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ユーグレン究極の選択
未来でも発行していた
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「……プッ。おいユーグレン。あの生意気な甥っ子のファンクラブ会報、この時代でも発行が続いてるようだぞ?」
ジューアが棚の一角を指さして小さく吹き出している。
学生時代のように毎月や隔月は無理だったようだが、バックナンバーの号数を見ると年に一冊は発行しているようだった。
最新号を取り出して中を軽く眺めてみる。
写真を使ったカラー印刷で、カーナ神国の宰相様がウルトラマリンカラーの軍服姿で麗しく微笑んでいる。
肩には傲岸不遜なウパルパが得意げな顔で乗っている。
「そうか。ヨシュアはカーナ神国の宰相のままか。カズンは……」
とカズンこと『アルトレイ女大公子息カズン』の資料ファイルを開いた。
残念ながらこの部屋にある資料だけでは、カズンは父親ヴァシレウス大王の仇を討てたのかどうかわからなかった。
代わりにファイリングされていたのは未来の今の彼の足跡だ。まだアケロニアの王族籍にあるようだが帰国しておらず、そのまま冒険者として円環大陸を巡っているようだ。
再び国王の日記に戻って、ヨシュアとカズンの名前があるページだけを斜め読みする。
どうやらあの二人には数年に一度会えれば良いほうらしい。
だが三人全員が環使いなこともあって、環を通じて手紙や物品のやりとりは頻繁に続いているようだった。
それから十年刻みで神人ジューアの先導で夢見の世界を未来に向かって繰り返し移動した。
場所はどの時期でも必ず国内、王都を指定だ。
未来の時間軸に移動するたびに街に活気が増え、雰囲気が明るくなっている。
神人ピアディの託宣が思い出される。
『ぷぅ(愛を得られぬ代わりに、きさまが王となったあかつきには、玉座にある限り名君として讃えられ国はきわめて繁栄するであろう!)』
「己の治世が豊かである。これほどの未来が保証されるとは、何と……何と素晴らしいことでしょう」
街を歩いて、民たちが皆明るく元気な様子に感激しながら、傍らの神人ジューアに向けて感嘆の感想を漏らした。
「おい、肝心なことを忘れておるぞ。『玉座に在る限り』で、ついでに『愛は得られない』」
「……うっ。………………愛さえあれば完璧なのに」
街角の新聞社前で販売員が号外を配っている。
通りすがりに一枚失敬してみると、『ユーグレン国王陛下在位四十周年記念』とある。
「まだ国王のままなのか。息子に譲位は……」
「できぬだろう。何せ繁栄の条件がお前が『玉座に在る限り』だからな」
「……ですよね」
実際、何度か確認したが未来のユーグレンは一日の大半を玉座の間で過ごしている。
書類の確認も日々の食事も玉座に座りながらこなしているようだった。
ついでにいえば、ほとんど王都の王宮からも出ない。出るときは転移用の魔導具が使えるときか、空間転移術の使い手が確保できて日帰りで戻って来れる案件に限られている。
代わりに二人いる子供のうち王太子になった王子が国内視察と外交を一手に担っているらしい。
在位四十年でもまだまだ〝ユーグレン国王〟は壮健でしばらく死にそうもない。
強い女性たちに振り回されながら、いや上手く手のひらで転がされながら、ユーグレン国王の治世は極めて豊かに繁栄を享受した。
「ならば戻るか。『夢の世界から覚める!』」
ジューアが棚の一角を指さして小さく吹き出している。
学生時代のように毎月や隔月は無理だったようだが、バックナンバーの号数を見ると年に一冊は発行しているようだった。
最新号を取り出して中を軽く眺めてみる。
写真を使ったカラー印刷で、カーナ神国の宰相様がウルトラマリンカラーの軍服姿で麗しく微笑んでいる。
肩には傲岸不遜なウパルパが得意げな顔で乗っている。
「そうか。ヨシュアはカーナ神国の宰相のままか。カズンは……」
とカズンこと『アルトレイ女大公子息カズン』の資料ファイルを開いた。
残念ながらこの部屋にある資料だけでは、カズンは父親ヴァシレウス大王の仇を討てたのかどうかわからなかった。
代わりにファイリングされていたのは未来の今の彼の足跡だ。まだアケロニアの王族籍にあるようだが帰国しておらず、そのまま冒険者として円環大陸を巡っているようだ。
再び国王の日記に戻って、ヨシュアとカズンの名前があるページだけを斜め読みする。
どうやらあの二人には数年に一度会えれば良いほうらしい。
だが三人全員が環使いなこともあって、環を通じて手紙や物品のやりとりは頻繁に続いているようだった。
それから十年刻みで神人ジューアの先導で夢見の世界を未来に向かって繰り返し移動した。
場所はどの時期でも必ず国内、王都を指定だ。
未来の時間軸に移動するたびに街に活気が増え、雰囲気が明るくなっている。
神人ピアディの託宣が思い出される。
『ぷぅ(愛を得られぬ代わりに、きさまが王となったあかつきには、玉座にある限り名君として讃えられ国はきわめて繁栄するであろう!)』
「己の治世が豊かである。これほどの未来が保証されるとは、何と……何と素晴らしいことでしょう」
街を歩いて、民たちが皆明るく元気な様子に感激しながら、傍らの神人ジューアに向けて感嘆の感想を漏らした。
「おい、肝心なことを忘れておるぞ。『玉座に在る限り』で、ついでに『愛は得られない』」
「……うっ。………………愛さえあれば完璧なのに」
街角の新聞社前で販売員が号外を配っている。
通りすがりに一枚失敬してみると、『ユーグレン国王陛下在位四十周年記念』とある。
「まだ国王のままなのか。息子に譲位は……」
「できぬだろう。何せ繁栄の条件がお前が『玉座に在る限り』だからな」
「……ですよね」
実際、何度か確認したが未来のユーグレンは一日の大半を玉座の間で過ごしている。
書類の確認も日々の食事も玉座に座りながらこなしているようだった。
ついでにいえば、ほとんど王都の王宮からも出ない。出るときは転移用の魔導具が使えるときか、空間転移術の使い手が確保できて日帰りで戻って来れる案件に限られている。
代わりに二人いる子供のうち王太子になった王子が国内視察と外交を一手に担っているらしい。
在位四十年でもまだまだ〝ユーグレン国王〟は壮健でしばらく死にそうもない。
強い女性たちに振り回されながら、いや上手く手のひらで転がされながら、ユーグレン国王の治世は極めて豊かに繁栄を享受した。
「ならば戻るか。『夢の世界から覚める!』」
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