内して回った。
ばあちゃんちは平屋の5LDKだ。建物の中は居間を含む五つの部屋と、台所。俺は玄関近くの部屋。ばあちゃんは居間の隣。
一応客間にあたるばあちゃんの部屋の隣の一番奥の部屋をピナレラちゃんの部屋にしたが、見てるとあまり部屋にこもってるタイプでもないし。
元々俺もばあちゃんも大抵のことは居間のちゃぶ台の前に座ってやっていたから、ピナレラちゃんも一緒だな。
「わあ! ふかふか!」
ピナレラちゃん用に押し入れから予備の新しい座布団を出してきた。ぶ厚くて綿のたっぷり入った座布団にご満悦だ。うむ。はしゃぐ姿がめんこいなや。
家のことはひとまず問題ない。
トイレもばあちゃんちは元々汲み取り式のボットン便所だったのをもう随分前にコンポストトイレに変更してある。
コンポストトイレはいわゆるバイオトイレの一種だ。糞尿を微生物の力で分解して堆肥にして、少量の土として簡単に処分できる。
月に一度自分たちで取り出す必要があるが、微生物様のお陰でトイレ特有の臭いがほとんど無く衛生的だった。被災地でもこのタイプのトイレがよく使われていると聞く。
ばあちゃんちのは海外から取り寄せたもので、見た目はふつうの水洗用の洋式トイレと変わらないし、手入れも簡単である。
問題は今の日本の建築基準法だと許可が降りないことなんだが、もなか村は元の汲み取り式トイレに多少工夫しただけと誤魔化していたとかなんとか。
……まあ村ぐるみで廃村回避のため隠蔽工作してたぐらいだ、そのぐらい屁でもないだろうな。
男爵の屋敷にあったトイレも似た構造だったので、この異世界はやはり文明が進んでいると見た。
あとは、ばあちゃんちを始めとした田畑なんだが……
俺たち四人以外の、つまりもなか村の住民以外はほとんどが隣町から毎日村に出勤して、村役場の職員や農業に従事していたと村長が言っていた。
彼らのいない田畑はさすがに俺たちだけじゃ手が回らない。収穫できるものはして、あとは荒れるに任せるか、それともど田舎村の薬草に植え替えていくか。こうなると大型の家畜がいなかったのが幸いだな……
「あれ? このはっぱ、おこめ?」
「うん。美味しいよ」
昼間のうちに、ばあちゃんとピナレラちゃんと一緒に自分ちの田畑を見て回った。
うちは『御米田』の苗字の通り元々米農家だ。けどじいちゃんが亡くなってからは大幅に減反して、長男家族である俺と両親が東京に行ってからはばあちゃん一人で手入れできる分しか残していない。
稲作は特に田植えも収穫もトラクターがなきゃ話にならん。ばあちゃんは免許を持ってないからどっちのときも村内の他の田んぼの持ち主から借りていたらしい……ってその相手は転移してきてないじゃないか!?
村の備蓄の軽油が切れたらトラクターも動かなくなる。やはりほとんどの田んぼは諦めるしかないか……
ところが心配は杞憂だった。ここは文明の遅れた古代や中世とはわけが違う。
後日、男爵に田畑のことを相談すると。収穫は魔力持ちがいれば簡単にできるし、村人たちも収穫物の売却益の分け前を貰えるなら手伝ってくれるそうだ。
さ、さすが優しいほうの異世界転移……!
ただ、収穫して次に植える種や苗がないので、その後はやはりど田舎村特産の薬草に植え替えていくことになりそうだった。
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