悪いけど魔法少女最強は俺♂だから

導入

俺は子どもの頃、魔法少女もののアニメを観て育った。
ヒーローものでもなく戦隊ものでもなく、魔法少女ものが好きだった。
正確に言えば、魔法使いに憧れを抱いていた。
自分は男だから、魔法少女にはなれないことは分かっていた。しかし、魔法使いにだったらなれるかもしれない。そう思って幼少期を過ごしていた。
歳を重ねれば、魔法なんてものは世の中に存在しないって事実を受け入れざるをえないことくらい理解するようにはなっていた。
それでも俺は魔法使いになりたいと素直に思っていた。
魔法使いになれないのならと、俺は科学者になった。昔テレビで観た魔法少女たちが、魔法の力で悪を退治し皆の笑顔を守っていたように、科学で魔法のようなことが起こせれば、俺も皆の笑顔を守ることができるかもしれない。そんな想いで、俺は科学者として頑張ってきた。
しかし、俺の研究は日の目を見る直前で盗まれたのだ。
俺は絶望の縁に追い込まれた。俺は助手を一人だけ雇い、ほぼ二人だけで研究をしていた。その助手に裏切られた。助手が、研究成果を全て持ち出したのだ。
二人でやっていた内の一人に裏切られた俺を助けてくれる人はいなかった。
全てを失った俺は、失意の内に外へ出た。
フラリフラリと街を彷徨う。
前なんて見ていなかったと思う。
何も見えてなんていなかった。
ただ前に向かって歩いていただけだったと思う。路上に飛び出て、そのまま車に轢かれ、俺は死んだ。
俺の人生に魔法なんてものはなかった。あったのは、裏切りと絶望だけだ。
生まれ変われるのだとしたら、俺は魔法使いになりたい。
魔法使いとして皆を笑顔にしたいのだ。