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第二章「何かと話題のインフルエンサー」
LOIアンバサダー就任と危険な話題
――こんな大事にして、怜司、大丈夫なのか?
泰然王国の経済システムが本格稼働し、泰然コインが市場を騒がせ始めた頃。
視聴者たちの間で、ふと、ある疑問が浮上した。
『素朴な疑問なんだけど、泰然コイン上場とか、こんな大ごとにして怜司大丈夫だった?』
『それな。黒服の怖い人たちに狙われない?』
『リアルマネー動かしすぎて、ガチでやばい案件では?』
コメントが流れるのを、怜司は黙って眺めていた。
ワイングラスの中で、赤い液体が静かに揺れる。
くるりと一度回し、しばらく沈黙したあと、ぽつりと口を開いた。
「……これからは僕も泰然も、一般人として外を歩けなくなるかもしれない」
空気がぴたりと止まる。
『え?』
『え???』
「イベントのときは、ボディガードも付くようになるし……」
さらっと、とんでもないことを言う。
「……ちょっとやりすぎたかな」
次の瞬間、コメント欄が爆発した。
『ちょっと!?』
『それ、ちょっとじゃねえ!!!』
『怜司、それは〝だいぶ〟だ!!!』
『感覚が完全に上級国民!!!』
『これもうVIPどころじゃないだろ!!!』
画面越しに見ていた泰然は、深いため息をついた。
「お前なぁ……」
「うん?」
「お前、俺を巻き込むのもいい加減にしろよ?」
怜司は一瞬きょとんとしたあと、心底不思議そうに首を傾げた。
「巻き込む、じゃないよ」
そして当たり前のように言う。
「君が僕の世界の中心なんだから」
「~~~っっ!!!」
泰然は頭を抱えた。
――あ、これもうダメなやつだ。
そんな中、ついに決定的な話が舞い込む。
LOI運営からの正式オファーである。
「LOIの公式アンバサダーになってほしい」
それは単なる広告塔ではない。
ゲームの未来、方向性、理念――
それらを〝象徴する存在〟として認定したいとの話だった。
話を聞いた瞬間、泰然は素っ頓狂な声を上げた。
「は???」
「うん、公式アンバサダーだって」
隣で怜司が、あまりにも平然と頷く。
「いやいやいや、お前、何やってんの!?」
どう考えてもこの話を仕込んだに違いない男を振り返る。
「……僕は、君の道を整えているだけだよ?」
泰然は机に額を軽く打ち付けた。
「もう無理。俺の人生、全部お前の思い通りに操られてる……」
『草』
『もう諦めた顔してる』
『怜司、人生プロデューサー説』
『泰然、またパンでも捏ねるといいよ』
『美味いパンが焼けそうだな』
視聴者たちはもはや確信していた。
――泰然はもう、怜司からも、LOIからも逃げられない。
オンオフ、特にLOI内での結婚。
泰然王国の建国。
泰然コインのリリース。
ここまで来た以上、視聴者たちの関心は次へ向かっていた。
『LOIで結婚まで行ったし、次は子供じゃね?』
『さすがにそこまでは……』
『でも今のLOI、税も国もあるし、もう社会だよな』
そのコメントが流れた瞬間。
怜司の動きが、ぴたりと止まった。
「………………」
『無言やめろ!!!』
『今、何か考えただろ!?』
『怜司にアイデア与えたやつ誰だ!!!』
ワイングラスをゆっくり回しながら、怜司が静かに言った。
「そうだね。LOIは、ゲーム内で子供を作るシステムは、まだ実装されてなかったね」
『やめろ!!!』
『それ以上はいけない!!!』
『LOIで何億回炎上したと思ってる!?』
「LOIは、メタバースの先駆者になりつつある」
怜司は淡々と続ける。
「もし〝家族〟という概念が導入されれば、LOI内での人生は、さらに現実に近づく」
『運営が泣く』
『また運営を動かす気か』
「つまりね」
微笑みながら言い切った。
「LOIで、僕と泰然の子供を作ることも可能になる」
『うわああああああ!!!』
『世界の常識が壊れる!!!』
さらに、追い打ちをかけるコメントが流れる。
『メタバースなら、死んだ後もLOIで一緒に生きられるんじゃない?』
怜司がまた黙る。
「………………」
嫌な沈黙だった。
「……おい?」
泰然が警戒する。
「メタバースの本質は、〝現実を超えた永続的存在〟だよ」
「はぁ!?!?」
「意識を完全にデータ化できれば、僕たちは〝死んだ後〟も、LOIの中で生き続けられる」
『怖い!!!』
『ガチで永遠の愛を実装しに来た!!!』
泰然は、絶句したまま怜司を見る。
「お前さ……どこまで俺と一緒にいる気なんだよ……」
怜司は迷いなく微笑んだ。
「永遠に決まってるじゃないか」
