炎上乙女ゲー聖杯伝説~結婚当日に友人王女が婚約者を寝取って婚約破棄なので諦めてた初恋の隣国王弟の攻略に戻ります

真義あさひ

文字の大きさ
54 / 66
「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界

洞窟の崩落

しおりを挟む
「何て瘴気の濃さだ。あれをまともに食らったら、気がおかしくなっても不思議はないぞ!?」

 黒竜がエスティアたちの匂いを嗅ぎつけて洞窟の入口まで来てしまった。

「げっ。こんなにデカくて魔力も大きいのか、無理!」
「お前、〝竜殺し〟じゃなかったのかヨシュアー!?」
「せ、せめて少し弱らせてくれたら」

 お助けキャラ枠のはずのヨシュアが焦っている。

 入口に対し巨体のドラゴンは中まで侵入してこれない。
 だが瘴気を放つ黒竜は獰猛に唸りながら、大口を開けて鋭い牙を見せつけてきた。

 口の中に魔力の塊が集積していくのが見えた。

「防御……いや伏せろ!」

 切迫したヨシュアの叫びとほぼ同時に黒竜が洞窟の中に向けて咆哮を放った。
 衝撃と瘴気に息が詰まる。

(く、苦しい!)

 崩落する岩盤の向こうに、必死な顔でこちらに腕を伸ばしているカーティスや、ヒューレットに庇われているサンドローザ王女が見えた。

「エスティア」

(せ、ドリック……?)

 強い力で抱き込まれるのがわかった。
 そのまま岩が落ちる轟音と地面に叩きつけられる衝撃で、エスティアは耐えられず意識を失った。



「イタタ……参ったなあ。いくら瘴気に侵されてるとはいえ、綿毛竜コットンドラゴンがあんなに凶暴になるなんて」

 聞いてないよ、とブツクサ言いながらヨシュアは辺りを見回した。

 黒竜の放った咆哮の衝撃波は洞窟内の岩盤を崩落させ、中にいた者たちを襲った。

「咄嗟に魔法樹脂で身は守ったけど。真っ暗か」
「おい、無事か!?」
「カーティス、君こそ!」

 ぽう、と闇の中に小さな炎が浮かぶ。火の魔力持ちのカーティスが出した炎だ。

「無事だけど、他の人たちはどうなんだろう。オレ、探索スキル持ってないから心配だなあ」

 不安は他にもある。カーティスが灯している炎が少しも揺らぎを見せていない。空気が流れていない証拠だ。

「こりゃあヤバいね。早く脱出しないと酸欠で死んでしまう」

 少しでも岩を退かして空気穴を作らねば。

「安心しろ、他の連中も無事だ」
「ん?」

 聞き覚えのない声がしたと思ったら、カーティスとヨシュアの後ろの岩が崩れて、二人の男が現れた。
 濃いミルクティ色の癖毛と緑色の瞳の男がテレンス、金髪青目の若い青年がアルフォートだ。

「テレンスおじさん!? あんたまで何でここに!」
「えっ。エスティア嬢のクズ父親の!?」
「誰が屑だ!」
「「「いや、あんただろ」」」

 アルフォートまで一緒になって突っ込んでいた。
 ここにエスティアがいたら「あなたもでしょ」と突っ込まれるだろうことは棚上げして。

「お前たちまで聖杯探しに来るとは。くそ、やはり数が多いパーティーのほうが登るのが早いな」

 ぶつぶつ呟くテレンスにカーティスが食ってかかった。

「他の連中って、分断されたエスティアたちも無事なんだな? どこにそんな保証があるんだよ!」
「私は風の魔力持ちだぞ? 空気の流れに魔力を乗せて洞窟内を探索することなど訳もない!」
「今さらそんな有能ムーブかまされてもなあ……」

 娘のエスティアを助けに来たのだろうか?
 あれだけ親子仲を拗らせておいて、どのツラ下げて。と昔から彼を知り、事情があることを聞いていたカーティスでも思った。

「アルフォートとサンドローザ王女の不貞のせいで計画は台無しだ。まあいい、話は後だ。これを見ろ」

 テレンスが地面に石でガリガリと何やら描き始めた。
 この洞窟内の簡易な見取り図のようだ。

「いま私たちがいるのがここ。聖杯から離れてしまったな」

 洞窟の崩落時、各自で聖杯のあった祭壇付近から避難しているためだ。
 今、テレンスたちがいるところは、テレンスとアルフォートが岩を崩してやってきたため、男四人が集まっても余裕がある。空気の流れもそれで確保できた。

「探索スキルを使った結果、エスティアと隣国王弟はここ」
「一番、聖杯に近いな」
「王女と婚約者はここ」
「反対側かあ。……あれ?」

 今現在、自分たちがいる場所を挟んで、岩で隔てられた隣にエスティアたち。
 本体側にサンドローザ王女たちだ。

「よ、良かった。すぐ近くにあいつらいるんだな。なら岩さえ退ければ」

「………………」

「待って。何か話し声が聞こえる」

 テレンスが描いた洞窟内の見取り図によれば、サンドローザ王女と婚約者ヒューレットが閉じ込められた空間からだ。

 王女たち側の岩の壁を見つめていたテレンスはしかめっ面になったが、指先から細い糸のような風の魔力を伸ばして、岩の隙間から隣の空間に魔力を流した。

 すぐに、姿の見えないサンドローザ王女とその婚約者ヒューレットの会話が小さく聞こえてきた。

『あたしに文句ぐらいあるでしょ。このアバズレ女って罵ればいいじゃない!』

 どうやら隣では修羅場が始まっているようだ。



しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした

玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。 しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様” だけど――あれ? この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!? 国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!

藤野ひま
ファンタジー
 わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。  初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!  夫や、かの女性は王城でお元気かしら?   わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!  〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

攻略なんてしませんから!

梛桜
恋愛
乙女ゲームの二人のヒロインのうちの一人として異世界の侯爵令嬢として転生したけれど、攻略難度設定が難しい方のヒロインだった!しかも、攻略相手には特に興味もない主人公。目的はゲームの中でのモフモフです! 【閑話】は此方→http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/808099598/ 閑話は最初本編の一番下に置き、その後閑話集へと移動しますので、ご注意ください。 此方はベリーズカフェ様でも掲載しております。 *攻略なんてしませんから!別ルート始めました。 【別ルート】は『攻略より楽しみたい!』の題名に変更いたしました

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

処理中です...