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1.
日が昇り始めた早朝。トパーズの家の扉を開いたのはルビーだった。
「まーだ寝てるのかよ」
「るびぃ……?」
仕事を始めるには随分早い時間に起こされ、トパーズは目を擦りながらルビーを見上げる。彼の見送りは昼頃ではなかっだろうか。寝ぼけた頭でそう考えた。
「やっぱり、出発の準備もしてないし」
「しゅっぱつ?」
ルビーは旅支度を済ませている道具袋を床に置いた。それを目の端で捉えたトパーズはぼんやりと疑問を口にする。
「準備ならできてるじゃないか」
「どこが!? 今日旅立つってわかってるか?」
トパーズはおや、と首を傾げた。
「旅立つのはルビーだろ?」
「え、なに、お前、俺一人で行かせるつもりか?」
トパーズはムッとした。そんな風に言われると自分が酷く身勝手なことをしているようではないか。そもそも勇者に選ばれたのはルビー一人だ。
「伝説の勇者様にお供は必要ないだろ」
「お供じゃなくて恋人だろ!」
「勇者の恋人は村で無事を祈りながら待ってるものだろ」
くぁ、とあくびをしてトパーズは布団に戻る。まだ空が白んだばかりだ。二度寝しても許される時間だろう。ルビーはやれやれと言わんばかりにトパーズの旅支度を始めた。
「大体、村で恋人が待ってる系の話は勇者が死んだりするじゃないか」
「それはだめだ」
「それに恋人じゃなくて幼馴染みとかだったら、旅先から婚約者連れて帰ってきたり」
「なに、お前浮気すんの?」
「そんな予定はないけどな!」
「そうだよな」
「トパーズにだって浮気はさせないから」
「当たり前だろ。こんなに一途な男を捕まえて何言ってんだよ」
布団でごろごろとだらけながらトパーズは笑う。ルビーは準備の手を止めて、ふと呟いた。
「トパーズが男で良かった」
「何、急に」
「女の子なら連れて行くとか、躊躇うし」
「躊躇うだけかよ」
「トパーズなら女でも男でも一緒にいてほしいなって」
「女の冒険者とかも普通にいるもんな」
トパーズはぼんやりと天井を見ながら答える。この天井もしばらくは見納めか、なんて言葉は胸の内に隠す。
「足手まといは置いてけよ」
「トパーズがいなきゃ、俺死んじゃうよ」
ルビーは当たり前のようにけらけらと笑って言った。
「なぁ」
「……ん?」
本当は、取り繕ったような態度に気づいていた。トパーズが本気で嫌がればルビーは彼をおいて旅立つだろう。
「出発は昼だろ? もうちょっと寝ようぜ」
「もう、仕方ないなぁ」
ルビーは佩剣していた武器やマント等の装備を外すと、トパーズが持ち上げた布団に入ってくる。人肌はいいなと、トパーズは目を閉じた。ルビーはトパーズを抱きしめて、ゆっくりと目を閉じる。
実は旅の準備がしやすいように、必要な荷物の小分けは済んでいる。旅立ちまではあと数時間。勇者が僅かな平和を享受できるなら、トパーズは日常を装うのも厭わないのだ。
「まーだ寝てるのかよ」
「るびぃ……?」
仕事を始めるには随分早い時間に起こされ、トパーズは目を擦りながらルビーを見上げる。彼の見送りは昼頃ではなかっだろうか。寝ぼけた頭でそう考えた。
「やっぱり、出発の準備もしてないし」
「しゅっぱつ?」
ルビーは旅支度を済ませている道具袋を床に置いた。それを目の端で捉えたトパーズはぼんやりと疑問を口にする。
「準備ならできてるじゃないか」
「どこが!? 今日旅立つってわかってるか?」
トパーズはおや、と首を傾げた。
「旅立つのはルビーだろ?」
「え、なに、お前、俺一人で行かせるつもりか?」
トパーズはムッとした。そんな風に言われると自分が酷く身勝手なことをしているようではないか。そもそも勇者に選ばれたのはルビー一人だ。
「伝説の勇者様にお供は必要ないだろ」
「お供じゃなくて恋人だろ!」
「勇者の恋人は村で無事を祈りながら待ってるものだろ」
くぁ、とあくびをしてトパーズは布団に戻る。まだ空が白んだばかりだ。二度寝しても許される時間だろう。ルビーはやれやれと言わんばかりにトパーズの旅支度を始めた。
「大体、村で恋人が待ってる系の話は勇者が死んだりするじゃないか」
「それはだめだ」
「それに恋人じゃなくて幼馴染みとかだったら、旅先から婚約者連れて帰ってきたり」
「なに、お前浮気すんの?」
「そんな予定はないけどな!」
「そうだよな」
「トパーズにだって浮気はさせないから」
「当たり前だろ。こんなに一途な男を捕まえて何言ってんだよ」
布団でごろごろとだらけながらトパーズは笑う。ルビーは準備の手を止めて、ふと呟いた。
「トパーズが男で良かった」
「何、急に」
「女の子なら連れて行くとか、躊躇うし」
「躊躇うだけかよ」
「トパーズなら女でも男でも一緒にいてほしいなって」
「女の冒険者とかも普通にいるもんな」
トパーズはぼんやりと天井を見ながら答える。この天井もしばらくは見納めか、なんて言葉は胸の内に隠す。
「足手まといは置いてけよ」
「トパーズがいなきゃ、俺死んじゃうよ」
ルビーは当たり前のようにけらけらと笑って言った。
「なぁ」
「……ん?」
本当は、取り繕ったような態度に気づいていた。トパーズが本気で嫌がればルビーは彼をおいて旅立つだろう。
「出発は昼だろ? もうちょっと寝ようぜ」
「もう、仕方ないなぁ」
ルビーは佩剣していた武器やマント等の装備を外すと、トパーズが持ち上げた布団に入ってくる。人肌はいいなと、トパーズは目を閉じた。ルビーはトパーズを抱きしめて、ゆっくりと目を閉じる。
実は旅の準備がしやすいように、必要な荷物の小分けは済んでいる。旅立ちまではあと数時間。勇者が僅かな平和を享受できるなら、トパーズは日常を装うのも厭わないのだ。
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