――こうして、泰然王国は国家となり、愛はメタバースを超え、誰も止められない領域へ踏み込みつつあった。
泰然王国の経済システムが本格稼働し、泰然コインが市場を騒がせ始めた頃。
視聴者たちの間で、ふと、ある疑問が浮上した。
『素朴な疑問なんだけど、泰然コイン上場とか、こんな大ごとにして怜司大丈夫だった?』
『それな。黒服の怖い人たちに狙われない?』
『リアルマネー動かしすぎて、ガチでやばい案件では?』
コメントが流れるのを、怜司は黙って眺めていた。
ワイングラスの中で、赤い液体が静かに揺れる。
くるりと一度回し、しばらく沈黙したあと、ぽつりと口を開いた。
「……これからは僕も泰然も、一般人として外を歩けなくなるかもしれない」
空気がぴたりと止まる。
『え?』
『え???』
「イベントのときは、ボディガードも付くようになるし……」
さらっと、とんでもないことを言う。
「……ちょっとやりすぎたかな」
次の瞬間、コメント欄が爆発した。
『ちょっと!?』
『それ、ちょっとじゃねえ!!!』
『怜司、それは〝だいぶ〟だ!!!』
『感覚が完全に上級国民!!!』
『これもうVIPどころじゃないだろ!!!』
画面越しに見ていた泰然は、深いため息をついた。
「お前なぁ……」
「うん?」
「お前、俺を巻き込むのもいい加減にしろよ?」
怜司は一瞬きょとんとしたあと、心底不思議そうに首を傾げた。
「巻き込む、じゃないよ」
そして当たり前のように言う。
「君が僕の世界の中心なんだから」
「~~~っっ!!!」
泰然は頭を抱えた。
――あ、これもうダメなやつだ。
そんな中、ついに決定的な話が舞い込む。
LOI運営からの正式オファーである。
「LOIの公式アンバサダーになってほしい」
それは単なる広告塔ではない。
ゲームの未来、方向性、理念――
それらを〝象徴する存在〟として認定したいとの話だった。
話を聞いた瞬間、泰然は素っ頓狂な声を上げた。
「は???」
「うん、公式アンバサダーだって」
隣で怜司が、あまりにも平然と頷く。
「いやいやいや、お前、何やってんの!?」
どう考えてもこの話を仕込んだに違いない男を振り返る。
「……僕は、君の道を整えているだけだよ?」
泰然は机に額を軽く打ち付けた。
「もう無理。俺の人生、全部お前の思い通りに操られてる……」
『草』
『もう諦めた顔してる』
『怜司、人生プロデューサー説』
『泰然、またパンでも捏ねるといいよ』
『美味いパンが焼けそうだな』
視聴者たちはもはや確信していた。
――泰然はもう、怜司からも、LOIからも逃げられない。
オンオフ、特にLOI内での結婚。
泰然王国の建国。
泰然コインのリリース。
ここまで来た以上、視聴者たちの関心は次へ向かっていた。
『LOIで結婚まで行ったし、次は子供じゃね?』
『さすがにそこまでは……』
『でも今のLOI、税も国もあるし、もう社会だよな』
そのコメントが流れた瞬間。
怜司の動きが、ぴたりと止まった。
「………………」
『無言やめろ!!!』
『今、何か考えただろ!?』
『怜司にアイデア与えたやつ誰だ!!!』
ワイングラスをゆっくり回しながら、怜司が静かに言った。
「そうだね。LOIは、ゲーム内で子供を作るシステムは、まだ実装されてなかったね」
『やめろ!!!』
『それ以上はいけない!!!』
『LOIで何億回炎上したと思ってる!?』
「LOIは、メタバースの先駆者になりつつある」
怜司は淡々と続ける。
「もし〝家族〟という概念が導入されれば、LOI内での人生は、さらに現実に近づく」
『運営が泣く』
『また運営を動かす気か』
「つまりね」
微笑みながら言い切った。
「LOIで、僕と泰然の子供を作ることも可能になる」
『うわああああああ!!!』
『世界の常識が壊れる!!!』
さらに、追い打ちをかけるコメントが流れる。
『メタバースなら、死んだ後もLOIで一緒に生きられるんじゃない?』
怜司がまた黙る。
「………………」
嫌な沈黙だった。
「……おい?」
泰然が警戒する。
「メタバースの本質は、〝現実を超えた永続的存在〟だよ」
「はぁ!?!?」
「意識を完全にデータ化できれば、僕たちは〝死んだ後〟も、LOIの中で生き続けられる」
『怖い!!!』
『ガチで永遠の愛を実装しに来た!!!』
泰然は、絶句したまま怜司を見る。
「お前さ……どこまで俺と一緒にいる気なんだよ……」
怜司は迷いなく微笑んだ。
「永遠に決まってるじゃないか」
――こうして、泰然王国は国家となり、愛はメタバースを超え、誰も止められない領域へ踏み込みつつあった。
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