ゲームランカーのスパダリ彼氏

真義あさひ

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第一章「最強ランカーのリアル彼氏はスパダリ覚醒する」二条泰然編

エピローグ 二人で暮らす、ということ

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 朝日が射し込む部屋の空気は、澄んでいて、やけに静かだった。

「……これが、タワマンってやつか」

 窓際に立つ泰然が、ぽつりと呟く。
 高層階からの眺めはまるで現実じゃないみたいで、目の前の街並みも遠くの空も、今までの自分とは別世界のもののように感じた。

 広すぎるリビング。
 大きすぎる冷蔵庫。
 洗面所の棚には、二本の歯ブラシが仲良く並んでいて、グラスも二つ。
 シンクの上の棚には、お揃いの色違いのマグカップが並ぶ。

(俺、ほんとに……こいつと暮らすんだな)

 あの狭くて、壁の薄いワンルームじゃない。
 隣に誰が住んでいるのかも知らなかった、孤独な空間じゃない。
 今、自分のすぐ隣には最愛の男がいる。

「おはよう、泰然。……寝癖、すごいよ?」

 いつの間にか背後にいた怜司が笑って、泰然の黒髪に指を通してきた。

「……おまえ、昨日どさくさで俺にプロポーズしたこと、ちゃんと覚えてるか?」
「うん。覚えてる。事実婚書類も受理されてるし、僕たちもう、リアルでもゲームでも法的にも、恋人で夫婦だよ」
「……強引すぎだろ」

 泰然は顔をしかめてそう言いながらも、唇の端が勝手に緩んでしまう。
 それを怜司は逃さずに見つけて、いたずらっぽく目を細めた。

「ねえ、君があのとき言ったこと、覚えてる?」
「どのときの話だよ」
「僕に向かって、『俺の不安を全部消してくれた』って」

 怜司が近づいてきて、唇を重ねる寸前の距離で止まる。
 その緑の瞳には、何の冗談も浮かんでいなかった。
 あるのはただ、静かで真っすぐな――圧倒的な愛。

「これからも、ずっとそうしていくから。……君の不安は、全部、僕が消していく。何度でも。どんなことでもね」
「……俺の人生、根こそぎ変えたよな。おまえ」

 その言葉は、何の飾りもない泰然の本音だった。
 かつて、誰にも頼れなかった。
 誰にも本当の姿を見せられなかった。
 でも今は――

 肩にそっと腕を回され、背中に優しく体温を感じたとき、心の底から思えた。

(俺はもう、一人じゃない)

「君の王国は、僕が守る。……でも僕の前でだけは、王冠を外したくなるくらい、幸せになってくれたらいい」
「……ばか」

 だけど、その〝ばか〟が照れ隠しの甘えなことは、怜司にはお見通しだろう。
 隣にいるのは、世界一信じられる、世界一大事な、自分だけの男。

 窓の外、遠くの空はどこまでも青く澄んでいた。
 その景色は、かつてのワンルームから見えた、曇った空とはまるで違っていた。

 今、見ている世界は。

 二人で生きていく新しい世界だ。



  ☆ ☆ ☆



「皆さん聞いてください。うちのお兄ちゃんたら、街で一番新しいタワマンに引っ越したんですよ!」

 リンリン太郎――怜司の弟・凛太の怒涛の配信がスタートする。

「一緒に住んでた僕はどうなったかって? 追い出されました……っ! しかも、その理由が──!」

『新婚家庭に余計なコブは不要』

 怜司が、コメントでしれっと送信した一文が表示される。

「お兄ちゃんのばか! お兄ちゃんなんて泰然さんと幸せになっちゃえ!」

『当然だな』

 またしれっとコメントが返ってきて、凛太はぷりぷりと怒っている。

「まあまあ、凛太。お前、一人暮らし憧れてただろ?」

 泰然の言葉に、凛太がぷくっと頬を膨らませる。

「そうだけど。でも僕一人分ぐらい、ゲストルーム空きがあるじゃないですか!」
「いつでも遊びに来るといい。今日みたいにな」

 視聴者たちが困惑している。

『あれ? なんでリンリン太郎の配信に泰然いるの?』
『あっ、わかった。今日の配信場所は』
『『『二人のタワマンからだ!!!』』』

「皆さん、当たりです! 今さらですけど僕のお兄ちゃん怜司と、お兄ちゃんの恋人の泰然さんのおうちから配信してます!」

 視聴者たちは驚いている。
 あのギルド地天泰の古株リンリン太郎が泰然の彼氏の実の弟だと、何げに今回初公表だったのだ。

「見てくださいよ、泰然さんの隣にいるのにコメントで突っ込んでくる兄。ひどくありません?」

 カメラが仲睦まじくソファで並んで座っている二人を捉える。
 二人は和やかに顔を見合わせた後、幸せいっぱいの笑顔をカメラへと向けた。

『お前もランカーになって僕たちに続けばいい』

「うぐぅ……就職じゃなくてプロゲーマールートかあ。本気で考えようかなあ」

 コメント欄が穏やかな笑いに包まれる。

『そりゃ弟くんも家追い出されるわ。幸せオーラが過ぎる』
『凛太くん、愛され弟ポジありがとね!?』
『なんだこの家庭感……尊死するわ』
『家族で最強ランカーになったらすごいよね』
『スパダリ攻め×照れツン受け×被害者弟=最強布陣』

 そんな言葉たちの向こうで。
 泰然と怜司は、お揃いのマグカップでコーヒーを飲みながら、小さく笑い合った。

 ――それが、二人の始まりであり、これからの〝日常〟だった。



第一章 おしまい

→その後のタワマン生活へ






※ラストまでご覧いただきありがとうございました。

ちなみにLOIはそのうち、新ワールド解放で円環大陸出現、現地の魔王から迷子のウパルパ探しクエスト受注したり……(クリアするとイケオジ魔王から新スキル貰えるやつ)
環シリーズとリンクした別シリーズだったというお話。

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