チラウラ

青空びすた

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自分のことより

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 受験対策だかなんだかで、今日は自己分析の宿題が出た。
 A4用紙一枚に自分のことを埋める作業は思ったより難しくて、ローテーブルにプリントを広げながら唸る。
 記号的な部分はすぐに埋まったけれど、問題は特技とか長所・短所だとかの部分だ。

 俺以上に苦手そうな美忠は珍しく両手で顔を覆って項垂れている。
 ずりずりと隣に移動して、彼の頭を俺の膝に乗せる。されるがまま膝枕になって、柔らかな髪を撫でる。

「長所とか特技とか、自分じゃわかんないよなぁ」

 こくんと頭を動かすのが可愛くて、ゆっくり手を動かす。
 涙目になるほど真剣に考えるとか、ほんと可愛いし、なんていうか、ほっとけない。

「美忠の長所はー、真面目なとこ・優しいとこ・かっこいいとこ、それに」
「なんだよそれ」
「いいところなんてさ、自分より人が知ってるんじゃないかなって」

 腰に手を回されて頭を擦り付けられる。弱ってる姿を見れるのは恋人の特権だ。

「エピソードトークもできるぜ。あ、特技は猫の爪切り!」
「なんだよそれ」

 さっきより浮上した声音に安心して、またゆっくり頭を撫でた。 


 翌日、趣味も特技も『美忠』って書いて提出したら担任から書き直しを命じられた。
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