21 / 66
「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
父親の責任を問う
しおりを挟む
「待て。解散の前に明らかにすべきことがある」
張りのあるバリトンの声が教会内に響いた。
隣国カルダーナ国王の弟、セドリックだ。
「ま、まさか隣国の王弟殿下では?」
「婚儀に参列していたのか……」
セドリックはこの国の学園に留学していたから顔と名前だけは知られている。
「その新郎の男、ひと月前から新婦の実家に滞在していたと聞いている。ならば昨晩から今日にかけて、隣の女と不貞行為を犯したのは伯爵家の本邸のはず」
(まあそうよね。私たちその現場を目撃したしね)
彼、隣国王弟のセドリックが厳しい性格なのは国内貴族なら大体知っている。
彼を育てた隣国王姉からしてマナーに厳しい女性だったので、近い世代の者ほど詳しかった。
「なぜ、花嫁の父たる伯爵代理が把握していなかった? これは新婦の父親の監督責任も追求せねばなるまい」
ざわ、と会場内がざわついた。
(ここでこういう正論を言っちゃうのがセドリックなのよね)
「ま、待て、駄目だ、このままだと……」
「お父様?」
花婿に花嫁を託す役割のため、父テレンスはずっとエスティアの隣にいた。
その父はセドリックの糾弾に青ざめて震えている。
「皆も知っておろう。先代の女伯爵カタリナ様は聖女だった。その娘のエスティアも聖女である。にも関わらず自分の娘の婚約者が、まさか婚儀の当日に不貞行為を犯す不埒者とは」
「私からこの国の国王に、伯爵家の念入りな調査を行うよう口添えしておこう」
その言葉にエスティアの父テレンスは崩れ落ちた。
王家は聖女の血筋を取り入れるため、王族の末端の彼を聖女だった先代女伯爵に婿入りさせている。
これが国内貴族からの指摘なら誤魔化すこともできただろうが、他国の王族、しかも王弟では立場が強すぎる。
王家は伯爵家に対して真っ当な調査をせざるを得なくなる。
調査の結果、伯爵家で父親がどのような立ち居振る舞いをしていたか、実の娘を如何に冷遇し扱っていたか、すべて露呈するだろう。
中止になった婚儀の後で、エスティアは家の使用人や騎士たちを集めて溜め息をついていた。
他の参列者たちは皆帰って行ったが幼馴染みのセドリックやカーティスは残ってくれている。
「まさか、あなたたちがここまでやるとはね」
「お嬢様の意に沿わぬことだったと思います。ですが我らも伯爵家の一員として、もはや我慢がならなかったのです」
「責めはしないわ。むしろ、あんな男と結婚せずに済んでホッとしてる」
本当なら離縁まで、白い結婚で年単位の時間をかけなければならなかった。
これなら一発だ。
婿入りの男がここまで愚行を犯したなら婚約破棄も問題ない。
エスティアは屋敷に戻ってドレスを早々に脱ぐなり、国王に対して婚約破棄の申請書とその理由を書いた手紙を書いて早馬で届けさせた。
(王女のことはあえて書かなかった。参列者の誰かが伝えるでしょ)
むしろ婚約破棄するアルフォートや、父テレンスより頭の痛い存在があの王女様だが、さてどうしたものか。
張りのあるバリトンの声が教会内に響いた。
隣国カルダーナ国王の弟、セドリックだ。
「ま、まさか隣国の王弟殿下では?」
「婚儀に参列していたのか……」
セドリックはこの国の学園に留学していたから顔と名前だけは知られている。
「その新郎の男、ひと月前から新婦の実家に滞在していたと聞いている。ならば昨晩から今日にかけて、隣の女と不貞行為を犯したのは伯爵家の本邸のはず」
(まあそうよね。私たちその現場を目撃したしね)
彼、隣国王弟のセドリックが厳しい性格なのは国内貴族なら大体知っている。
彼を育てた隣国王姉からしてマナーに厳しい女性だったので、近い世代の者ほど詳しかった。
「なぜ、花嫁の父たる伯爵代理が把握していなかった? これは新婦の父親の監督責任も追求せねばなるまい」
ざわ、と会場内がざわついた。
(ここでこういう正論を言っちゃうのがセドリックなのよね)
「ま、待て、駄目だ、このままだと……」
「お父様?」
花婿に花嫁を託す役割のため、父テレンスはずっとエスティアの隣にいた。
その父はセドリックの糾弾に青ざめて震えている。
「皆も知っておろう。先代の女伯爵カタリナ様は聖女だった。その娘のエスティアも聖女である。にも関わらず自分の娘の婚約者が、まさか婚儀の当日に不貞行為を犯す不埒者とは」
「私からこの国の国王に、伯爵家の念入りな調査を行うよう口添えしておこう」
その言葉にエスティアの父テレンスは崩れ落ちた。
王家は聖女の血筋を取り入れるため、王族の末端の彼を聖女だった先代女伯爵に婿入りさせている。
これが国内貴族からの指摘なら誤魔化すこともできただろうが、他国の王族、しかも王弟では立場が強すぎる。
王家は伯爵家に対して真っ当な調査をせざるを得なくなる。
調査の結果、伯爵家で父親がどのような立ち居振る舞いをしていたか、実の娘を如何に冷遇し扱っていたか、すべて露呈するだろう。
中止になった婚儀の後で、エスティアは家の使用人や騎士たちを集めて溜め息をついていた。
他の参列者たちは皆帰って行ったが幼馴染みのセドリックやカーティスは残ってくれている。
「まさか、あなたたちがここまでやるとはね」
「お嬢様の意に沿わぬことだったと思います。ですが我らも伯爵家の一員として、もはや我慢がならなかったのです」
「責めはしないわ。むしろ、あんな男と結婚せずに済んでホッとしてる」
本当なら離縁まで、白い結婚で年単位の時間をかけなければならなかった。
これなら一発だ。
婿入りの男がここまで愚行を犯したなら婚約破棄も問題ない。
エスティアは屋敷に戻ってドレスを早々に脱ぐなり、国王に対して婚約破棄の申請書とその理由を書いた手紙を書いて早馬で届けさせた。
(王女のことはあえて書かなかった。参列者の誰かが伝えるでしょ)
むしろ婚約破棄するアルフォートや、父テレンスより頭の痛い存在があの王女様だが、さてどうしたものか。
16
あなたにおすすめの小説
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる