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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界

雑種王女の危機

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「これで良かったの?」
「バッチリよ! 出来るだけあたしの引き渡しをだらだら~っと伸ばしてちょうだい」

 だがヒューレットが気の毒だ。一応まだサンドローザ王女の婚約者は彼のままなのに。
 こうしている間にも、王女がエスティアの婚約者を寝取った噂は国内を駆け巡っているはずだ。

「彼にどんな不満があったの? 学園時代、人気ナンバーワンの貴公子様よ?」
「ああいう血統書付きの男、苦手なのよね。こちとら平民女を母に持つ雑種よ? ムリムリ、ヒューレットと夫婦になったらあたし一生比べられて雑種雑種言われるじゃない!」
「それは、まあ……そうかもしれないけど」

 昨日、ヒューレットが一度王都に戻った後で牢から出した王女から、彼女なりの事情を聞いている。

 サンドローザは現国王夫妻の一人娘だ。まだ立太子していなかったが、次期女王がほぼ確定している。

 だが本人が言う通り母親が平民出身の王妃のため立場が弱い。
 そこで婚約者となったのが数代前の王女が降嫁して公爵に爵位が上がったノア家のヒューレットだ。
 他にも王族の親戚の血が入っているためサンドローザより王家の血の比率が高かった。

「血筋を煮詰めちゃいけないって何度説明しても頭の固いジジイどもは理解しようともしない!」
「まあねえ。前世の記憶がある私たちからしたら、近親婚のやりすぎは自滅ってわかってるからほどほどに外部の血を取り入れろってわかってるけど、この世界じゃあね」

 前世のミナコの時代では遺伝子解析もほぼ終了していて、特権階級などのエリートはそういう血筋だからというより、エリートを作るに相応しい〝環境〟ありきだったと科学的なエビデンスがあった。
 ゲームでいうなら、血筋が重要だという世界観の設定や人々の価値観次第だ。



「……あたし、何で母さんの光の魔力を受け継がなかったんだろう。それさえ持ってたらこんなことする必要だってなかったのに」

 気丈に振る舞っていてもサンドローザは落ち込んでいる。

 昨晩、牢から出したサンドローザから聞かされたのは王家の策略についてだった。
 乙女☆プリズム夢の王国の本編の正ヒロインだったロゼットはアーサー王太子と結ばれ王妃となって、一人娘のサンドローザ王女を産んだ。

 しかし王女にはロゼットが王妃として認められる一番のメリットだった〝光の魔力〟が継承されなかった。
 こうなると、サンドローザは王女であっても半分平民の血の混ざった王家のお荷物だ。

「ヒューレット君と結婚した後、彼により王家の血の濃い女性をあてがって産まれた子供を跡継ぎにする、か。そこまでして平民の血を排斥したいものかしら」

 このままヒューレットと結婚したら自分はお飾りの女王になる。

「他の女との子供が生まれた後、私は殺されるかもしれない。そう考えたらもう居ても立ってもいられなくって」
「それ、いつ頃知ったの?」
「学園を卒業する前。国王ちちの執務室で宰相や大臣たちが話しているのを聞いてしまったの」
「……あなたたちがまだ婚約に留まってた理由はそれかあ」

 エスティアと同い年の王女は今年二十三歳。まだ未婚なのは年齢的に遅かった。




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