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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
父テレンスの行方
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こんなとき、何と言って慰めたら良いかセドリックにはわからなかった。
伯母、いや実の母である王姉ギネヴィアから厳しく教えを受けていたセドリックは紳士として完璧なはずだった。
だが、いざ本命が落ち込んでいるのを見ると、習ったマナーや社交術など何の役にも立たなかった。
世間から厳格だなんだと恐れられているセドリックだが、実際はただの堅物で融通が利かない男に過ぎない。
(こういうときは肩でも抱けば良いのだろうか? いやまだエスティアはアルフォートと婚約中。手……ぐらいなら触れても……?)
などとセドリックが考えていると、執務室のドアがノックされパラディオ伯爵家の家令が入ってきた。
「何かあった?」
「ご当主様、お父上のテレンス様はひとまず領内の愛人宅に身を寄せることにされたようです」
「……そう。すぐご実家に戻られるかと思ったけど」
行き先だけ念のため確認し、報告に来たようだ。
「よろしいのですか? 伯爵家から籍を抜いた男が領内に残っているのは問題があるかと」
「父の実家のモリスン子爵家はなんて?」
「抗議が来ていますね。王命で婿入りした者を追放とは何事かと」
「こちらでの事件や、父が伯爵家で何をしたかの手紙は送ったのよね?」
もちろん、と家令が頷く。証拠付きで分厚い報告書を送ってある。
「子爵家を訴えることも辞さない、と手紙を送りつけてやって。まだ文句を言うようならパラディオ伯爵家に害を成す男を婿養子に送り込んだツケを払ってもらいましょう」
亡くなった前女伯爵カタリナや、エスティアへの暴力や心的苦痛に対する慰謝料を請求する。
少なくとも20年分は貰わなければ割に合わない。
今回のエスティアの結婚式での惨状はもちろん王家にも事の顛末を報告してある。
そもそも母伯爵とあの父との婚姻をお膳立てしたのは王家だ。
さすがに一伯爵家が王家に責任を問うのは不敬にあたり難しかったが、今回の婚約破棄の原因の一つにサンドローザ王女がいる。
多少、チクチク刺して溜飲を下げさせてもらおう。
むしろ、父親の実家の理不尽を諌めるぐらいしてもらわなければ、割に合わない。
「ご当主様。テレンス様の愛人親子についてはどうされますか?」
「放っておいてもいいけど、伯爵家の権利を主張されると厄介ね。これも実家と王家、本人にも真実を知らせておきましょうか」
父親テレンスの愛人の娘は、本人は実子だと思っているようだが、実は愛人の別の恋人との間にできた子供なのだ。
顔立ちは愛人の母親そっくりだが、耳と指の形が母親にも、父テレンスにも似ていない。
調べさせると愛人には別の男がいて、そちらによく似た形らしい。
「強かな女にずーっと騙されっぱなしだったのね。かわいそうなお父様」
机に戻って手紙を書くと言うエスティアに、カーティスが機転をきかせて声をかけた。
「エスティア。この後セドリックも王都に向かってこいつの立場から国王陛下に報告してくれるってさ。王家への手紙を預けるといい」
「そう? ならお願いしようかしら」
ちら、と話を振られたセドリックはカーティスを見た。小さく頷きを返される。
(アルフォートの語った話が事実なら、今は下手にプリズム王家を刺激しないほうがいい)
手紙はひとまず預かって様子を見たほうがいいだろう。
※セドリック君まさかのチキン枠か?🐔
伯母、いや実の母である王姉ギネヴィアから厳しく教えを受けていたセドリックは紳士として完璧なはずだった。
だが、いざ本命が落ち込んでいるのを見ると、習ったマナーや社交術など何の役にも立たなかった。
世間から厳格だなんだと恐れられているセドリックだが、実際はただの堅物で融通が利かない男に過ぎない。
(こういうときは肩でも抱けば良いのだろうか? いやまだエスティアはアルフォートと婚約中。手……ぐらいなら触れても……?)
などとセドリックが考えていると、執務室のドアがノックされパラディオ伯爵家の家令が入ってきた。
「何かあった?」
「ご当主様、お父上のテレンス様はひとまず領内の愛人宅に身を寄せることにされたようです」
「……そう。すぐご実家に戻られるかと思ったけど」
行き先だけ念のため確認し、報告に来たようだ。
「よろしいのですか? 伯爵家から籍を抜いた男が領内に残っているのは問題があるかと」
「父の実家のモリスン子爵家はなんて?」
「抗議が来ていますね。王命で婿入りした者を追放とは何事かと」
「こちらでの事件や、父が伯爵家で何をしたかの手紙は送ったのよね?」
もちろん、と家令が頷く。証拠付きで分厚い報告書を送ってある。
「子爵家を訴えることも辞さない、と手紙を送りつけてやって。まだ文句を言うようならパラディオ伯爵家に害を成す男を婿養子に送り込んだツケを払ってもらいましょう」
亡くなった前女伯爵カタリナや、エスティアへの暴力や心的苦痛に対する慰謝料を請求する。
少なくとも20年分は貰わなければ割に合わない。
今回のエスティアの結婚式での惨状はもちろん王家にも事の顛末を報告してある。
そもそも母伯爵とあの父との婚姻をお膳立てしたのは王家だ。
さすがに一伯爵家が王家に責任を問うのは不敬にあたり難しかったが、今回の婚約破棄の原因の一つにサンドローザ王女がいる。
多少、チクチク刺して溜飲を下げさせてもらおう。
むしろ、父親の実家の理不尽を諌めるぐらいしてもらわなければ、割に合わない。
「ご当主様。テレンス様の愛人親子についてはどうされますか?」
「放っておいてもいいけど、伯爵家の権利を主張されると厄介ね。これも実家と王家、本人にも真実を知らせておきましょうか」
父親テレンスの愛人の娘は、本人は実子だと思っているようだが、実は愛人の別の恋人との間にできた子供なのだ。
顔立ちは愛人の母親そっくりだが、耳と指の形が母親にも、父テレンスにも似ていない。
調べさせると愛人には別の男がいて、そちらによく似た形らしい。
「強かな女にずーっと騙されっぱなしだったのね。かわいそうなお父様」
机に戻って手紙を書くと言うエスティアに、カーティスが機転をきかせて声をかけた。
「エスティア。この後セドリックも王都に向かってこいつの立場から国王陛下に報告してくれるってさ。王家への手紙を預けるといい」
「そう? ならお願いしようかしら」
ちら、と話を振られたセドリックはカーティスを見た。小さく頷きを返される。
(アルフォートの語った話が事実なら、今は下手にプリズム王家を刺激しないほうがいい)
手紙はひとまず預かって様子を見たほうがいいだろう。
※セドリック君まさかのチキン枠か?🐔
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